リスク後退で目線は上がりやすい、ドル円は111円ワンタッチも
ドル円、後半に下値切り上げ。
週初から週央にかけては、中国の大手不動産開発・恒大集団の信用不安から109.13円付近へ押し戻されるなど上値の重さが目立ちました。しかし、後半になると本邦輸入勢のドル買いや、金利正常化へ向う姿勢を示したFOMCからドル円は反発。加えて、一部メディアで中国恒大集団を巡り楽観的な報道が流れたことも手伝って、2週間ぶりの高水準となる110.34円付近まで上伸しました。米FOMC(連邦公開市場委員会)では、早期のテーパリング開始が示唆されたほか、参加者の半数が22年利上げを予想していることが明らかになりました。
米国、淡々と緩和縮小へ。
米雇用統計、中国恒大集団の債務不履行問題がノイズとなって米金融政策のアクセルが緩むとの見方はありましたが、今回のFOMCで金利正常化を淡々と進めようとしている姿が明確になり、安堵感を抱いた投資家も多いでしょう。こうした当局の姿勢はドルを下支えするとみられます。ちなみに、現在の資産購入額は月額1200億ドル(国債800億ドル、MBS400億ドル)です。これを『毎月、100億ドル、50億ドルずつ減額』するプロットを立てれば、来年6・7月に量的緩和が終了し、その後3~6カ月様子をみて9~12月のどこかで利上げが実施されることになるのではないでしょうか。また、米国のデフォルト・リスク緩和もドルをサポートか。下院が9月30日以降も政府資金を手当てする法案と、連邦債務の法定上限を2022年12月16日まで凍結する法案を賛成多数で可決し上院へ送付しました。上院共和党からは、同法案から債務上限引き上げ部分を削除する方針が示されており、両党の対立激化が予想されます。しかしながら、共和党は『つなぎ法案』には賛成のため、急場をしのぐため先ずはつなぎ法案を両党で成立させ、その上で民主党が財政調整措置を活用し単独で債務上限を引き上げるといった裏技も考えられます。今後も紆余曲折は想定されますが、少なくとも年内のデフォルト回避へ一歩進んだように感じられます。
☆米FOMCの3つのチェックポイント
✔改善進めば、購入ペース早急に緩和(FOMC声明)
✔テーパリングの終了は2022年半ば頃が適切となる可能性(パウエル議長)
✔2022年に1回の利上げ、23年は3回の利上げを示唆(ドットチャート)
中・恒大問題も小休止。
真偽のほどはわかりませんが会社を3分割して各々を国営企業が引き継ぐなどの再編計画がまことしやかに流れています。また、中国人民銀行が市場への資金供給量を増やすなど流動性を確保して市場の混乱を防ごうとするなど、今後、政府主導による債務再編が本格化するのではとの期待も高まっています。その上、今回の事態がリーマンショックのような危機につながる確率は低いとの専門家の見立てもあって、中国リスクもやや低下気味です。このように複数の目先の不安が後退している点を踏まえれば、ドル円は底堅さが増していると言えます。来週発表の米消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、同ISM製造業景況指数が、米当局が指し示した道筋への信頼性を高められれば111円台回復を果たす場面もありそうです。ただし、米債務上限引き上げを巡る議会の紛糾や、恒大集団問題が他の中国企業のデフォルトを誘発する不安は残り、111円台定着はもう少し先になるのではないでしょうか。
ドル円、一目雲の上側で定着できるか注目。
5日移動平均線に続き、21日線も上向きに転じ視線は上です。少しわかりにくいですが、ダブルボトムのネックライン(110.05円)を越えてきたことも上昇を後押ししており、今度は一目雲上限(110.18-19円)より上側で定着できるかどうかが注視されます。110.20円前後での値固めが進めば、110.30-70円にかけ断続的に並ぶ売りオーダーを消化して111円回復に向けへ下値を切り上げて行きそうです。もっとも、戻り売り意欲が強い水準のため買い方は細目に益出しをしながら取り組みたい。21日線レベルの109.80円をストップに110.10円付近の押し目を拾って上向きの流れに乗りたいと考える。
予想レンジ:
USD/JPY:109.30-111.30
9/27 週のイベント:
9/27(月) 08:50 日本 8月 企業向けサービス価格指数
9/27(月) 21:30 米国 8月 耐久財受注
9/28(火) 22:00 米国 7月 ケース・シラー米住宅価格指数
9/28(火) 23:00 米国 9月 消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)
9/28(火) 23:00 米国 9月 リッチモンド連銀製造業指数
9/29(水) - 日本 自民党総裁選挙
9/29(水) - 中国 中国恒大、2024年償還債の4750万ドルの利払い予定日
9/30(木) 08:50 日本 8月 鉱工業生産・速報値
9/30(木) 08:50 日本 8月 小売業販売額
9/30(木) 08:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
9/30(木) 14:00 日本 8月 新設住宅着工戸数
9/30(木) 21:30 米国 新規失業保険申請件数
9/30(木) 21:30 米国 4-6月期 四半期実質国内総生産(GDP、確定値)
9/30(木) 21:30 米国 4-6月期 四半期GDP個人消費・確定値
9/30(木) 21:30 米国 4-6月期 四半期コアPCE・確定値
9/30(木) 22:45 米国 9月 シカゴ購買部協会景気指数
10/1(金) - 中国 国慶節で休場
10/1(金) 08:30 日本 8月 失業率
10/1(金) 08:30 日本 8月 有効求人倍率
10/1(金) 08:50 日本 7-9月期 日銀短観
10/1(金) 21:30 米国 8月 個人消費支出(PCE)
10/1(金) 21:30 米国 8月 個人所得
10/1(金) 22:45 米国 9月 製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)
10/1(金) 23:00 米国 9月 ミシガン大学消費者態度指数・確報値
10/1(金) 23:00 米国 9月 ISM製造業景況指数
10/1(金) 23:00 米国 8月 建設支出 前月比
(執筆:小野 直人)
一言コメント:
スペイン領カナリア諸島のラパルマ島南部にあるクンブレ・ビエハ火山が半世紀ぶりに噴火しました。少なくとも7か所で噴火が確認されるなど、ニュース映像は自然災害の脅威を感じさせるものでした。さらにすごいことに、この火山は海に近いこともあり火山をきっかけに断層が裂け地滑りを起こせば、5,000億トンもの土砂が海に崩れ落ち、5330Km離れたニューヨークを津波で壊滅させる力もあるとか。ただただ、地球のすごさに圧倒されるばかりです。
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