みなさんこんにちは。戸田です。
本日は「【新常態】舞戻る消費と再燃する米中貿易摩擦、為替はドル高」と題しまして、新型コロナの現状と、米中関係を踏まえて、為替相場への影響について考えていきたいと思います。それでは早速みてまいりましょう。
1.現状確認
まず現在の新規感染者数ですが、世界で80,000人/日 前後で高止まりしています。もちろん各国によって計測方法が異なり、そもそも計測することが困難な地域もあるので一概に断定することは出来ませんが、少なくとも世界的な収束まで今しばらく時間が掛かりそうです。
※縦軸=新規感染者数、横軸=日付、棒グラフ=1日の感染者数、ライン=3日移動平均
2.中国に舞い戻った消費者
一方で中国の新規感染者数は落ち着いてきました。新規感染者数の推移は以下の通り、一桁台で推移しています。
※縦軸=新規感染者数、横軸=日付
このような状況下、連休(労働節)を迎えましたが、上海のショッピングモールはかなり賑わっていたようです。中国の国内消費は、ほぼ戻ったと言って良いと思います。
3.再燃する米中貿易摩擦
中国が通常運行に戻ってきたことで、もう一つ戻ってくる可能性が高いのが、相場の大きなテーマである「米中貿易摩擦」です。緊急事態下において、米中は共に手を組みウイルスに立ち向かうと言う構図でしたが、これが早くも崩れ去りつつあります。
具体的には5月に入ってからトランプ大統領及び、氏の側近が中国に対する非難を強めています。例えばトランプ大統領の経済アドバイザーを務めるピーターナバロ氏は、中国が2019年11月時点で情報を速やかに公表していれば被害の拡大を防げた可能性や、事実として武漢ウイルス研究所が発生地の近くに存在していることについて公然と指摘しています。
このことから米国は米国とファイブアイズが持つ諜報機関を駆使して中国の過失を追求し、今後の米中貿易協議の大きな交渉カードとして使ってくることが想定されます。これは米大統領選挙でトランプ陣営が勝利を目指す上で重要な動きであり、中国側によほどの譲歩がみられない限り、交渉はますます激化していくものと考えられます。
4.為替への影響
ではこう言った米中の動きを踏まえて為替はどのように動いていくのかを考えていきます。ここでは米中貿易摩擦に相場の焦点が戻っていくと仮定し、米中貿易摩擦が始まった2018年初からの相場を振り返ります。
まず事実として、米中貿易摩擦が始まった2018年初より現在まで、為替はドル高・人民元安が進んできました。これは米国の貿易赤字が縮小する一方で、中国の貿易黒字が減少することを織り込んでいった動きと言えます。まずはこの方向性(ドル高・人民元安)を基本路線として認識しておくのが良いと思います。ただし、2年間で大分織り込んだので、あくまで基本路線としてドル高・人民元安であると言う認識が良いと思います。
※ドルインデックス=左軸、USD/CNH=右軸
次にドル円ですが、こちらはドル人民元ほどのトレンドは見て取れませんが、どちらかと言えばドル安・円高傾向です。これは米中貿易摩擦が激化する中で、漁夫の利を得ている日本の円の価値が相対的に見直されていると言う見方も出来そうです。
※ドルインデックス=左軸、USD/JPY=右軸
5.まとめ
さて、それでは要点を振り返りましょう。
・世界全体ではコロナ収束にまだまだ時間が掛かる
・中国の消費はかなり戻ってきている
・しかし米中貿易摩擦もあわせて戻ってきそうな雰囲気に
・となれば基本路線はドル高・人民元安
・ドル円にはやや円高圧力
いかがだったでしょうか?本日は中国の現地情報をご紹介しつつ、最近の為替市場を取り巻く環境についてお伝えいたしました。
為替は株や債券の通り道となることや、各国の政治的な思惑が関係するため、一般に先読みが難しいと言われています。ですが壮大な為替市場の中、ぶつかり合う米中を観察しつつ、渦中の通貨である「米ドル・人民元・日本円」を自由に取引出来ることはとても恵まれているのかも知れません。ぜひ歴史の転換点を、為替と、外為どっとコムさんと一緒に楽しまれてください。
本記事が皆様の為替取引にお役に立てていれば幸いです。それでは、またお会いしましょう。
戸田裕大
<参考文献>
Worldmeter: Coronavirus Cases
https://www.worldometers.info/coronavirus/coronavirus-cases/#daily-cases
丁香园・丁香医生:全国新增确诊
CNN: On GPS: White House adviser Peter Navarro
https://edition.cnn.com/videos/tv/2020/05/03/exp-gps-0503-navarro-on-china-and-covid-19.cnn
※為替チャートはInvesting.comよりデータ取得し、弊社作成
※写真は筆者知人による撮影
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。