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香港の最新経済情勢と2020中国経済工作会議 為替はドル安「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第27回は「香港の最新経済情勢と2020中国経済工作会議 為替はドル安」でお届けいたします。

それでは、さっそく本題に入っていきます。

目次

1.最新の香港情勢
2.2020中国経済工作会議の要点
3.香港ドルと人民元相場のアップデート

1.最新の香港情勢

先週、香港の9-11月の失業率は6.3%と公表されました。前月(6.4%)比で0.1%改善しているものの、引き続き香港の失業率は高止まりしています。

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香港の厚生労働省の長官によれば、全体でみれば雇用環境に改善の傾向はみられるものの、産業別の失業率では、旅行関係が10.1%、飲食関係が13.1%と引き続き高く、また新型コロナウイルスの状況によって、今後もさらに失業率が悪化する可能性があります。

特に旅行業の落ち込みは顕著で、香港への外国からの入国は、先月11月単月で計6,000人(内、中国人が3,555人)まで落ち込んでおり、前年同月比では99.8%の減少となりました。基本的には、香港はロックダウン状況にあり、中国との陸繋がりの国境こそ近隣住民のために一部開放しているようですが、それでも頻繁な往来は行われておりません。

また最大50%の従業員に対して、月額9,000香港ドルを支給する雇用助成金についても、香港の財政状況に鑑み、既に今年の9月13日に申し込みを打ち切っておりますので、来年に再度コロナウイルスの影響が拡大すれば、さらなる雇用環境の悪化が想定される状況になっています。

香港経済は来年も、まだまだ予断が許されない状況が続きそうです。

2.2020中国経済工作会議の要点

18日に中国で年に1度行われる「中央経済工作会議」が行われました。これは現在の経済情勢を判断し、翌年のマクロ経済政策を決定する上で最も権威ある経済会議で、中央経済工作会議の開催前には、中央指導者らが全国各地で1カ月以上をかけて調査研究を実施、経済政策についての検討が行われます。

会議の要点は以下の通りで、8つの方針が示されました。なお1番から順に優先順位の高さを示しているものと想定されます。

1. 国家の戦略的科学技術力を強化
2. サプライチェーンの独立制御性の強化
3. 内需拡大
4. 改革と開放の推進
5. 種子と耕作地の問題解決
6. 独占禁止の強化、資本の無秩序な拡大防止
7. 大都市の住宅価格高騰の抑制
8. 炭素排出量の削減

国家戦略における科学技術力の強化を優先順位1位に持ってくるのは、中国が今までのように米国や欧州、日本の技術を学ぶだけではこれ以上の発展が見込めないと言う認識と、この現状を全力で乗り越えるという決意だと思います。ここは私が中国滞在期間中に特に強く感じたところですが、中国は技術革新にある意味、命を懸けていますので、本気で力を入れて取り組んでくると思います。

例えばAIを用いて陸海運の交通混雑を緩和する、融資判断やお勧めの投資商品案内を自動化する、半導体を自前で賄えるように工夫する、イスラエルと組んで電気自動車戦略を推し進める。勝たなければ、米国に潰されてしまう、中国はこのような環境の中で本気で技術改革にあたっています。日本にはなにかと湾曲されて伝わり易い中国情報ですが、世界のBuy China思想の根底にあるのは、本気の中国を見ているからだと思っています。

一方で炭素排出量の削減は8位と優先順位を最劣後させました。アメリカのバイデン大統領候補が掲げる政策とは真逆で面白いと思います。今、実利に繋がることを最優先で進めているのは、中国かも知れません。

少し気になったのは独占禁止の強化で、これはアントの上場延期ともつながる話ですが、国家と巨大テック企業間の緊張関係は中国でも問題になっています。今週に入って京東・テンセント・アントのオンライン預金商品が販売停止になると言うニュースが報じられていますが、金融面での技術革新においては、規制が優先され、イノベーションが阻害される可能性が高そうだとみています。自由競争と秩序のジレンマに陥る金融分野において、技術革新は腰折れせざるを得ないでしょう。

3.香港ドルと人民元相場のアップデート

さて恒例の相場環境の確認です。まず相場の全体感ですが、現在の相場はドル安相場です。先週のFOMCでも示されたように、米国は長期で量的・質的緩和を継続する方針で、特に2023年頃までのゼロ金利政策の継続可能性が意識されて、ドル売り圧力が強まっています。ドルの強さを示すドルインデックス(コード:DXY)は、一時、今年初となる90割れを記録、ドル売りに歯止めが掛からない状況が続いています

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このような相場環境の中で香港ドルは以下のように推移しています。

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香港ドル/日本円(HKD/JPY)はドル円の下落に連れて、引き続きじり安の展開、13.30台を割り込み、一時13.20台まで下落しました。また米ドル/香港ドル(USD/HKD)についても継続して下落基調にあり、7.75近辺での攻防が続いています。ドル安が続く中で、USD/HKDが7.75で維持されているので、実際の相場と、本来の通貨価値に大きくギャップが生まれてきており、軋みが発生しています。来年のUSD/HKDの7.75割れは一つの可能性として、頭に入れておいて損はないと思います。

最後に人民元を見ていきます。

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人民元/日本円(CNH/JPY)は長らく上昇してきましたが、先週はドル円の下落も相まって頭打ちの様子、一時15.80台を割り込み15.70台まで値を下げました。また米ドル/人民元(USD/CNH)についても一方的な人民元高に歯止めが掛かってきたように見えます。背景には中国人民銀行の金融政策の変更がありそうです。以下のチャートをご覧ください。

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赤いチャートが3ヵ月物の人民元金利ですが、上昇していた人民元金利は先週反転、低下に転じたことが見てとれます。これは中央銀行が景気を下支えするための利下げ措置と思われ、今後も続いていく可能性があります。つまり人民元の金利低下が、一方的な人民元高の歯止めに繋がり、トレンド転換の可能性を示唆しています。筆者は中国の経済指標も詳細まで追っていますが、ここのところの数字を細かくみていくと、中国もあまり景気は良くありません。金融政策を転換した可能性は十分にあり得ると思います。

この辺りからドル買い人民元売り、つまりUSD/CNHの買い持ちは面白いトレード・アイデアだと思います。いよいよクリスマスですし、年末も近いので、少しずつ取引は閑散になると思いますが、一つのトレード・アイデアとして、頭の片隅に入れて頂ければ幸いです。


それでは本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

なお本年のレポート配信はこれで終了、来年は5日から配信を再開いたします。少し早いですが、みなさまよいお年をお迎えください。

それでは、また来年お会いしましょう。

戸田裕大

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【インタビュー記事】

【過去記事】

media.gaitame.com

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

香港政府サイト:Application for the 2nd tranche is closed
https://www.ess.gov.hk/en/index.html

South China Morning Post: Hong Kong jobless rate edges down to 6.3 per cent, but pressure on labour market likely to increase amid fourth wave, official warns
https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3114351/hong-kong-jobless-rate-edges-down-63-cent-pressure

South China Morning Post: Hong Kong tourist arrivals slide 99.8 per cent year on year in November amid Covid-19 fourth wave
https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3114024/hong-kong-tourist-arrivals-slide-998-cent-year

中華人民共和国中央人民政府:中央经济工作会议举行 习近平李克强作重要讲话
http://www.gov.cn/xinwen/2020-12/18/content_5571002.htm

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。