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「『アフター・コロナ』のテーマを模索 」外為総研 House View ドル/円・ユーロ/円 2020年5月

【外為総研 House View】

外為総研 House View。外国為替(FX
)や国際金融市場、世界経済に関する調査・研究を行い、個人投資家の外為投資に価値ある情報を提供します。

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 4月の推移
・4月の各市場 
・4月のドル/円ポジション動向
・5月の日・米注目イベント
・ドル/円 5月の見通し

▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円4月の推移
・4月の各市場
・4月のユーロ/円ポジション動向
・5月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 5月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

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ドル/円 4月の推移

4月のドル/円相場は106.360~109.380円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%下落(ドル安・円高)した。上旬にはドル高・円安に振れる場面もあったが、109.30円台で頭打ちとなり、107.00円前後へと反落。

リスク回避時にはドル買いと円買いが交錯、リスク選好時にはドル売りと円売りが交錯したため、その後しばらくは狭いレンジで方向感なくもみ合ったが、28日にはそれまでの下値支持であった106.90円を下抜けて下落。欧米で都市封鎖(ロックダウン)の緩和に向けた動きが広がる中、リスク選好のドル売りがリスク選好の円売りを凌ぐ格好となった。

ただ、30日にはポジション調整と見られる買い戻しで107円台を回復するなど総じて方向感に乏しい展開であった。

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2日
米新規失業保険申請件数は664.8万件と、これまで過去最高だった前週(330.7万件)から倍増(予想376.3万件)。ドル/円は一時107.00円付近まで下落したが、その後はNY原油(WTI)と米国株の急反発を受けて108.00円前後まで持ち直した。

3日
米3月雇用統計は、非農業部門雇用者数が70.1万人減と市場予想(10.0万人減)を大幅に下回り、失業率は4.4%と前月(3.5%)から一気に0.9%ポイント悪化。なお、平均時給は前月比+0.4%、前年比+3.1%(予想+0.2%、+3.0%)であった。また、米3月ISM非製造業景況指数は52.5と前月(57.3)から低下したものの、予想(43.0)ほどには落ち込まなかった。

8日
米民主党のサンダース氏が大統領選に向けた候補指名争いから離脱する事が明らかとなった。これを受けて民主党候補は事実上、バイデン前副大統領に決まった。

また、この日は米連邦公開市場委員会(FOMC)が、政策金利を100bp(1.00%)引き下げ、7000億ドルの資産買い入れを決めた3月15日の臨時会合の議事録を公表。「参加者全員が短期的な経済見通しについて、過去数週間に急激に悪化し極めて不透明になったとの見方を示した」「景気見通しへの下振れリスクが急拡大した」「参加者らはリスク管理の観点で、金融政策での強力な対応が求められていると指摘した」などと強い危機感が示された。

9日
米連邦準備制度理事会(FRB)は最大2.3兆ドル規模の緊急資金供給策を発表。中小企業に対する最大6000億ドルの融資や、州政府など自治体支援に向けた最大5000億ドルの地方債購入などを柱とする異例の措置を決めた。

15日
米3月小売売上高は前月比-8.7%と過去最大の落ち込みを記録。予想は-8.0%だった。自動車を除いた売上高は前月比-4.5%(予想:-5.0%)であった。また、米3月鉱工業生産も前月比-5.4%と、1946年以来の大幅減となった(予想:-4.0%)。これらを受けて、新型コロナウイルス感染拡大の悪影響が改めて意識されるとリスク回避のドル買いでドル/円は上昇した。

17日
米バイオ医薬品メーカーのギリアド・サイエンシズが開発した抗ウイルス薬「レムデシビル」の臨床試験で、新型コロナに感染した患者が急速に回復していると伝わった事を受けて円売りが先行。しかし、欧米市場では株価の上昇とともにリスクオンのドル売りが優勢となったためドル/円は失速した。

27日
日銀は①CP・社債等買い入れの増額、②新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充、③国債のさらなる積極的な買い入れ、による「金融緩和の強化」を発表。年間80兆円をめどとしていた国債買い入れの上限を撤廃した一方、イールドカーブ・コントロール(YCC)による金利目標(短期-0.10%、長期0.00%)は据え置いた。

概ね事前の報道通りの内容とあって、発表直後は材料出尽しによる円買いがやや優勢となった。なお、黒田日銀総裁はその後の会見で「国債、YCCのもと金利目標達成のため必要なだけいくらでも買う」「物価モメンタムはいったん損なわれた」「マイナス金利深堀りも排除しない」などと述べた。

29日
米1-3月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比年率-4.8%と予想(-4.0%)を下回り、6年ぶりのマイナスを記録。個人消費が前期比年率-7.6%(予想:-3.6%)と落ち込んだ事が足を引っ張った。

FOMCは政策金利を0.00-0.25%に据え置き、声明では、「最大雇用と物価安定という目標の達成に向けた軌道に乗ったと確信するまで、この目標レンジを維持する見通し」とした。パウエルFRB議長は「追加措置が必要になる可能性は高い」「今は連邦債務を心配するときではない」などと述べた。

4月の各市場

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4月のドル/円ポジション動向

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5月の日・米注目イベント

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ドル/円 5月の見通し

4月のドル/円の値幅は3円あまりと、ひと月で10円以上動いた3月から急速に動意が萎んだ格好だ。3月に見られたリスク回避による過剰なドル買いの動きが後退した事で、ドルと円の強さ(あるいは弱さ)が他の通貨に対して概ね同程度だったためと見られる。例えば、ユーロに対してはドルも円も同程度に強含んだが、豪ドルに対してはいずれもほぼ同じ割合で弱含んだ。5月のドル/円も方向感が出にくい相場展開となりそうだ。

ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートの規模は4月30日時点で6.7兆億ドルに達しており、市場の関心がこの点に向かえば流れはドル安に傾く可能性もある。FRBは、新型コロナウイルス対応で、3月上旬から資産買い入れを強化してきたが、その結果バランスシートの規模はこの間だけで約6割急増している。リスク回避局面におけるドル買いニーズが一時より弱まったのも、これが一因と考えられる。もっとも、日銀も4月27日の金融政策決定会合で国債買い入れを従来の「年間80兆円」から「無制限」に修正した。FRBほどの早いペースではないにせよ、4月20日時点で612.7兆円に上る日銀のバランスシートもこの先拡大していく事は必至であろう。

以上の点から、一方的なドル安・円高やドル高・円安の展開にはなりにくいと見られ、5月のドル/円は概ね横ばい圏内に留まりそうだ。

ユーロ/円

ユーロ/円の基調と予想レンジ

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ユーロ/円 4月の推移

4月のユーロ/円相場は115.449~119.037円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.0%の下落(ユーロ安・円高)となった。

ユーロ圏各国で新型コロナウイルスの感染拡大は沈静化に向かいつつあるが、そうした中でもユーロは総じて軟調だった。新型コロナウイルスによる欧州経済への打撃の大きさが懸念されている模様。国際通貨基金(IMF)が13日に発表した世界経済見通しでもユーロ圏の2021年の成長率見通しは-7.5%と、米国(-5.9%)や日本(-5.2%)と比べて著しく低かった。その後も、原油価格の急落によるリスク回避の動きや、欧州連合(EU)首脳会議が財政政策に合意できなかった事でユーロが圧迫された。

ユーロ/円は、29日には約2年ぶりの安値となる115.45円前後まで下落した。ただ、30日には月末のリバランスと見られる動きで117円台を回復して取引を終えた。

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1日
大手欧州銀行の多くが配当停止に動いた事などから欧州株が軒並み大幅安となる中、ユーロが下落。ユーロ圏3月製造業PMI・改定値が44.5に下方修正(速報値44.8)事も重しとなった。

7日
新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトに向かうとの期待が広がる中、ドルが逃避的な買いの反動で下落。ユーロ/円は、ユーロ高・ドル安の動きに連れて上伸した。「イタリア政府は新型コロナ感染拡大ペースの鈍化が続けば、5月4日からロックダウン(都市封鎖)を緩和し始める公算」と伊紙が報じた事もこうした動きに拍車をかけた。

9日
米連邦準備制度理事会(FRB)は新型コロナウイルス感染拡大への対応策として最大2.3兆ドル規模の緊急資金供給策を発表。中小企業に対する最大6000億ドルの融資や、州政府など自治体への支援に向けた最大5000億ドルの地方債購入などを柱とする異例の措置を決めた。これを受けてドルが売られると、ユーロ/ドルの上昇とともにユーロ/円が上昇した。

また、ユーロ圏財務相会合は前日の協議で纏められなかった約5000億ユーロの新型コロナウイルス対応策で合意。欧州投資銀行(EIB)が2000億ユーロの融資で企業の資金繰りを支えるほか、救済基金である「欧州安定メカニズム(ESM)」を活用し、各国向けに2400億ユーロの信用枠を設定する事などが決まった。

21日
独4月ZEW景況感指数は期待指数が28.2となり、市場予想(-42.0)に反してプラスを回復。前回(-49.5)から大幅に持ち直した。一方、現状指数は-91.5となり、前回(-43.1)からさらに低下した。

22日
ユーロ圏4月消費者信頼感・速報値は-22.7と予想(-20.0)を下回り前月(-11.6)から低下。経済対策を協議する翌日のEU首脳会議への不透明感も相まってユーロが下落した。なお、欧州中銀(ECB)はこの日、テレビ会議を行い一部の要件を満たした投資不適格級(ジャンク級)債権を資金供給の担保として受け入れる事を決めた。

23日
仏4月製造業PMI・速報値、同サービス業PMI・速報値に続き、独4月製造業PMI・速報値は34.4、同サービス業PMI・速報値は15.9と予想(39.0、28.0)を大きく下回った。これを受けてユーロは下落。その後、欧州連合(EU)首脳会議に先立ちメルケル独首相が「新型コロナウイルス対策予算は巨額でなければならない」との見解を示した事でユーロは持ち直した。

しかし、首脳会議で復興基金の創設で合意したものの、その規模や財源については合意できずに終了するとユーロは急落した。

24日
独4月Ifo企業景況感指数は74.3と、予想(79.7)および前回(85.9)を下回り、過去最低となった。またこの日は、大手格付け会社S&Pがイタリアの格付けを「BBB」で維持すると発表。格下げを見送った。格付け見通しは「ネガティブ」で据え置いた。

29日
独4月消費者物価指数・速報値は前月比+0.3%、前年比+0.8%と、いずれも予想(+0.1%、+0.7%)を上回った。また、新型コロナ治験薬「レムデシビル」の臨床試験の結果が良好だったと伝わり欧州株や米国株先物が上昇すると、リスクオンのドル売りと円売りが交錯する中、ユーロは上昇した。

4月の各市場

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4月のユーロ/円ポジション動向

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5月のユーロ圏注目イベント

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ユーロ/円 5月の見通し

今回の新型コロナウイルス禍で、ユーロ圏の「南北格差」に改めてスポットが当たっている。景気の下支えに向けて各国とも大規模な財政政策を発動しているが、財政に余裕があるドイツやオランダなど北部の国と、そうではないイタリアやスペインなど南部の国の国債利回り格差は拡大。財政余力に乏しいイタリアは「ユーロ共同債(コロナ債)」を発行して復興基金の財源とするよう主張しているが、「実質的な借金の肩代わり」を嫌う北部の国は「コロナ債」に否定的な様子だ。

4月23日の欧州連合(EU)首脳会議でも、復興基金の創設までは漕ぎ着けたが、基金の規模や財源については合意できなかった。危機対策で後手に回るEUの姿は、過去のギリシャ・ショックなどでも見られたが、そのたびにユーロ売り要因となってきた。今回も、南欧諸国の経済危機に対する手当てが遅れればユーロの下落圧力となるだろう。

なお、次のEU首脳会議は6月18-19日に予定されている。かなりの間が空く事になるが、この間に臨時首脳会議の開催などがあるかどうか注目されよう。