「円高が日本経済回復の重荷に」
「株安の陰で円高圧力がじわり」
「コロナワクチン期待の米株高で円相場が反落、前日比10銭の円安に」
毎日のように新聞の一面をこうした見出しが飾ります。みなさんも目にしたことがあるでしょう。
ニュースでお馴染みの「円高」や「円安」とは、一体どういうものなのでしょうか。
FX取引をする投資家の視点から考えてみましょう。
「円高」「円安」になると・・・
「円高」とは、ドルやユーロなどの日本円以外の通貨に対して、円の価値が上昇することを意味しています。
「円安」はその逆です。では通貨の価値が高く、または安くなるとどんなことが起きるのでしょうか。この円高と円安について事例を用いて説明します。
あなたは1万ドルの車を1台、アメリカで購入することになりました。
そのとき為替レートが「1ドル=100円」の場合、購入金額は100万円です。
ところが、購入時に為替レートが「1ドル=90円」に変動したら購入価格は90万円になり、10万円も安く買えることになります。これはドルに対して円の価値が上がって「円高」になったからです。
一方で「円安」はその反対のことが起きます。
購入時に「1ドル=110円」に変動して円安になれば購入価格は110万円となり、10万円も多く支払うことになります。
FXは主にこのような為替レートの変化を利用して利益を獲得する金融商品です。為替レートはさまざまな理由から常に変動し続けています。
「1ドル=100円」から「1ドル=90円」という「円高・ドル安」になったときにドルを購入し、「1ドル=110円」という「ドル高・円安」になったときに売却すれば、1ドルあたり20円の利益が得られます。
「円高・ドル安」なの?「ドル安・円高」なの?
上の解説を読んで、「なんか変だな」「わかりにくいな」と思う方もいるでしょう。
100円が90円に“値下がり”したのに、なぜか「円高」と言い、100円が110円に値上がりしたのに、なぜか「円安」と表現します。
「あれ? どっちだったかな?」と混乱するかもしれません。
これは日本の新聞やテレビなどでは、自国通貨の「円」を基準に「円安」「円高」と表現することに一因があります。
一方、FXの舞台である外国為替市場の為替レートでは慣習に従ってドルが基本通貨(左)、円が決済通貨(右)となり、ドル/円(USD/JPY)と表記されます。
これは1ドルあたりの円の値段という意味です。
たとえば、1ドル=100円だった為替レートが1ドル=90円になれば、ドルの価値が下がるドル安・円高であり、1ドル=110円になれば、ドルの価値が上がるドル高・円安ということになります。
通貨の「強弱」とは
通貨には「高い」「安い」だけでなく、「強い」「弱い」という表現もあります。
FXはドル/円(USD/JPY)、ユーロ/ドル(EUR/USD)というように「通貨ペア」単位でトレードを行います。
テクニカルチャートの分析も、基本的に「通貨ペア」単位で行います。
これに対し、円やドルという通貨単体でどれくらい買われているのか、売られているかを分析すると、相対的な通貨の「強弱」が分かります。
通貨の強弱はどの通貨ペアがより変動しているか、注目すべきかを示す指標にもなります。
強い通貨と弱い通貨の組み合わせ
ドル/円という通貨ペアで考えてみます。
たとえば「ドルが強い」というのは、資金がドルに集まって買われている状況で、ドル高傾向になります。
「円が弱い」というのは、円の需要が低くなり資金が他の通貨に流出して円安傾向になります。
・ドルが強い:ドル高方向へ価格が動きやすい相場
・円が弱い :円安方向へ価格が動きやすい相場
つまり、ドルが強いときに円を売ってドルを買えば、利益が得られる可能性が高くなるということです。
「ドルが強く、円が弱い」状態が続くと、ドル/円はどんどんと上昇していきます。
こうして相場の大きな流れである「トレンド」が生まれるのです。
なお、通貨ペアのどちらかに資金がより集まって強弱の差が開けば開くほど、相場のトレンドがさらに強くなります。
FXトレードにとって通貨の強弱分析が要となっていることがわかります。
通貨強弱で相場の動きはどうなるのか
2021年に入り、アメリカの景気回復や長期金利上昇を背景にドルが他の通貨よりも強い状況が続いています。
2021年1月から6月末までの主要4通貨の強弱を終値ベースで比較(※1)してみると、ドルの強さが引き立ちます。
※1通貨のクローズ時の価格を対数変化率で集計し、4通貨ごとに相対的な強弱を算出
この強弱が通貨ペアのチャートでどのように表れるのかを見てみましょう。
ドル/円(USD/JPY)、ユーロ/ドル(EUR/USD)、豪ドル/米ドル(AUD/USD)の3通貨ペアの6カ月間のチャート(2021年1月以降)です。
ドル/円相場でドルが強く(高く)なると、チャートは右肩上がりになります。
他方で「ユーロ/ドル」「豪ドル/米ドル」というようにドルが右側の通貨ペアでは、右肩下がりのチャートになります。
このように通貨単体の強弱がわかると、通貨の組み合わせにより注目すべき通貨ペアが浮き彫りになります。
今回は「円高」「円安」のように通貨の価値が高く、または安くなったときの相場状況のほか、「強い」「弱い」という表現についても解説しました。
FXは通貨の価値が上下動することが利益に直結します。
強い通貨と弱い通貨の組み合わせによる大きな為替レートの変動を捉え、効率よくFXで利益を狙えるようにしましょう。
Pickup編集部