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中国株が下落しても依然として底堅い人民元「プロが解説 人民元見通し」戸田裕大

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本ではまだまだ情報の少ない人民元について、発表された報道や公表された経済データなどをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国の金融市場(人民元や中国株・中国債券など)が、世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨の売買、ひいては世界経済の流れを掴むための情報としてご参考にして頂ければ幸いです。

第2回は「中国株が下落しても依然として底堅い人民元」といたしまして、お伝えします。

目次

1.足元の人民元相場
2.注目のトピック
3.今後の見通し

1.足元の人民元相場

まず簡単に足元の人民元相場について振り返っていきましょう。

<USD/CNH日足>
作成段階の為替レート:6.4761

f:id:gaitamesk:20210810095017p:plain

押さえておきたいのが7月27日の急激な人民元安(ドル高)です。

7月に入り軟調推移の続いていた中国株式市場ですが、26日~27日は特に下げが大きく、本土の代表的な株価指数である上海総合指数は2日で5%弱の下落を記録しました。背景には「共産党による急成長テック企業の締め付け」が挙げられ、これは内部の権力闘争ですのでしばらく続くことが想定されています。

このタイミングで長らく支えられていたUSD/CNHの6.50を上抜けて人民元安が始まったかのように思えましたが、一旦は為替市場への波及は限定的となり、単に6.50のストップオーダーを焼き尽くす動きに終始しました。これはなかなかに厳しい値動きだったと思います。

現在は米ドルよりも人民元金利の方が高いですから、為替レートが安定して推移するのであれば人民元買いのインセンティブが働く状況ですが、軟調推移の続く中国株式市場には引き続き目を配って置いた方が無難と言えそうです。

<CNH/JPY(人民元/日本円)日足>
作成段階の為替レート:17.02

f:id:gaitamesk:20210810095028p:plain

7月のCNH/JPYはドル円の下押しに加え、中国株の下落に端を発した人民元安も相まって苦しい時間帯が続きました。ただし下がったところでは鋭い買いもみられ、16.80レベルがサポートとして機能しました。

ドル円に持ち直しの動きが見られていますので、これが継続するかどうかもCNH/JPYをみていく上での重要ポイントになると思います。

2.注目のトピック

現在の注目トピックは大きく分けて2つです。 一点目は中国株の軟調推移がどこまで続くのか?と言うことです。これは言い換えれば、共産党がテック企業をどこまで締めつけ続けるのか?と言うことになります。

この兆候が明確に出てきたのは昨年末からで、法律に適用されたのが今年の2月からです。「国務院」という中国の最高実務機関が、独占禁止法の補助・細則として、「プラットフォーム経済領域の独占禁止ガイドライン」を制定したのが約半年前のことになります。

国内の巨大寡占企業(特にテック企業)の台頭は共産党の一党独裁を脅かしうるということで、本ガイドラインの作成に至ったものと考えています。ですから急に締め付けが緩くなると言うことは全くもって想定出来ません。

従って本件は引き続き中国株の下押し材料になり続けるように思います。そして、それは中国と経済的な結びつきの深い日本を含むアジア株式市場にも影響を与え続けると考えるのが自然かも知れません。

二点目がコロナ対策です。Covid-19デルタ株の拡大は世界的に止められない流れのように見えます。従ってコロナ対策の巧拙が通貨強弱に影響することが想定されます。

中国のコロナ対策は世界一厳格なものと思います。現地駐在員ネットワークから入ってきた情報によれば、テニスコートに立ち入るだけでもPCR検査証明の提出を求められるなど、引き続き徹底した管理が行われているようです。

また公共機関利用と国民IDをリンクさせた追跡システムも走っています。誰がどの時間にどこに移動したか筒抜けの中国ですから感染元の特定が容易で、その点では、最もコロナ対策を有効に行うことが出来ます。

デルタ株の拡大により、またしても世界経済が下向く中で、中国だけは独自の対策で景気下振れリスクを抑えることが容易である点はトレードをする上で考慮しておきたいところです。これはシンプルな人民元高要因となり得るでしょう。

3.今後の見通し

現時点における8月の人民元相場見通し
対ドル:6.40~6.50 横ばい~やや下の目線
対円:16.90~17.30 上目線

市場参加者の米金融政策に対する見方は、テーパリング開始が年末~来年初、利上げが来年末~再来年初とほぼ固まっています。利上げスケジュールに関しては前後にぶれる可能性が大いに残されているので、そこを注目していくというのが、現在の相場で重要と考えます。

利上げ時期を想定していく上で、一つは経済指標を着実に追っていくことが重要になります。それは繰り返しパウエル議長が説明しているように、FEDはデータ(経済指標等)を見て、対応を決定するからです。

そして経済指標を予測していく上で重要な先行指標が、Covid-19の感染状況の確認です。そもそもデルタ株に現在のワクチンは効き目があるのか?ワクチン接種率は改善しているか?マスク着用率は改善しているのかなど、ニュースを通じて追っていく時間帯になると思います。

米企業や米大学機関がワクチン接種を義務付けるなど、昨年末~年初にかけての感染拡大の反省を踏まえ、少しずつ米社会は変わりつつあるようにも見えます。しかし人権を大切にする文化があるため、どうしても中国のようにドラスティックに対応出来ないところもあると思うのです。

ですからコロナ対策では常に中国が一歩上を行き、その分の経済の出遅れを為替レートが織り込んでいくことを想定しています。従って人民元は買いやすい状況になってきていると考えています。となるとあとはドル円です。

ドル円は先週一時108円台に突入する局面もみられましたが、一旦これで底打ちした可能性もあると考えています。109.20前後はサポートとしても機能し続けるように思いますし、強かった米7月雇用統計は素直に買い材料と考えています。

一方で日本はコロナ対策やワクチン接種で出遅れていますし、金融緩和が長期化することを考えれば、この辺りから円を売ってドルを買っていくことはリーズナブルな投資戦略と考えます。

まとめるとUSD/CNHは材料ミックスの中で、ややドル売り人民元買い圧力が強まる展開を想定します。またCNH/JPYは素直に買いから入っていくとワークしやすいと考えます。


本日は以上となります。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

戸田裕大

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
外為どっとコム取引端末:外貨ネクストネオ
https://Investing.com

補足事項 人民元相場を追っていく時に、大切なことは、USD/CNH(ドル/人民元)を必ずチェックしておくことです。取引そのものはCNH/JPY(人民元/日本円)で行うことが多いと思いますが、CNH/JPYはUSD/CNHとUSD/JPYで構成されていますので、USD/CNHもチェックしておくことが肝要です。

またPBOC(中国人民銀行)が最も気にしているのもUSD/CNH(厳密にはUSD/CNY)です。日本銀行がドル円のレートを常に注意しているのと同様、PBOCも常に対ドルレートを気に掛けています。ですからUSD/CNHを見ておくことで、PBOCの動きにもアンテナを高くしておくことが出来るのです。

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
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