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「英・EU通商交渉の期限迫る」外為総研 House View ポンド/円・豪ドル/円 2020年12月

【外為総研 House View】

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目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 11月の推移
・11月の各市場
・11月のポンド/円ポジション動向
・12月の英国注目イベント
・ポンド/円 12月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 11月の推移
・11月の各市場
・11月の豪ドル/円ポジション動向
・12月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 12月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

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ポンド/円 11月の推移

11月のポンド/円相場は134.875~140.289円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.6%上昇(ポンド高・円安)した。

懸案の英国と欧州連合(EU)の通商交渉は合意の見通しが立たないまま移行期間の終了まで残り1カ月となったが、交渉を延長するなど合意に向けた姿勢を両者が示した事からポンド売り材料になる場面は少なかった。

そうした中でポンドを押し上げたのは、米国の財政赤字拡大観測や超低金利政策長期化観測などによるドル安と、新型コロナウイルスワクチン期待の株高などを背景とする円安だった。11月のドルはポンドに対して約2.9%下落、円はドルに対して小幅に上昇したが、その他の通貨に対しては概ね下落した。

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5日
「英中銀(BOE)はこの日の金融政策委員会(MPC)で資産買い入れプログラムを最大2000億ポンド拡大する可能性がある」、「BOEはマイナス金利の導入を検討している模様」などと英紙が相次いで報じるとポンド売りが先行。

その後、BOEは政策金利を0.10%に据え置いた一方、資産買い入れプログラムの規模を7450億ポンドから8950億ポンドへと拡大。観測報道の内容ほど強力な緩和措置ではなかったため発表後はポンドを買い戻す動きが強まった。

6日
ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長が7日に電話会談を行う事をEU当局者が明らかにすると、通商交渉が進展するとの期待からポンドは強含んだ。

ただ、バルニエEU首席交渉官は、英国が主要問題で何ら動きを見せていないとした上で、「ジョンソン首相に合意を成立させる意思があるのなら、姿勢を転換する政治決断を下さなければならないだろう」との見方を示した。このため、ポンドは伸び悩んだ。

9日
米製薬大手ファイザーが開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、数万人が参加した治験で90%超の感染予防効果があったとの暫定結果を発表。欧州株や米株先物が急騰する中で円売りが活発化するとポンド/円は大幅高となった。

10日
英10月失業率は7.3%、英10月失業保険申請件数は2.98万件減であった。また、英7-9月ILO失業率は予想通りの4.8%、英7-9月週平均時給は前年比+1.3%と予想(+1.1%)を上回る伸びとなった。ポンドはこれらに対して目立った反応を示さなかったが、スナク英財務相が「EUとの通商交渉で進展があった」との見解を示した事などから上昇した。

12日
英7-9月期国内総生産(GDP)は前期比+15.5%と4-6月期(-19.8%)から急回復したものの、伸び率は予想(+15.8%)に届かなかった。その他、英9月鉱工業生産は前月比+0.5%(予想:+1.0%)、英9月貿易収支は93.48億ポンドの赤字(予想:93.00億ポンドの赤字)であった。

英国とEUの通商交渉について英メディアは、EU外交官らに悲観ムードが漂っていると報じた。これ以前には、ジョンソン英首相の上級顧問が辞任を表明した事も伝わった。これらを受けてポンドは弱含んだ。

17日
英国とEUの通商交渉について、一部の英メディアが「英国側の交渉責任者であるフロスト氏は、24日にも妥結する可能性がある着地点が見つかったとして、来週初めの合意に備えるようジョンソン首相に伝えた」などと報じた。

18日
英10月消費者物価指数は前月比±0.0%、前年比+0.7%となり、市場予想(-0.1%、+0.5%)を上回った。燃料・アルコールなどを除いたコア指数も前年比+1.5%と予想(+1.3%)以上の伸びとなった。一方、英10月生産者物価指数は前月比±0.0%、前年比-1.3%と、予想(+0.1%、-0.7%)を下回った。

23日
英11月製造業PMI・速報値は55.2、同サービス業PMI・速報値は45.8といずれも予想(50.5、43.0)を上回った。なお、英FT紙は英国とEUの通商交渉について、「協議の行き詰まり打開に向け、発効から数年後に協定の一部再検討を可能にする『見直し条項』の実現性を探っている」などと報じた。

27日
英国とEUの通商交渉について、双方から依然として大きな溝が残っているとの見解が示された他、ジョンソン英首相が「合意はEU次第」「英国は合意のあり、なしにかかわらず繁栄できる」「合意の可能性についてはノーコメント」「実質的かつ重要な相違は埋まっていない」などと述べた事から一時ポンドが下落した。

11月の各市場

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11月のポンド/円ポジション動向

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12月の英国注目イベント

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ポンド/円 12月の見通し

英国が欧州連合(EU)を離脱した後の「移行期間」が12月末で終了する。自由貿易協定(FTA)を締結するための「移行期間」であったが、現時点で通商合意への明確な道筋は見えていない。

当初10月半ばとしていた合意期限をずるずると先延ばしにしてきたが、本当のデッドラインが迫りつつある。この先どれほど急いでも1カ月弱で包括的な協定が締結できる公算は小さいだろう。仮に合意が成立するにしても部分的なものに留まると見られ、対立が大きい公正な競争条件などの点については翌年以降に協議を先送りするというのが妥当な落としどころではないだろうか。

部分的にせよ合意が纏まればポンドは一旦上昇する可能性もあるが、部分的にしか合意できなかった事による英経済へのダメージが意識される以上、ポンドの上値は限定的となろう。他方、双方が譲歩しないまま「FTAなき移行期間終了」となれば、ポンドの下落は避けられないだろう。

いずれにしても、12月10-11日のEU首脳会議までに何らかの合意がなければ、「FTAなき移行期間終了」の可能性が高まる事になりそうだ。

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

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豪ドル/円 11月の推移

11月の豪ドル/円相場は73.181~77.111円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約4.2%上昇(豪ドル高・円安)した。

豪中銀(RBA)の追加緩和にもかかわらず月初から騰勢を強め、新型コロナワクチンの実用化期待が高まった9日には約2カ月ぶりに77円台にタッチした。その後、75.40円付近まで調整したものの、月末30日には77.111円の高値へと再び上昇した。

米国の財政赤字拡大観測や超低金利長期化観測などからドル安が進行した事、新型コロナウイルスワクチン期待などを背景に世界の株価が上昇した事、中国景気の回復期待が高まった事などが、豪ドルを押し上げた。

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3日
豪中銀(RBA)は、予想通りに政策金利を0.25%から0.10%に引き下げた。さらに、今後6カ月で5-10年債を1000億豪ドル購入する量的緩和の拡大を発表。

声明では「見通しを踏まえると、理事会は少なくとも3年はキャッシュレートの引き上げを予想していない」と表明。「理事会は、特に雇用やインフレの見通しを鑑みつつ債券買い入れプログラムの規模を検討し続ける。必要ならさらなる対応の用意がある」とした。これを受けて豪ドルは一時下落したが、一巡後はアジア株が強含む中で買い戻しが入った。

4日
米大統領選の開票作業が順次始まり、重要州に位置付けられていたフロリダでトランプ氏が優勢となると、米国株先物が一時マイナス圏に転落するとともにドルが急伸。前日のバイデン氏勝利を見越した株高・ドル安の反動が出た。

その後、激戦州のひとつであるウィスコンシン州でバイデン氏がリード。接戦の中でもバイデン氏がやや優位との見方から再びドル売りに傾くと豪ドル/米ドルの上昇に連れて豪ドル/円も持ち直した。

5日
米大統領選は開票作業が遅れているもののバイデン氏優位との見方から、オフショア中国人民元の対ドル相場が上昇。バイデン氏はトランプ氏ほど強硬な対中通商政策を採らないとの思惑が広がった。人民元高・ドル安の進行とともにドルが全面的に下落。豪ドル/円は豪ドル/米ドルの上昇とドル/円の下落に挟まれて小動きとなった。

9日
米製薬大手ファイザーが、独ビオンテックと開発している新型コロナウイルスワクチンについて、数万人が参加した治験において90%を超える確率で感染を予防する効果があったとの暫定結果を発表した。欧州株や米株先物が急騰する中で円売りが活発化すると豪ドル/円は一時77円台に上昇した。

16日
米バイオ医薬大手モデルナは、新型コロナウイルスワクチンの最終治験で94.5%の有効性が初期データから得られたと発表。数週間以内に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請するとした。これを受けて欧州株や米国株先物が上昇するとともに円売りが強まった。

17日
RBAは11月3日の理事会の議事録を公表。今後については「国債買い入れプログラムが焦点になる」とし、必要なら追加策を講じる用意があるとした。

また、当面は金融・財政政策が必要になるとし、少なくとも3年間は利上げを見込まないとの見方を示した。さらに、超低金利は世界的な現象であり、為替相場や資産価格に影響を及ぼしているとの認識を示した。

19日
豪10月雇用統計は新規雇用者数が17.88万人増と予想(2.75万人減)に反して大幅に増加。失業率も7.0%と予想(7.1%)を下回った。ただ、豪ドル高の反応はごく一時的であった。

24日
前日遅くに、トランプ米大統領がバイデン新政権への移行プロセスを承認した事などからNYダウ平均が史上初めて3万ドルの大台に上昇。リスクオンの動きが強まり豪ドル/円は77円台に迫る上昇を見せた。

27日
中国が豪州産ワインに反ダンピング措置として保証金の徴収を課すと発表。これを事を受けて豪ドル売りが一時強まった。ただ、中国10月工業利益が前年比で28.2%増と大幅な伸びを記録した事などから中国株が上昇したため、下げ一巡後に豪ドルは持ち直した。

11月の各市場

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11月の豪ドル/円ポジション動向

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12月の豪州・中国注目イベント

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豪ドル/円 12月の見通し

12月の豪ドル/円相場は、世界的な株価の上昇基調が続く限り堅調に推移しそうだ。リスクオンの流れの中ではドルと円が弱含む一方、豪ドルが上昇する傾向が強い。

世界的な景気回復(期待)局面では豪州産の資源への需要が高まりやすい他、長期金利水準の相対的な高さから豪ドル選好の動きに繋がりやすい。豪中銀(RBA)の通貨安志向は相応に強いと見られ、場合によってはロウ総裁らから豪ドル高けん制の発言が出る可能性もあるが、口先介入の効果は限定的だろう。

新型コロナウイルスワクチンの実用化が期待通りに進むなどしてリスクオンの流れが続けば、豪ドル/円は8月末に付けた年初来高値(78.46円前後)の更新も視野に入りそうだ。ただ、米国を筆頭に株価はすでに大幅に上昇しており、年末を前に利益確定売りが強まる可能性がある点には注意が必要だろう。

株価の調整がポジション調整の豪ドル売りを引き起こす事も考えられる。いずれにしても、12月の豪ドル/円相場は主要国の株価動向がカギとなるだろう。