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過去最大の財政赤字に悩まされる香港の秘策「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港の最新の情勢について迫っていきます。中国や香港とのビジネスや投資、米ドル・人民元・香港ドルといった通貨の、売買のご参考にして頂ければ幸いです。

さて第14回は「過去最大の財政赤字に悩まされる香港の秘策」でお届けいたします。

それでは、本題に入っていきます。

目次

1.過去最大の財政赤字に直面する香港
2.グレーターベイエリア(GBA)計画
3.為替相場

1.過去最大の財政赤字に直面する香港

日々、激変する香港の情勢ですが、香港はいま、新型コロナウイルスの不況と、米中貿易摩擦の影響を受けて、財政赤字が過去最大に拡大しています。週末に、香港の財政長官を務めるポール・チャン氏は、新型コロナウイルスおよび米中関係の不透明性を念頭に、嵐に備え、財政の健全性を強化すべきとの声明を発表しました。

本年の2月に既に提出した2020-2021年の財政予算は、前代未聞の香港ドル1,390億(1.9兆円)の赤字計画でした。これは香港のGDPの4.8%に達し、政府が目標としている3.0%の財政赤字を大幅に上回っている数字です。

しかし、先週末に氏が伝えたところによれば、過去二回に渡って行ってきたコロナ支援策により今年の財政赤字は既に香港ドル2,900億ドル(4.0兆円)に達しているようです。これは香港のGDPの約10%に相当します。

さらに、これをうけて、香港の準備預金は香港ドル1.1兆(15.1兆円)から、香港ドル0.8兆(11.0兆円)へと低下しました。この数字は約13ヶ月分の政府支出に相当し、2003年の「Sars」流行以来の政府支出の増加がみられています。

拡大する財政支出は、明確に持続不可能であり、健全な財政、市場の安心と言う観点からかけ離れていると氏は指摘しています。

またマシュー・チャン行政長官補佐も、香港は、深刻な景気悪化の圧力と、過去最大の財政悪化に直面しているとした声明を週末に発表しました。対応策として、政府は企業と個人に対して新たなコロナ支援策を準備しているそうです。

なおこれまでに、既に73のコロナ支援プログラムが実施されていますが、それでも、香港の経済は今年8%のマイナス成長を見込み、5-7月の失業率は6.1%まで悪化している状況です。

香港は冬のコロナの再発可能性と、米中対立の激化に備え、より健全な財政基盤を築くことが求められていますが、とにかく財政的に厳しい状況にあることが、要人発言から察することができます。

2.グレーターベイエリア(GBA)計画

ポール・チャン財政長官は、この不況を脱出するために、香港はより一層グレーターベイエリア(以後GBAと記載)を活用すべきと主張します。GBAとは香港・マカオに広東省を加えたいわゆる中国、華南地域の総称です。非常に温暖な地域で、日本企業もトヨタ社の大型工場をはじめ多数進出しているエリアになります。

氏は、GBAは、例えば中国地方政府によって強力にスタートアップ企業の支援がなされており、香港にとって成長のドライバーとなり、香港の不況を脱出する鍵になると指摘します。雇用の観点では、香港が不景気な中で、最大で4,000人、200のスタートアップが香港ドル1億ドル(13.7億円)を受け取れるプログラムがGBAに存在します。

最大のアドバンテージは、人口密度が高い香港とは異なり、広い住居空間と開発空間が広がっていることです。香港から1時間の交通圏内のGBAの住居・職場・学校は、香港市民にとって新たな選択肢になりうると指摘します。

なお、GBA11都市は、合計で、72百万人の人口、米ドルで1.65兆(174.9兆円)の経済規模を誇ります。これはカナダやロシアの経済規模よりもさらに大きな数字です。さらに労働コストと不動産の賃料は香港と比べ物にならないほど安く、その上に、文化や方言は香港と似ています。

GBAプロジェクトは2016年に中国政府により伝統的な製造業とイノベーションのハブとしての機能を先導するために作られました。香港とマカオを含む11の都市を繋ぐプロジェクトは、交通インフラの制限をとりのぞき、新たに設置された高速道路・鉄道・橋は移動時間を大幅に削減し、香港と本土の双方の居民にとって利便性を与えています。

氏のオフィスのデータによると、多くの香港企業はすでにGBAへの事業投資へと突き進んでおり、2019年末までの累計で69,292の香港企業がGBAに対して香港ドル2.7兆(37兆円)を投資しているそうです。

香港では、新型コロナウイルスと米中対立の影響を、GBAへの事業投資を通じて緩和していく、こういった構想が描かれているのです。

3. 為替相場

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さて為替相場ですが、先週は全体的に小動きでした。

円要因としては、先週は国内においては自民党の総裁選(安倍首相代行、任期は来年9月まで)をめぐる動きに注目が集まりましたが、安倍首相の政策を引き継ぐ菅氏が5派閥からの支持を取りつけ優勢との報に、一旦落ち着きを取り戻しております。

次に米ドル/香港ドルは引き続きレンジの下限である7.75を攻め続ける展開が継続しています。まだまだ当局は介入を繰り返して、これを支え続けているのですが、永遠と続くレンジは存在し得ないため、ややレンジ切り下げが意識される状況です。

人民元に関しましては、景気回復が最も早い国の一つとして、為替も非常に堅調に推移するようになってきました。特に対ドル相場においては、毎週、じりじりと人民元高が続いている状況で、このトレンドの継続が想定されます。

米国は本日までレーバーデーとして、両院の議会もおやすみに入っていましたが、本日から再開予定です。対中国の戦略、雇用問題、大統領選を控えて、様々な動きが本日から再開されることでしょう。

全体的には11月3日の米大統領選を睨みながらの相場に変わりはありませんが、合わせて9月14日の自民党総裁選にも注目しておきたいところです。政局の変化、つまり為替の潮目の変化が予想されますので、いつも以上に政治ニュースにアンテナを立てて見ていこうと考えています。

さて、本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、中国本土・香港の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っておりますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

それでは、またの機会にお会いしましょう。


戸田裕大

 

【インタビュー記事】

 

【過去記事】

 

<参考文献・ご留意事項>

文中では、香港ドル=13.70円、米ドル=106円で計算

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/

South China Morning Post
https://www.scmp.com/business

Investing.com:為替レート及び 各種株価データ
https://www.investing.com

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。