【外為総研 House View】
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 4月の推移
・4月の各市場
・4月のポンド/円ポジション動向
・5月の英国注目イベント
・ポンド/円 5月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 4月の推移
・4月の各市場
・4月の豪ドル/円ポジション動向
・5月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 5月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 4月の推移
4月のポンド/円相場は149.062~153.406円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.0%下落した(ポンド安・円高)。英国のロックダウン(都市封鎖)緩和を好感して6日に153.41円前後までポンド買いが先行したが、その後はユーロ/ポンドの反発(ユーロ高・ポンド安)が主導する形でポンドが全般的に軟化した。
英国に比べ新型コロナワクチンの接種が遅れていたユーロ圏で接種ピッチが上がった事がユーロ/ポンドの反発を招いた。ただ、12日から英ロックダウン(都市封鎖)の段階的解除が第2ステージへと進み、経済活動が再開する中、ポンドの下値も限られた。23日には149.06円前後まで下落したが、月末にかけては円安主導で151円台に持ち直した。
出所:外為どっとコム
6日
イースター休暇明けの欧州市場でユーロ買い・ポンド売りが活発化。欧州委員会は、6月末までに大半の欧州連合(EU)加盟国で人口の過半数に接種するのに十分な量の新型コロナワクチンを確保する見込みだと一部メディアが報じた。4-6月期のワクチン配布は3億6000万回を見込んでいるとの事。
これまで、ワクチン接種の進展を手掛りに買われてきたポンドを売ってユーロを買い戻すきっかけになった模様で、対円でもポンドは弱含んだ。英投資会社CVCキャピタルパートナーズが2兆円超で東芝に買収を提案したと伝わった事もポンド売り・円買いを誘ったと見られる。
7日
前日に続き、ユーロ売り・ポンド買いの既存ポジションを巻き戻す動きが強まった。欧州医薬品庁(EMA)の高官が、英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンと血栓症の発症に関連性があるとの考えを示した事もポンドの重しとなった。
13日
英2月鉱工業生産は前月比+1.0%と予想(+0.5%)を上回る伸びとなった一方、英2月貿易収支は164.42億ポンドの赤字となり、赤字額は予想(105.00億ポンド)を超えた。
英2月国内総生産(GDP)は前月比+0.4%(予想+0.5%、前回-2.2%)と予想に届かなかった。なお、英中銀(BOE)のチーフエコノミストで、タカ派と目されているホールデン氏が6月末で退任する事が伝わったが、ポンドに目立った反応はなかった。
20日
英3月雇用統計は、失業率7.3%、失業保険申請件数1.01万件増(前回7.3%、6.73万件増)であった。また、12-2月の国際労働機関(ILO)失業率は4.9%と予想(5.0%)を下回った。一方、12-2月の週平均賃金は前年比+4.5%と予想(+4.8%)に届かなかった。
21日
英3月消費者物価指数は前月比+0.3%、前年比+0.7%と予想(+0.4%、+0.8%)を下回った。一方、英3月生産者物価指数は前月比+0.5%、前年比+1.9%と予想(+0.3%、+1.7%)を上回る伸びとなった。
23日
英4月製造業PMI・速報値は60.7、同サービス業PMI・速報値は60.1と、いずれも予想(59.0、58.9)を上回ったが、ポンドの反応は限定的だった。
27日
ロンドン16時のフィキシングの前後で円売りが活発化。投資家のリバランス(投資資金再分配)に絡む円売りが出たとの観測や、この日日銀が発表した物価見通しがハト派的であったため、大規模な金融緩和が超長期化するとの思惑が広がったとの見方も出ていた。
4月の各市場
4月のポンド/円ポジション動向
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5月の英国注目イベント
ポンド/円 5月の見通し
5月6日に投票が行われたスコットランドの議会選挙は、英国からの独立を目指すスコットランド民族党(SNP)が第1党の座を維持したが、過半数議席には僅かに届かなかった。同じ立場のスコットランド緑の党と合わせれば「独立派」が過半数を超えるものの、市場には「直ちに独立の是非を問う住民投票が行われるリスクは低下した」との楽観的な見方が漂っている。住民投票には英国政府の承認が必要となるが、ジョンソン英首相は投票を認めない方針を貫いている。
こうした中、市場が楽観論に傾くのも頷けよう。とはいえ、SNPは2回目の住民投票実施を選挙公約に掲げているだけに、簡単には実施を諦めないだろう。この先、スコットランド自治政府と英政府との対立が激化する可能性が高く、ポンド相場の波乱要因となり得る点には注意が必要だ。
英国は新型コロナウイルスの感染抑制策が奏功してロックダウン(都市封鎖)の終了も視野に入ってきた。これに伴い景気回復への期待も高まっており、ポンドは当面強含みで推移すると見るが、懸念材料もある事から上値はいくぶん慎重に見ておきたい。
(予想レンジ:150.000~157.000円)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 4月の推移
4月の豪ドル/円相場は83.022~85.006円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%上昇した(豪ドル高・円安)。米国株(S&P500など)が史上最高値を相次いで更新するなど、リスク選好地合いが続いた割には豪ドル/円相場の動きは鈍く、4月の値幅は2円程度に留まった。
上値は85.01円前後どまりで、3月に付けた約3年ぶりの高値85.66円前後には届かなかった。豪中銀(RBA)が2024年まで利上げを行わない見通しを維持した事や、中国の海洋進出や人権問題を巡り、米中の対立懸念が広がった事が豪ドルの上値を抑えたと見られる。
出所:外為どっとコム
1日
豪2月貿易収支は75.29億豪ドルの黒字となり、黒字額は予想(98.72億豪ドル)を下回った。その後中国3月財新製造業PMIが50.6となり、予想(51.4)に反して前月(50.9)から低下すると豪ドル売りが優勢となった。ただ、NY市場ではS&P500が史上初めて4000ポイントの大台に乗せるなど、景気回復期待を背景に米国株が上昇する中で豪ドルも反発した。
6日
RBAは予想通りに政策金利と3年債利回り誘導目標を0.10%に据え置いた。声明では「景気回復は順調に進んでおり、予想以上に好調だ」としつつも「とはいえ、賃金や物価の上昇圧力は抑えられており、数年間はこの状態が続くと予想される」と先行きに対する慎重な見方を維持。その上で、少なくとも2024年まで利上げの条件が整う事はないとの見通しを示した。前回の声明を概ね踏襲した内容とあって豪ドルの反応は小さかった。
12日
イエレン米財務長官は就任後初となる為替報告書で中国を為替操作国に認定しない方針だとする関係者の話が伝わった。これを受けて中国人民元相場がやや上昇したが、豪ドルの反応は小さかった。
15日
豪3月雇用統計は、新規雇用者数が7.07万人増と予想(3.50万人増)を上回る伸びとなり、失業率も5.6%へと低下(予想5.7%、前回5.8%)。これを受けて一時豪ドル買いが強まったが、上海株が下落して始まると戻り売りが強まり反落した。
16日
中国1-3月期国内総生産(GDP)は前年比+18.3%と過去最大の伸びとなり、前回10-12月期の+6.5%から加速した。ただ、市場予想(+18.5%)には届かなかった。同時に発表された中国3月小売売上高は前年比+34.2%(予想+28.0%)、同鉱工業生産は前年比+14.1%(予想+18.0%)であった。これらを受けて豪ドルは一時下落した。
19日
16日(日本時間17日)に行われた日米首脳会談後の共同声明で台湾海峡の平和と安定に言及するなど、両国は中国へのけん制を強めた。これを受けて日中および米中の対立激化が懸念される中、円買いが先行した。
20日
RBAは4月理事会の議事録を公表。「雇用、インフレ目標が達成されるまで非常に支援的な金融条件を維持」「早くても2024年まで、失業、インフレの目標に到達することを予想していない」「目標に向けた進捗を支援するならば、さらなる債券購入の準備がある」などとして慎重な姿勢を示した一方、国内経済の回復は予想以上に進んでおり、2021年と2022年は基調を上回る景気拡大を続ける可能性が高いとする楽観的な見通しを示した。これを受けて豪ドルは買いが優勢となった。
しかし、インドやブラジルなど新興国を中心に新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、世界的な景気回復への期待が後退する中、欧米株が下落すると豪ドルは下げに転じた。
21日
豪3月小売売上高は前月比+1.4%と、市場予想(+1.0%)を上回る伸びとなった。しかし、日本株が大きく値を崩す中で豪ドル買いの反応は一時的だった。
22日
バイデン米大統領は富裕層に対するキャピタルゲイン税の税率を現行の20%から39.6%に引き上げる事を提案する見通しと伝わった。これを受けて米国株が急落すると豪ドルも下落した。
28日
豪1-3月期消費者物価指数は前年比+1.1%と予想(+1.4%)を下回る伸びに留まった。
4月の各市場
4月の豪ドル/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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- ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
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5月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 5月の見通し
豪ドル/円は、上値が重かった85.00円を5月に入り突破。10日には85.80円前後まで上伸して2018年2月以来の高値を付ける場面もあった。ただ、資源価格の値上がりなどから世界的なインフレ上昇が懸念される中、主要国の株価がやや不安定化しているのが気がかりだ。
今後の株価動向次第では、市場のリスクセンチメントに左右されやすい豪ドル相場にも高値警戒感が広がる可能性があろう。米国株には「セル・イン・メイ(5月に売れ)」の格言もあるだけに、株価動向には一定の注意が必要となりそうだ。ただ、新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、世界景気の本格的な回復局面がこれから到来するとの見方に立てば、主要国株価が大きく崩れる公算は小さいだろう。豪ドル相場も、いくらかの調整を挟みながら高値警戒感を克服できると考えられる。
なお、豪中銀(RBA)は5月4日の理事会で、9月に終了する予定の資産購入プログラムの取り扱いについて、7月理事会で検討すると表明した。これにより、当面は豪金融政策に焦点が当たる可能性は低下したと見られる。
(予想レンジ:82.000~87.500円)
神田卓也