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起死回生を期する米大統領の政策行動は「吉」と出るか否か? 経済アナリスト 田嶋智太郎 米大統領選2020

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もはや米株高はトランプ再選の支援材料にならず

 このところ、米国のフロリダ州、テキサス州、アリゾナ州において新たな新型コロナウイルス感染者の急増ぶりが目に余る状況となっている。この3州の州知事がいずれも共和党員であるということと、当該州で感染者が目立って増加していることは無縁ではなかろう。なにしろ、党のリーダ―であるトランプ大統領自身がマスクの着用さえ拒否して、とかくウイルス対策に逆行しているのだ。
 このまま再度の都市封鎖や行動規制を行なわずに事態を放置すれば、今後も新たな感染者数は日増しに増え続ける公算が大きい。そうなれば、これまで経済再開への期待感を優先させて一段の上値を追う展開を続けてきた米株市場の行方にも、さすがに暗雲が漂い始め、目下のところ選挙戦で劣勢に立たされている現職大統領の再選への道のりは一層険しくなることだろう
 そうでなくとも、5月下旬あたりからは米株価が一段の上値を追う一方で、トランプ氏の再選確率は下がり続けるといった現象を目の当たりにすることが多くなっていた。もはや、米株高が必ずしもトランプ氏再選の支援材料となるわけではなさそうである。むろん、米株価が一段安となれば、それもトランプ氏の再選を遠ざける。トランプ氏は新たな経済支援策法案を取りまとめる構えだが、肝心の感染拡大に歯止めをかけなければ、市場の景気回復期待も盛り上がりようがない。

欧州への新たな関税・中国への一層の圧力

 去る6月20日、トランプ大統領が南部オクラホマ州で開いた3カ月半ぶりの選挙集会はかなり空席が目立っていたと伝わる。その様子は全米に放送され、トランプ氏の凋落ぶりが多くの視聴者の目に強く焼き付けられたと推察される。
 当面、注視しておきたいのは、トランプ氏が起死回生を図るべくなりふり構わぬ政策行動に打って出る可能性が高いことである。その実、目下のトランプ政権は欧州連合(EU)と英国からの輸入品計31億ドル分に新たな関税を課すことを検討しており、7月26日まで米産業界から意見を募った上で、関税を課す品目や税率を決める方針であるとされる。欧州のみならず中国に対しても一層の圧力をかける可能性があり、ようやく回復し始めた世界経済の先行きには暗雲が漂う。
 トランプ氏が乗り出した就労ビザの規制強化策にしても、あからさまな選挙目当てであることは明白だが、結果的に米国人の雇用確保につながるかは不透明であるうえ、米経済回復の妨げとなる恐れが大いにある点も危惧される。米経済回復の足取りが鈍るとの見通しが優勢になれば、市場で「米連邦準備理事会(FRB)がイールドカーブ・コントロール(YCC)の導入に踏み切る」との思惑が強まり、一時的にもドル売り圧力が強まりやすくなる可能性もないではない。

バイデン候補 副大統領候補は7月中旬にも決定

 とはいえ、今そこにある危惧や警戒が時間の経過とともに解消へと向かう可能性も十分にある。前述したオクラホマにおける選挙集会の有様は「トランプ氏にとって致命的な失敗だった」との評も聞かれる。ゆえに、米大統領選挙当日が近づくにつれ、市場の関心が民主党候補のバイデン前副大統領に一気に傾く可能性もある。
 既知のとおり、バイデン氏は副大統領候補に女性を立てるとしており、目下の市場ではカマラ・ハリス上院議員が最有力であるとされる。ハリス氏はウォール街との関係も悪くはなく、同氏が候補に決まれば市場の安心感は増すだろう。なお、バイデン氏は7月中旬に副大統領候補を発表すると見られている。

脱コロナ禍が進めば、豪ドル/円に上昇余地

 もちろん、米政権が検討する対EU関税の強化についても、最終的に発動が見送られる、あるいは制限される可能性も十分に残されている。米中対立の過去の経緯からも分かるように、貿易交渉は「圧力」と「譲歩」がセットである。
 また、7月に入ると世界的な新型コロナウイルスワクチンの開発段階が一歩前進する可能性も大いにある。注目度が高い米モデルナ社のワクチンについては最終治験が7月から始まると伝わっているし、日本国内でもアンジェスが大阪大学と共同開発するワクチンの治験が7月から開始される見通しとなっている。

 そうして、今ある様々な危惧や警戒が段階的にも解消に向かえば、あらためて市場にリスク選好ムードが拡がり、なおも膨張を続ける世界の過剰流動性が株価を一段と高い水準に持ち上げる可能性も高まる。
 結果、日経平均株価が一段の上値を追えば、正の相関が特に強い豪ドル/円の上値余地が拡がりやすくなる

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また、米政権による対EUならびに対中姿勢が多少なりとも緩めばユーロ/円にも上値余地が生じやすくなり、クロス円全般の上昇に連れてドル/円が目下の膠着状態から脱する可能性も高まると見られる。
 ドル/円が本格的に動き出すとすれば7月の中旬以降であり、仮に強気の展開となれば、まずは200日移動平均線(執筆時点で108銭40銭近辺)を試す動きになると見る。

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yoshizaki.jpg田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。