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「ドルと円の同調性でユーロは振れやすい」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2020年7月

【外為総研 House View】

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目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 6月の推移
・6月の各市場 
・6月のドル/円ポジション動向
・7月の日・米注目イベント
・ドル/円 7月の見通し

▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 6月の推移
・6月の各市場
・6月のユーロ/円ポジション動向
・7月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 7月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

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ドル/円 6月の推移

6月のドル/円相場は106.074~109.848円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.1%の小幅高(ドル高・円安)となった。

全米で経済活動が再開され景気回復期待が強まる中、ドル買い・円売りが先行。5日の米5月雇用統計が予想外の好結果になった事を受けて109.848円前後まで上昇した。しかし、110.00円の上値の重さが意識されると反落。9-10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で2022年までのゼロ金利を維持する見通しが示された事などが重しとなった。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が米経済の先行きに慎重な見方を示したところに、米南部を中心に新型コロナウイルスの感染が再拡大したため、株価が不安定化すると11日には106円台へ押し戻された。

その後、一時持ち直したものの、ソフトバンクグループの保有米株売却に伴う円転観測から23日には106.074円前後まで下値を拡大。ただ、月末にかけては、四半期末に向けたポジション調整と見られる動きで107円台後半へと緩やかに値を戻した。

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1日
米5月ISM製造業景況指数は43.1と予想(43.8)を下回ったが、11年ぶりの低水準だった前月(41.5)からは改善した。

3日
米5月ADP全国雇用者数は276.0万人減と市場予想(900.0万人減)ほどには落ち込まず、過去最悪だった前月(1955.7万人減)から減少幅は大きく縮小した。

その後、米5月ISM非製造業景況指数も45.4となり前月(41.8)から改善。市場予想(44.4)も上回った。これらを受けて景気回復への期待で米国株が大幅続伸となる中、109円台目前まで上昇した。

5日
米5月雇用統計は、非農業部門雇用者数が250.9万人増と予想(750.0万人減)に反して増加。失業率も13.3%と予想(19.0%)に反して前回(14.7%)から改善した。なお、米5月平均時給は前月比-1.0%、前年比+6.7%(予想:+1.0%、+8.5%)であり、米5月労働参加率は60.8%(予想:60.1%)であった。米国景気のV字回復期待が高まり、米国株が大幅に上昇するとともに米長期金利が上昇する中、109.85円前後まで上伸した。

8日
翌日からのFOMCで、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を検討するとの一部報道を受けてドルが下落。米長期金利が低下した他、米国株が上昇する中、リスクオンのドル売りが対円でも優勢となった。

FRBは、新型コロナウイルス対策の一環として導入した中小企業向けの「メインストリート融資制度(MSLP)」について対象企業を拡大すると発表した。

10日
FOMCは予想通りに政策金利を据え置いた。声明にYCCへの言及がなかった事などから一時ドルを買い戻す動きが強まった。しかし、経済・金利見通しで少なくとも2022年末までゼロ金利を維持するとの予測が示されると一転してドル売りが優勢となった。

さらに、パウエルFRB議長が「数百万という極めて多くの人々が前の職場に戻れないと想定しており、そうした人々が再び職を見つけるまでには何年もかかる可能性がある」などと、厳しい見方を示した事もドルの重しとなった。

11日
テキサス州やフロリダ州など米国の一部の州で新型コロナウイルスの感染が再拡大した事で「第2波」への警戒感が広がる中、米株安と米債利回り低下を背景にドル/円は106.50円台まで続落して5月8日以来の安値を付けた。

ただ、NYダウ平均が一時1900ドル安となる中、リスク回避のドル買い圧力も強く、その後は緩やかに106.90円台へと持ちなおした。

16日
日銀は、企業の資金繰り支援策であるコロナ対応特別プログラムの規模を75兆円から110兆円に拡大。NY市場では米5月小売売上高が前月比+17.7%と過去最大の伸びを記録。市場予想(+8.4%)を大幅に上回り、前月の落ち込み(-14.7%)から急回復した。

自動車を除いた5月小売売上高も前月比+12.4%と予想(+5.5%)を大幅に上回る伸びとなった。

23日
米国のナバロ大統領補佐官が「中国との通商合意は『終わった』」と述べた事が伝わると米中対立への懸念が再燃して円が急伸。トランプ米大統領が「米中通商合意はまったくの無傷だ」などとツイートした事で円買いは終息したものの、その後、ソフトバンクグループが210億ドル相当のTモバイルUSの保有株式売却を発表した事から再び円買いが活発化。同社によるドル売り・円買いフローへの思惑から106.074円前後まで急落した。

29日
米5月中古住宅販売保留(仮契約)指数は、前月比+44.3%と予想(+19.3%)を遥かに上回った。普段はあまり注目されない経済指標ではあるが、月末接近によるポジション調整のドル買いと相まってドル高が進行した。

6月の各市場

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6月のドル/円ポジション動向

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7月の日・米注目イベント

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ドル/円 7月の見通し

ドル/円相場は、2月以降5カ月連続で終値が107円台となった。3月には101円台の安値や111円台の高値を付けて乱高下する場面もあったが、最終的には107円台に収束。1月も108円台でクローズしており、終値ベースで見ると2020年のドル/円相場は安定推移が続いている(ブルームバーグ・データより)。

①米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げにより日米金利差がほぼ消滅した事、②ドルと円が同じ「安全資産」に位置付けられ、他通貨に対して同方向に動く傾向が強まった事、③日本の対米貿易黒字は5月に95.8億円まで減少しており、輸出入に絡むフローが均衡している事、④明確なデータはまだないが、コロナ禍で日本企業の対外直接投資が減少していると推測される事、などがドル/円の安定推移に繋がっているのだろう。

こうした流れは当面続くと見られ、7月のドル/円相場も107円台を軸に推移する公算が大きい。新型コロナウイルスの第2波への懸念や、世界経済の回復期待の強弱によって上下する事はあっても、反対売買を伴う「投機」中心の値動きであれば、ドル/円相場の方向感を決定付ける事はなさそうだ。

108円台以上では上値が重い一方、106円台以下では下値が堅い安定的な推移が続くと見る。

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

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ユーロ/円 6月の推移

6月のユーロ/円相場は119.311~124.428円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.3%の上昇(ユーロ高・円安)となった。

世界景気底入れからのV字回復期待でユーロ高・円安に振れた前月の流れを引き継いで、5日には約13カ月ぶりの高値となる124.428円前後まで上昇。しかしその後は米国や中国の一部で経済活動の再開に伴い新型コロナウイルスの感染も再拡大したため、リスク回避ムードが強まる中で反落。

欧州連合(EU)首脳会議がコロナ復興基金の合意を先送りにした19日には119.30円台に押し戻された。その後は、月末にかけてポジション調整と見られる動きで持ち直して121円台で6月の取引を終えた。

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3日
ドイツのメルケル政権は、新型コロナウイルスによる経済の落ち込みを支えるために合計1300億ユーロ規模の追加経済対策で合意。世界景気回復への期待から欧米株が上昇した事も相まってユーロ高・円安が進行した。

4日
欧州中銀(ECB)は政策金利の据え置きを発表。同時に、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を6000億ユーロ増額し、合計1兆3500億ユーロに拡充すると発表した。増額幅が市場予想(5000億ユーロ)を上回った事で景気回復期待が高まりユーロが上昇した。

ラガルドECB総裁はその後の会見で「ユーロ圏経済は前例のない収縮を経験している」「必要なら全ての政策措置を調整する用意」と述べた一方、「ユーロ圏経済は第3四半期には上向きに転じる見通し」とした。ECBスタッフ予測では、2020年の成長見通しを-8.7%、21年は+5.2%などとする見通しが示された。

9日
独4月経常収支は77億ユーロの黒字となり黒字額は予想(141億ユーロ)を下回った。同貿易収支も35億ユーロの黒字に留まり予想(116億ユーロの黒字)を大幅に下回った。コロナ禍で輸出が前月比-24.0%と大きく落ち込んだ事が影響した。

16日
独6月ZEW景況感調査(期待指数)は63.4と市場予想(60.0)を上回り、前月(51.0)から上昇した。しかし、アジアタイムに北朝鮮が同国内の南北共同連絡事務所を爆破した事や、米5月小売売上高が過去最大の伸びを記録したためドル買い・ユーロ売りが強まった事が重しとなりユーロ/円は下落した。

19日
EU首脳会議は、大方の予想通りに7500億ユーロ規模のコロナ復興基金案に合意出来ずに終了。7月に対面式での臨時首脳会議を行う事が決まった事もあってユーロは小幅安に留まった。

なお、メルケル独首相は首脳会談後の会見で、コロナ復興基金を7月に合意できなければ経済成長が脅かされ、市場の混乱をもたらす恐れがあると警告した。

23日
仏6月製造業PMIは52.1と予想(46.0)を上回り前月(40.6)から上昇。同サービス業PMIも50.3と予想(45.2)および前月(31.1)を上回った。これを受けてユーロ買いが優勢となった。

なお、その後独6月製造業PMIは44.6、同サービス業PMIは45.8(予想:42.5、42.3)、ユーロ圏6月製造業PMIは46.9、同サービス業PMIは47.3(予想:45.0、41.5)であった。

24日
独6月Ifo企業景況感指数は86.2と市場予想(85.0)を上回り前月(79.7)から上昇した。内訳の期待指数は91.4と4カ月ぶりの高水準を記録した。

25日
ECBは6月4日の理事会の議事録を公表。「債券購入により借り入れコストが低水準に抑えられているため、現時点では債券買い入れ実施の必要性を示す数多くの証拠が存在している」「資産買い入れの恩恵と副作用を巡ってはさまざまな見方があるが、物価安定の追求において、これまでのところ恩恵が明らかに上回っているとの広範な合意があった」などと債券購入の正当性を主張。

ECBの債券購入プログラムは一部違憲の可能性ありとした独憲法裁判所の判断に反論した格好。

30日
ユーロ圏消費者物価指数・速報値は前月比+0.3%、前年比+0.8%と概ね予想(+0.2%、+0.8%)通りの結果であった。

6月の各市場

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6月のユーロ/円ポジション動向

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7月のユーロ圏注目イベント

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ユーロ/円 7月の見通し

6月以降、ユーロ圏の景況感が改善しており、購買担当者景気指数(PMI)は製造業、非製造業ともに40台後半へと持ち直した。7月に好不況の分かれ目である50を上回ってくればユーロ相場の支援材料となりそうだ。

もっとも、ドイツなどでも新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、欧州で感染の「第2波」が現実味を帯びればユーロの下落は避けられないだろう。コロナ・リスクはドル買いと円買いを強めるため、相対的にユーロへの下落圧力が増しやすくなる。「景気回復期待」と「コロナ第2波懸念」のどちらが優勢となるか引き続き注目されよう。

もうひとつの注目点は欧州連合(EU)復興基金(コロナ復興基金)にEU首脳が合意できるかどうかだ。6月の首脳会議では大方の予想通り合意が先送りされた。基金の発足には全加盟国(27カ国)の合意が必要となるが、オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンの「倹約4カ国」が反対しており、議論は進展しなかった模様だ。

返済不要の「補助金」として加盟国に供与する事がネックになっており、「倹約4カ国」は返済が必要な「融資」をメインに据えるべきと主張している。基金創設に前向きなドイツがリーダーシップを発揮して7月17-18日に対面形式で行われる首脳会議で合意に至れば、景気支援の観点からユーロの押し上げ材料になると見られる。ただ、復興基金からの加盟国への資金配分はいずれにしても2021年になるため、現時点で反対国が容易に妥協する公算は小さそうだ。仮に、今回合意できなくても時間的余裕がある事からユーロに強い下落圧力がかかる事はないと見るが、上値を抑える要因にはなるだろう。