総括
下落止まるも、依然ボリバン下位。8円以上の売りを突破する材料が出るか
通貨1位、株価8位
予想レンジ 南アランド円 7.6-8.1
(ポイント)
*FOMCショックから半値戻し近くへ
*CPIは5.2%へ上昇
*次回政策金利決定は7月22日
*今年の成長率予想は4.1%
*米中対立激化、FRB利上げ予想前倒しで南アランドは急落した
*対円8.15-20の売りも下落を誘った
*コロナ感染が拡大している
*5月31日からコロナ抑制策発動で経済活動は鈍る
*4月小売売上は弱かった
*秋に米中首脳会談の可能性あり
*南ア株価指数も大きく下落
*1Q・GDPは予想を上回った
*1Q経常黒字は拡大
*S&Pが財政、成長率で前向きな評価を与える
*製造業PMIなどは好調
*貿易・経常収支の黒字が南アランドを支える
*弱点は雇用と停電
*中銀総総裁=南ア国債の利回りの高さが海外投資家をひきつける
*経済対策財源は公務員給与の昇給凍結
*21年インフレ見通しは4.2%
(下落止まるも、依然ボリバン下位)
ランドは下げ止まって反発。先週は5連続陽線。ただ6月7日の高値8.166と6月21日の安値7.619の半値7.893に届かず、まだボリバン下位のままだ。それだけ以下の4つのショックは大きかった。新型コロナ感染者が増加し感染抑制策が強化されたこと、またエスコム計画停電を実行したこと、米中対立が激化したこと、さらにはインフレ懸念は一時的としていたFRBが利上げ予想を前倒し、量的緩和の議論を開始したこともランドの下落を加速させた。
それでもパウエルFRB議長がインフレは一時的だと繰り返したこと、秋には米中首脳会談開催の可能性ありとの報道があったこと、南ア5月の消費者物価、生産者物価が上昇したことなどが反転材料となった。
一目均衡表の雲も支えた。6月7日-11日の下降ラインを上抜けるかどうか。売りが多い8円台を突破する好材料が出るかどうかも注目したい。
(今週の材料)
今週は南アランドを支えてきた5月貿易収支の発表がある。予想は462億ランドの黒字。
(5月消費者物価、生産者物価上昇)
*消費者物価(CPI)5月 5.2% 4月4.4%
*卸売物価(PPI)5月7.4% 4月6.7% (前年比)
南アのインフレ目標は3-6%である。
(政策金利は)
政策金利については年内は3.5%に据え置かれ、来年1月か3月に3.75%に、7月か9月に4.0%に引き上げられるとの見通しが調査で示されていた。インフレ率は今年が4.2%、来年が4.4%と予想されている。ただ5月の消費者物価上昇で利上げの前倒しの声も聞こえてきた。
(今年の南ア成長率は4.1%、昨年の減少は埋められず)
南アの今年の成長率は予想中央値が4.1%となり、新型コロナウイルス感染の大流行による昨年の落ち込みを完全に埋めるには至らない見通しだ。
予想中央値は前月調査時点から0.2%ポイント上方修正となった。昨年は7.0%のマイナス成長。昨年4Qは前期比で1.5%のプラス成長になっていたが、今年1Qはプラス1.1%とやや鈍化している。
同国の石炭火力発電所は老朽化が進んでおり、負荷軽減のため国営電力エスコムが計画停電を実施。新型コロナウイルスワクチンの接種が進展していないことも経済回復の足かせとなっている。
今年の成長率が4%をしっかりと超える可能性も現実味を帯びたと指摘する一方、現在のコロナ流行の第3波に対しても緩やかな制限措置が継続されることが条件だ。政府は現在、アルコール類の販売や集会を再び制限している。
(WHO、南アに新型コロナワクチン技術移転拠点を設置)
WHOは、中低所得国の企業に新型コロナウイルスワクチンの製造技術・認可を与えるための「技術移転拠点」を南アフリカに設置すると発表した。
ファイザーやモデルナが開発したメッセンジャーRNAを使ったワクチンを、アフリカ企業が9カ月から1年以内に製造できるようになる可能性があるとしている。
これまでに南ア企業2社が参加の署名をしており、WHOはファイザーとモデルナに参加を求める交渉を行っている。ラマポーザ大統領は、「この取り組みを通じ、われわれは疾病と低開発の中心地というアフリカの物語を変えるだろう」と述べ、歴史的一歩になるとの認識を示した。
テクニカル分析(ランド/円)
5連続陽線。ただまだボリバン下位
日足、ボリバン3σ下限まで下落した後は5連続陽線。ただまだボリバン下位。6月24日-25日の上昇ラインがサポート。6月16日-25日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く。
週足、6週連続陽線ならず。一転2週連続陰線も先週は陽転。ボリバン中位で踏みとどまる。3月8日週-6月21週の上昇ラインがサポート。6月14日週-21日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、4か月連続陽線。今月は陰転。雲に入れず。21年4月-5月の上昇ラインがサポート。18年2月-21年6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、18年-20年の下降ラインを上抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。20年の下ヒゲも効いている。
喜望峰
テーパータントラムのリスクを示唆する声あり
モルガン・スタンレーは、FRBがタカ派姿勢を強めたことで「テーパータントラム」(緩和縮小を巡る市場の混乱)のリスクが高まったとし、新興国の通貨・債券の投資判断を弱気に引き下げた。
FRBがタカ派姿勢を強めたのは重要な転換であり、実質利回りの上昇とドル高をもたらす公算が大きいとの見方を示した。新興国債のバリュエーションも魅力的ではないとし、今年末までのトータルリターン(総合収益率)はマイナス2%になると予想。高利回り債より投資適格級債券を再び選好するなど、新興国債へのエクスポージャーを段階的に減らすのが好ましいとの見方を示した。「新興国資産の安定期間は予想より短かった。年終盤に見込んでいたドルや実質金利による圧力が加わり始めたためだ」とした。
新型コロナウイルスのワクチン接種の遅れや新たな変異株の出現により、新興国と先進国の成長格差が広がる恐れがあるとも指摘した。
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