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「英・EU通商交渉、RBA金融政策がポイント」外為総研 House View ポンド/円・豪ドル/円 2020年10月

【外為総研 House View】

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目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 9月の推移
・9月の各市場 
・9月のポンド/円ポジション動向
・10月の英国注目イベント
・ポンド/円 10月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 9月の推移
・9月の各市場
・9月の豪ドル/円ポジション動向
・10月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 10月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

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ポンド/円 9月の推移

9月のポンド/円相場は133.043~142.713円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約3.8%下落(ポンド安・円高)した。6月以降の上昇の勢いで1日には142.713円前後まで上昇。2月26日以来の高値を更新したが、その後は一転して下落基調となり、22日には7月1日以来の安値となる133.043円前後まで反落した。

英国と欧州連合(EU)の通商交渉が遅々として進まず、「自由貿易協定(FTA)なき離脱」に陥る可能性が意識された他、米国株がIT銘柄主導で大きく調整する中、リスク回避のポンド売り・円買いが強まった。この間、英中銀(BOE)がマイナス金利の導入に後ろ向きの姿勢を示した事などで一時的に反発する場面もあったが、ポンド買いは続かなかった。四半期末にあたる月末にかけては買い戻しの動きも見られたが、戻りは136円台どまりだった。

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2日
英中銀(BOE)のベイリー総裁が議会証言を行い、「見通しの不確実性はかつてないほど高い」と述べたほか、ラムスデン副総裁は「必要なら資産購入ペースの大幅拡大も可能」などと発言。
これ以前には、欧州連合(EU)のバルニエ氏(英EU離脱首席交渉官)が「10月末の厳格な通商合意の締め切りに対して現実的になるべき」「英政府は義務なしでEU特典の維持を望んでいる」などと英政府の姿勢を非難した。これらを受けて一時ポンド売りが強まった。

7日
6日付けの英FT紙は、英政府がEUと結んだ離脱協定の主要部分を無効にする新たな法案を準備しており、EUとの通商交渉の崩壊を招く危険性を孕んでいると報じた。同法案は、ジョンソン英首相が2019年10月にアイルランドとの間の国境復活回避に向けて署名した北アイルランドに関する合意を「明確かつ意図的に」骨抜きにするものだとした。これを受けて軟調に推移していたポンドは下げ幅を拡大。
なお、ジョンソン首相は「合意が10月15日までに成立しないのであれば、英国とEUの間で自由貿易協定が成立するとは考えられない。双方がそれを受け入れ、次に進む必要がある」との声明を発表した。

10日
英国との通商交渉を終えたバルニエEU首席交渉官が、「英国との交渉は何も進展がなかった」としてEU大使らに警告した事が伝わるとポンドは下落。
その後、欧州委員会はジョンソン英首相が前日に議会へ提出した「国内市場法案」について、「離脱合意の条件に反する事は国際法違反であり、信頼を損ない将来の関係を巡る現在進行中の交渉を脅かす」との声明を発表し、9月末までに法案を取り下げるよう迫った。英政府が法案の取り下げを拒否した事からポンドはさらに下押しした。

17日
BOEは、政策金利(0.10%)と資産買い入れプログラム(7450億ポンド)をいずれも全会一致で据え置いた。ただ、マイナス金利の有効性について議論した事を明らかにし、年内に英健全性規制機構(PRA)とマイナス金利について体系的な調整を開始する方針を示すとポンドが下落。
しかし、欧州委員会のフォンデアライエン委員長が、EUと英国の通商合意が成立可能だと「今も確信している」と述べた事が伝わると一転してポンドを買い戻す動きが強まった。

22日
ベイリーBOE総裁は「英国の回復はかなり急速だが、回復は非常に不均一」「英経済をサポートするためなら何でもする」としながらも、「マイナス金利を含め、利下げの余地は非常に厳しいとみている」と述べた。
なお、この日ジョンソン英首相は、再び感染が拡大している新型コロナウイルス対策として、国民に在宅勤務を再要請した他、バー・レストランの営業を22時までに制限すると発表。これらの措置は6カ月ほど続く公算が大きいとした。

24日
スナック英財務相は賃金補助やローン延長などを柱とする今後6カ月間の雇用対策案を発表。しかし同時に「雇用喪失の悲劇は既に起きている」との認識を示し「私は全ての企業を救う事はできないし、全ての雇用を守る事はできない」と発言した。

28日
ラムスデンBOE副総裁が「マイナス金利の導入は差し迫っていない。自身の見方では政策金利の下限は0.1%だ」と発言。欧州株の上昇を受けた円売りも相まってポンド/円は上昇した。

29日
ベイリーBOE総裁が前日のラムスデン副総裁に続きマイナス金利の導入に前向きではない発言を行った事でポンドは一時上昇した。しかし、英国とEUの通商交渉について関係者が「英国が新たな合意案を提示したがEUは依然として不満」「今週が最後の交渉ラウンドとなるが、週末に詰めの作業に入る公算は小さい」などと述べた事が伝わると上げ幅を縮小した。

9月の各市場

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9月のポンド/円ポジション動向

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10月の英国注目イベント

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ポンド/円 10月の見通し

ポンド/円は9月に比較的大幅な調整を見たが、10月も上値の重い展開が続きそうだ。9月末から英国と欧州連合(EU)の通商交渉の最終ラウンドが行われているが、1日の協議終了時点で合意のメドは立っていない。ジョンソン英首相は10月15-16日のEU首脳会議を交渉の期限としており、最終ラウンド交渉が物別れに終われば、12月末で英国が自由貿易協定(FTA)なしにEU から離脱するリスクが意識されてポンドの下落圧力となりそうだ。

もっとも、一部報道によれば、16日以降も非公式な交渉が続けられるとの見方もある。交渉の延長ラウンドが行われる事になればポンド安圧力は和らぐだろう。また、市場では英中銀(BOE)が11月5日の金融政策委員会(MPC)で資産買い入れプログラムの増額など追加緩和に動くとの見方が多い。なお11月のMPCでは、金融政策報告書の公表とベイリー総裁の会見も予定されている。10月のポンド相場は「FTAなきEU離脱」と「追加緩和観測」が重しとなる公算が大きいと見ている。

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

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豪ドル/円 9月の推移

9月の豪ドル/円相場は73.972~78.358円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約3.3%下落(豪ドル安・円高)した。1日には78.358円前後まで上昇したが、8月に付けた2019年5月以来の高値である78.460円前後を超えられずに反落した。

欧米の新型コロナウイルス感染再拡大などを受けて主要国の株価が調整色を強めた事から18日には76円台を割り込んだ。さらに、デベル副総裁の発言な どから豪中銀(RBA)の早期利下げ観測が浮上すると23日には75円台も割り込んだ。翌24日には7月1日以来の安値となる73.972円前後まで下落した。その後はグローバルに株価が持ち直した事や四 半期末の接近に伴うポジション調整と見られる動きで下げ渋ると、30日には75円台後半へと反発した。

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1日
豪中銀(RBA)は大方の予想通りに政策金利(0.25%)の据え置きを決定。一方、0.25%の固定金利で3年間の資金を金融機関に貸し出すターム物資金調達ファシリティ(TFF)は、規模を2000億豪ドルに拡大して2021年6月まで延長するとした。
ただ、豪ドル相場に大きな反応は見られなかった。なお、RBAは声明で「厳しい状況ではあるが、景気の落ち込みは当初の予想ほど深刻ではなく、現在国内のほとんどの地域で回復が進んでいる」との見方を維持した。

2日
豪4-6月期国内総生産(GDP)は前期比-7.0%、前年比-6.3%と予想(-6.0%、-5.1%)を下回る伸びとなった。2期連続のマイナス成長であり、豪州経済は1991年以来の景気後退(リセッション)に入った事になる。これを受けて、一時豪ドル売りが強まった。

3日
豪7月貿易収支は46.07億豪ドルの黒字となり、黒字額は予想(53.50億豪ドル)に届かなかった。一方、中国8月財新サービス業PMIは54.0と予想(53.9)を僅かに上回った。

4日
豪7月小売売上高は前月比+3.2%と伸び率は予想(+3.3%)に届かなかった。

15日
RBAは9月1日に開いた理事会の議事録を公表。「完全雇用とインフレに進展あるまで金利を引き上げない方針を確認」「国内の景気低迷は当初の予想ほど深刻化せず」「超緩和的アプローチを必要とされる限り維持」などとした。声明に沿った内容でサプライズはなかったが、喫緊の追加緩和の必要性を示さなかったとの見方から豪ドルに買い戻しが入った。
その後、中国8月鉱工業生産は前年比+5.6%、同小売売上高は前年比+0.5%となり、いずれも予想(+5.1%、±0.0%)を上回った。

17日
豪8月雇用統計は、新規雇用者数が11.10万人増と予想(3.50万人減)に反して増加。失業率も6.8%と、悪化予想(7.7%)に反して前回の7.5%から改善した。これを受けて豪ドルは一時上昇したが、米国株先物が1%を超える下げとなりアジア株が全般的に弱含む中、早々に反落した。

22日
デベルRBA副総裁は「将来の期間に関し、インフレ率と雇用の見通しが中銀の目標と整合的ではない事を踏まえ、理事会は他の政策の選択肢の検証を継続している」などと発言。検証の対象が、より長期間の国債買い入れや豪ドル売り介入やマイナス金利である事を明らかにした。

23日
豪大手銀ウエストパックは、豪中銀(RBA)が10月に現在0.25%の政策金利や3年債の利回り目標を0.10%に引き下げるとの予想を発表。これを受けて豪ドル売りが優勢となった。

29日
前日の欧米株の上昇を受けてアジア株が総じて堅調に推移する中、リスクオンの豪ドル買い・円売りが強まった。月末・四半期末に向けたポジション調整の買い戻しが入った他、RBAの10月利下げを予想していたウエストパック銀行が、利下げ時期を11月に修正した事も支えになった。

9月の各市場

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9月の豪ドル/円ポジション動向

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10月の豪州・中国注目イベント

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豪ドル/円 10月の見通し

10月の豪ドル/円相場は、6日の豪中銀(RBA)理事会がポイントになりそうだ。デベルRBA副総裁は9月22日の講演で、RBAが追加緩和を検討している事を示唆。これを受けて豪大手銀行ウエストパックの著名アナリストらはRBAが10月に利下げに動くとの予想を示したが、その後利下げ時期の予想を11月に後ずれさせた経緯がある。まずは6日のRBA理事会での利下げの有無 か注目される。現状では据え置きの公算が大きいと見るが、据え置きの場合は声明に利下げの示唆があるか注目しておく必要があるだろう。

また、デベル副総裁は、追加緩和のメニューとして、買い入れ対象国債の長期化(現行3年物)や、マイナス金利などを示していた。これらへの言及にも注目したい。さらには、20日に発表される10月理事会の議事録にも注目だ。RBAは3 月に政策金利を0.75%から0.25%へと引き下げたが、直前の2月理事会の声明には利下げを示唆する文言は見当たらなかった。しかし、2月議事録には「理事会で利下げを検討した」と明記して3月利下げを示唆した。10月の豪ドル/円は「RBAの『次の一手』」が大きなテーマになりそうだ。