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【17円台に突入!?】ひたすら上昇する人民元のなぜ?にお答えします「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や、公表された経済データなどをもとに、香港や中国本土の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第44回は「【17円台に突入!?】ひたすら上昇する人民元のなぜ?にお答えします」でお届けいたします。

なお、本日は、前半は香港情勢について、後半は人民元について記載しています。

目次

1.持ち直しの動きが見られる香港経済
2.香港ドル相場のアップデート
3.人民元相場特集

1.持ち直しの動きが見られる香港経済

さて、今月3日に香港の2021年、第1四半期のGDPが公表されました。最悪期の2020年第1四半期との比較とは言え、7四半期ぶりにプラス成長(+7.8%)となり、長引く不況からようやく脱出しました。

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また4日には3月小売売上高が発表されました。こちらは、今年の1月までは順調に回復していたのですが、足元2か月は下降基調となっており、消費の戻りが弱まっています。政府担当の報告によれば、国内の新型コロナウイルスの影響に加え、海外からの渡航者(旅行)が減っていることも大きく影響しているそうです。

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※香港は経済指標の発表が先進国の中ではやや遅く、5月に3月分の発表を行っています

香港の小売は本土からの旅行者によって支えられており、現在のように自由に人の行き来が出来ない状況では、伸びは期待できないのかも知れません。

ただし、直近では新型コロナウイルスの感染者数がほぼゼロに抑えられており、この点は明るい材料と言えます。

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新規感染者数の増加が長く抑えられれば、国を跨ぐ往来が可能となり、本土からの旅行者も増えると思います。少しずつ本土との移動も緩和されてきているようですが、全面的な人の行き来の開放がいつになるか、この点が景気回復の鍵を握りそうです。

2.香港ドル相場のアップデート

先週のドル円相場は、1ドル=109.25円からスタートしました。週初は先週の流れを引き継ぎ一時109.71まで上昇したのですが、米国の4月ISM製造業指数や、金曜日に発表された米4月雇用統計が予想比で下振れ、一時108.33まで下落。その後の戻りも鈍く108.60でクローズとなり、今週を迎えています。週明け月曜日、夜の執筆段階では、再び109円台に乗せる局面もありましたが、上値は重く108.70前後で推移しています。

このような状況を踏まえて、香港ドルを取り巻く環境を見て行きます。

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USD/HKD(米ドル/香港ドル:青色のライン)は、方向感が出なくなってきました。もともと米景気回復が先行していたため米ドル高でしたが、香港もワクチン接種が進んだことで徐々に景気回復の兆しが見られ、やや香港ドル高に戻しています。この通貨ペアは1USD = 7.75HKD-7.85HKDのレンジをブレイクしそうな瞬間に注目が集まりますが、今はそのような局面ではありませんので、様子見でよいかと思います。

HKD/JPY(香港ドル/日本円:茶色のライン)については、ドル円の下落もあって伸び悩み、14円を挟んでの推移が続いています。香港ドルの動きに方向感が出ていませんので、USD/JPY次第の展開となりそうです。USD/JPYの下押しについては、ドルも弱いですが、円はもっと弱いため、下落は限定的と考えています。そのためHKD/JPYの下落も限定的かと思います。

3.人民元相場特集

さて、本日は、少し詳しく人民元を見て行きたいと思います。

USD/CNH(米ドル/人民元)はドル安の流れを受け、ドル安・人民元高が続いています。

ロウソク足を使って詳しく見ていきますが、2月に直近の安値6.3987(赤い水平ライン)を付けています。しかしこのサポートを、今週にも下にブレイクしそうな状況です。おそらくここを下抜けると走ると思います。つまりドル安・人民元高が加速する可能性があります。

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米国の経済指標は芳しくありませんが、中国の経済指標は軒並み好調です。また米国は金融緩和を継続していますが、中国は平常運転です。景気、それから金融政策の面で、非常にコントラストが鮮明であると言えます。

そしてCNH/JPY(人民元/日本円)はとにかく強いです。ドル円が上下する中でも、CNH/JPYは堅調に推移し、今週にも節目の17円を突破しそうな勢いがあります。

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ところで、読者のみなさんは、経常収支と言う用語をご存じでしょうか?これは国を一つの企業として捉えたときの、損益計算書のようなものです。つまり、その国が儲かっているのか、損しているのかを計測しているのですが、中国の最近の経常収支の黒字幅はおそらく世界一大きいです。

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米中貿易摩擦などありながらも、収入源である貿易黒字(オレンジ色)が伸びていますし、コロナ下で国民の海外旅行が制限されていることから、主な支出項目であるサービス収支(黄色)も低く収まっています。まさにコロナ下で中国独り勝ちの状況と言えるのですが、それが通貨価値にも反映されていると考えています。

簡単に言えば、世界で一番儲かっているのですから、通貨の価値が上昇しても不思議ではない、と言うことです。

最後にいつものドル円と中華圏通貨の比較表を添付します。人民元が圧倒的ですね。勝ちたいならドル円買い持ちよりも、人民元を買っていくのが正解だと思います。個人的には今もっとも勝ちやすい通貨だと思いますので、試されてみてはいかがでしょうか?

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本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

戸田裕大

<最新著書のご紹介>

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なぜ米国は中国に対して、これほどまでに強硬な姿勢を貫くのか?

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【インタビュー記事】

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

新型コロナウイルス・データ
COVID-19 Data Repository by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University

South China Morning Post: Coronavirus: Hong Kong retail sales rise 20 per cent in March, but sector’s recovery is losing steam
https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3132205/coronavirus-hong-kong-retail-sales-rise-20-cent

各種経済指標:Hong Kong Census and Statistics Department
https://www.censtatd.gov.hk/en/

【過去の「日本人の知らない香港情勢」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。