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「値動きを体に染み込ませる」川口一晃 特別インタビュー(後編)

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前編では社会人になるまでの葛藤や、ファンドマネージャーとしての開花するまでの新人時代のお話を中心に伺いました。後半は、相場の師匠との出会いや、FXや投資で重要なことを中心にお話をお聞きします。

▼目次
1.相場の師匠から教わったこと
2.ペンタゴンチャートとの出会い
3.FX初心者は価格の分析ができていない

相場の師匠から教わったこと

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川口一晃:
私のファンドマネージャー人生を変えた相場の師匠がいるんです。配属先の1番トップの人でした。

PickUp編集部:
その師匠のお話を聞きたいです。やはり、出会ったときからこの方は違うなと思われたんですか?
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川口一晃:
いえいえ、全然そんなこと思わなかったです。 師匠から始めて声をかけてもらったのが、配属先への挨拶に行ったとき。たまたま昼当番で彼が残っていました。 「今度こちらに配属になります」って挨拶行ったときに、「相場というのは政治経済はもちろんのこと、歴史、心理学、そして宇宙論が大事である」と言われたのを今でもよく覚えています。この人は何言ってるんだっていうのが僕の第一印象でしたね。政治、経済、歴史、心理学は分かる。でも宇宙論って何?って思いました。

PickUp編集部:
衝撃的な出会いですね・・・。
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川口一晃:
いまでもありありと覚えています。それで、配属先には4名いて、1番トップが師匠で僕が1番下。運用部隊で1年、2年と経っていくうちに人事異動もあり、最後は僕とその師匠が残ったんです。

それで、間近で師匠の売ったり買ったりするタイミング、銘柄の選び方を見ていると、「何でこんなの選んだんだろう」「なぜそんな買い方をするんだろう」などと思ったんですが、師匠の取引結果をノートに書いていました。すると、その実績から、この人はすごいなという気持ちがどんどん溜まっていきました。この人の相場観が素晴らしく、売買手法もまたすごく上手い。社内からは「あの人から相場を教えてもらうなんてお前は幸せ者だ」「俺たちには教えてもくれなかった人から、お前は教わるんだよ」って何人かから言われましたね。

この人に本気で付いていこうと決めたときがあるんです。わざと残業をして、「飯でも食って帰るか」って言われたときに「よしこれだ」と思いました。一緒に入ったラーメン屋で、テーブルごしに頭下げて、「とことんついていきますから、僕に相場を教えて下さい」って言ったのが2年目だったんですよ。ブラックマンデーのあとぐらいだったと思います。僕が相場の面白さに気づいて心が燃え上がっていた時です。4人いたうちの2人が抜けて、僕も少し運用をやらせてもらっていた時期でした。

PickUp編集部:
で、弟子入りはどうなったんですか?
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川口一晃:
見事弟子入りできまして、以来師匠が変わりました。僕に今まで以上にいろんなことを教えてくれました。社内でも僕と2人のコンビっては周りから見て羨ましかったらしい。師匠であり親子のようにいろんなことを話し合いながら、毎日の相場を見て、相場観を交わしました。

PickUp編集部:
川口さんの真剣に学ぶ姿勢も伝わったんでしょうね。
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川口一晃:
ええ。そんな感じでマンツーマンで相場を教わっている中、僕は4年目で証券会社を退職することになるんです。証券会社の社員だから、どこかに出向で行かされたり、ひょっとしたら営業に回されるかもしれないなどと考えるときがありまして、師匠から教わる中で、運用こそが僕の天職と思ったからには、運用の世界でやっていきたいと決意したんです。それで、運用専門の会社の門をたたいて、見事内定をもらったんですね。ただ、僕は最終的に師匠に下駄を預けたんです。

PickUp編集部:
つまり、判断を委ねたんですね。
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川口一晃:
はい。休みの日に師匠に会いに行って、「実は●●社にファンドマネージャーとして内定もらいました。ついては今の証券会社を辞めて行っていいかどうかを、判断してください。僕が外に出て行って通用しないファンドマネージャーだったらダメだと言ってください。僕が独り立ちしてやっていけるのであれば、どうか判断をして下さい。」と言ったんです。そうしたら師匠が「お前はもう十分どこ行ってもやっていける。自信持って行って来い」って言って送り出してくれた。当時、証券会社間で転職って、ご法度だったんですけどね。

PickUp編集部:
今もそういう会社はあるようですね。
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川口一晃:
昔はもっと厳しかった。仁義に劣るみたいな雰囲気があって。案の定、僕の転職は大騒ぎになりました。そこも「俺が何とかするから行って来い」って師匠は僕を送ってくれたんです。

PickUp編集部:
ちなみに、師匠に転職を認めてもらえると思っていたんですか?
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川口一晃:
思ってました(笑)。ただ、師匠と契りを交わしてるから仁義を切ろうと。師匠がダメと言ったら、転職したくてもやめようと思っていました。

PickUp編集部:
証券もなにもわからない新人が、リーガルマインドと投資の師匠に教わって、見事独り立ちした。第1部完、という感じでしょうか。
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川口一晃:
そうですね。第2部は、なぜ天職とまで思ったファンドマネージャーを辞めたか、でしょうか。

PickUp編集部:
え、やめちゃったんですか?
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川口一晃:
そうなんです。新しい会社に移ったころから、証券不況というものが凄まじかったんです。ボーナスもない、残業代も出ないという状況で、家族4人を守っていけない、でもこのままだったら…と考えてしまうような、キツイ状況でした。

PickUp編集部:
ファンドの運用結果はどうだったんですか?
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川口一晃:
僕も含めて、全体的に不振でしたね。ちなみに運用の世界って面白くて、みんながダメだったら自分がダメでも全然怒られないんです。だから、運用やっても全体が地盤沈下してマイナスの局面なら僕が運用するファンドが多少マイナスでもあんまり責任問題が出てこないんです。証券不況って、投資業界自体が久しぶりに運用結果のマイナスを経験するという大きな波だったんです。今までプラスだったのが、90年以降償還するときにマイナスが出てきてしまう事態を迎えるんです。その中で僕は、このまま株が下がるんだったらヘッジをしようとかいろいろ試そうと思っていました。

PickUp編集部:
意欲ある川口さんのようなファンドマネージャーが辞めざるを得ない状況っていうのは、証券不況が長引いたためなんでしょうか?
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川口一晃:
そうですね。ファンドマネージャーは、投資を検討する会社を訪問して、企業を分析するわけです。業界の業績はどうなんだなどを見ます。そうすると、自分の所属してる証券会社が日本全体でどのような状況かはわかるわけです。これは、所属してる証券会社は危ないなと感じました。今以上厳しくなったら、本当に生活していけない可能性が出てくるので、これは会社を出たほうがいいだろうということで、まずはほかの証券会社への転職活動を始めました。

ところがマーケットがそういう環境で、どこも運用がうまくいってないから、ファンドマネージャーの募集が出ないわけです。ほぼ1年探しても募集がないところから、ブルームバーグがマーケットの専門家で人材募集が出ていました。

PickUp編集部:
ブルームバーグはマーケットニュースを配信する通信社ですよね。
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川口一晃:
はい。それで、専門家としてブルームバーグに移るとき女房から2つ言われました。1つは「あなたが天職だと思ったファンドマネージャーを辞めていいのか、諦めがつくのか」ということの確認。2つめは「英語もそんなにうまくないのに外資系に行っていいのか」ということ。ただ家庭を守るためにはしょうがないということでブルームバーグへの転職しました。

PickUp編集部:
畑違いの業種で、さらに外資系の会社というのもあり、大変だったんじゃないですか?
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川口一晃:
そうですね。入社時のブルームバーグの様子は雰囲気が良くて成長産業でした。僕が配属になったのはマーケット分析のツールの開発、そして開発したものをプレゼンする仕事だったので、システム運用をやっていた際の開発のノウハウが活きました。あと、みんなの前でプレゼンする仕事があったんです。そのプレゼンがすごく評判が良くて、僕はしゃべる才能があるんじゃないかということで、伝える方向にのめり込んでいきました。

ブルームバーグ時代のエピソードとしては、ミーティングは全部英語だったので、はじめ入社3ヶ月間はストレスで毎朝5時に目が覚めていました。寝ていても夢の中で「英語でしゃべれ」と僕が指名されて、みんなの前に行って英語で話すぞ、ってところで目を覚ますのがおきまりでした。すごい苦しみました。

PickUp編集部:
初めはプレッシャーだったスピーチが、どんどん上達して評判になるまでになったんですね。
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川口一晃:
ええ。イギリス人の支店長もよく笑ってくれた。最後のほうは僕が演台に立つだけで笑う人がいっぱい。これはいけるんだなと感じました。朝のミーティングはいろんな人がしゃべるんだけど、僕は月に4回のうち3回はしゃべっていました。あるとき支店長が全員に「みんな、話し方教室に行って、話し方勉強しろ。もっと面白いしゃべり方をしろ」と言ったんですけど、僕には声がかからなかった。話し手として、合格なんだなと思いました。投資もそうですが、苦手なことでも次第にモノになっていくことを感じました。

ペンタゴンチャートとの出会い


PickUp編集部:
さて、相場分析の話にもどりたいと思いますが、いま川口さんが使っているペンタゴチャートのことを聞かせてください。
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川口一晃:
はい。ペンタゴンチャートは証券会社にいた1992年のときに出会って、運用に活用し始めました。
運用会社って、外資系金融機関からいっぱいマーケット情報をもらえるんです。だから、ひっきりなしにFAXでいろんなレポートが送られてきます。あるとき、変なペンタゴンの形をしたFAXが流れてきたので、これは一体何なんだって見たのが初めです。

僕は、師匠の宇宙論じゃないけど、そういった話には全く抵抗が無かったんで、ペンタゴンで相場分析した人の話を聞いてみたいと思い直接話を聞きました。1992年の11月でした。話を聞く中で、これはおそらくマーケットの真実を表すチャートだろうということ興味を持ち、以降はずっとチャートを付けています。僕の手書きのペンタゴンチャートは1992年11月24日から始まって、現在まで続いています。

PickUp編集部:
様々なテクニカル分析がある中で、五角形を描くペンタゴンチャートはどう映ったんですか?
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川口一晃:
一言でいうと、驚きがすごかった。師匠にも「これ見て下さい、今日こんな動きでしたよ。ここポイントだったんですね」って説明したくらいです。 1990年に僕はパソコンを持っていたんですが、今多くの個人投資家の皆さんが勉強されているRSIとかMACDとかDMIとかは、テクニカル分析が普及するずっと前の当時から全部知ってました。なぜかというと、売買システムを組んでたからです。MACDの売買システム、RSIの売買システムは1989年から1990年にかけて自分で作って持っていました。運用にテクニカル分析を取り入れてるくらい熱心に勉強したんだけど、運用で使っていたものよりもペンタゴンチャートのほうがすごいと感じたんです。

PickUp編集部:
当時最先端のテクニカル分析を知り尽くした川口さんが、ペンタゴンに至ったというのは注目ですね。
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川口一晃:
そうですね。当時ってそんなにテクニカルの本は多くなくて。日本に専門書が無いから、アメリカのデパートからテクニカル百科事典などを取り寄せて勉強しました。だけど、テクニカルだけではトレード判断に役立てるには限界あるなと思っていました。

PickUp編集部:
ペンタゴンチャートはすごいと感じた、なにか極めつけの事例はありますか?
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川口一晃:
90年代の、相場全体の流れが変わるタイミングで効果的でした。

1995年1月に阪神・淡路大震災があって、この先は売りだと思って会社に「ここから日経平均は下がるので、このままではファンドが痛みます。申し訳ないけどヘッジをさせてください」と言いました。日経平均株価が1万9000円台のときです。日本の運用会社はほぼ株ばかりを買ってる状態。100億円規模のファンドだったらほぼ100億円買ってるし、1000億円規模ファンドだったらほぼ1000億円買ってる。さっきの話に通じますけど、上がるときに株が上がれば、ほら上がったとなり、下がってるときはみんなも下がってるからしょうがない、となるという業界の慣習がありました。

師匠から、運用の教訓として「自分のお金はいくら損してもいい。だけど人のお金は何とか守れ。お金は自分の命よりも大事だ」って言われてたんで、特別許可をもらい、ほぼ買うだけの投資信託で、ヘッジをかけることになりました。

PickUp編集部:
ヘッジというのは、損失に備えた対策ですね。
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川口一晃:
僕のファンドの株の組入比率が7パーセントしか入ってない状況になりました。

その後、日経平均は1万9000円台から1万4000円台まで下がるんです。ヘッジしてるから僕のファンドの成績は下がりません。なので、業界で1月から6月の半年間は僕のファンドの成績はダントツでした。周りの人たちは「川口はうまいことやりやがった」みたいな、そんな感じで言われていました。その年の6月のボーナスは、証券不況だったから多くは無いんだけど1番のボーナスもらった。

PickUp編集部:
相場予想が当たりましたね。
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川口一晃:
ええ、ここまでは自分の相場観だけで良かったんです。

PickUp編集部:
・・・と言いますと・・・。
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川口一晃:
忘れもしない1995年の7月7日、これは平成に直すと平成7年7月7日。これが当時のN証券の創立77周年記念日でもありまして、7が5つ並ぶことになります。これをきっかけに証券会社が一斉にキャンペーンを行いました。

キャンペーン開始前に日経平均が1万5000円ぐらいまで戻していて、そこから一気にキャンペーンで1日1000円上がりました。当時の僕は、キャンペーンでそれほど上がるわけがないと思ってたんだけど。 ほかのファンドは成績が上がる中、僕のファンドはマイナスになりました。それで周りの目は「川口ざまあみろ」みたいな雰囲気もあって、そのときの取締役の方が「今日飲んで帰ろうか」と言ってすごく慰めてくれました。

これは僕の失敗の中でも、本当に背中に冷水が走ったものです。

PickUp編集部:
キャンペーンで日経平均が一旦上がった、その後はどうだったんですか?もっと下がると思ってたんですよね。
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川口一晃:
そうです。1万2000円ぐらいまで下がると思っていた。実際はそのまま上昇し、2万円まで戻ってしまいました。ファンドの成績って半年とか1年で見ますので、1万6000円以降、徐々に先物のヘッジを外していきました。このやられがあるから、前回1番ボーナスをもらったけど、このときは並みでした。

PickUp編集部:
激動の1995年だったんですね。
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川口一晃:
最初、下がることはすごく確信してたんだけど、ある程度下がったところでやっぱり自分に酔ってるところもありました。たぶん個人投資家の人も同じで、自分が勝ち続けると、自分が天才だと思って酔い始める人がいます。そこは常に冷静にならなくちゃいけないなっていうのはすごく思いますね。

PickUp編集部:
プロも個人投資家も、同じだという事でしょうか。
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川口一晃:
自分の決めたルールはしっかりと守るというのが大事ということです。 先ほどの質問にお答えすると、実はペンタゴンチャートでは相場反転のサインが出ていたんです。だけど、僕の考えではまだ下がると思って、ヘッジを外さなかった。

PickUp編集部:
あんだけすごいと評価していたペンタゴンがシグナルを出していたのに、無視してしまった・・・。
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川口一晃:
ペンタゴンチャートは、流れが変わるぞと7月7日前にシグナルが出ていたんです。ただ、それを僕のほうが当たるだろうと相場観があって投資方針を変えられませんでした。やっぱり自分の決めたルールをしっかり守るというのが鉄則ですね。

自分の売買のやり方、ルールを確立したのであれば、それは過去のトレード経験から積み上げたものですから、自分の集大成なわけで、それはちゃんと守っていくのがポイントですね。ロスカットすると決めた値段に来たら、「いやいや戻るだろう」じゃなくてロスカットはキチンと行うというようなことです。ルールを曲げてしまう方がうまくいかないケースが圧倒的に多い。

FX初心者は価格の分析ができていない


PickUp編集部:
あらためて、個人投資家に伝えたい、相場分析の方法について伺いたいです。
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川口一晃:
ペンタゴンチャートが唯一絶対のテクニカルと僕は思っていないです。欠点もあるからです。だから、いくつかのテクニカルを使って、補完しあいながら、自分の相場観を確立していくものだと思っています。

これはファンドマネージャーだった時も、2019年の今も変わりません。普遍の真理ですね。FXのセミナーでもよく言ってるのは、テクニカルを学びながら自分のやり方を確立しましょう、ということ。やり方をルールにして、しっかり守ってやっていきましょうということです。

PickUp編集部:
でも、1995年の川口さんみたいに、ルールを守るのが難しい時ってありますよね。
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川口一晃:
そうですね。一番端的に表れるのが損切り注文ですよね。損を出したくないんだけど、カットしないでズルズルいっちゃうと底なし沼になる可能性だってある。なにより、次のトレードのための使えるお金が無くなってしまう。決めたルール通りにやったほうが投資はうまくいく。それを、俺は天才だからルールを曲げちゃおうと思うと、ドツボにはまる。

PickUp編集部:
言葉の重みが違いますね・・・。あとルールを守る以外に、トレードするときの心に留めてることは何でしょうか。
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川口一晃:
熱くならないこと、だと思います。常に冷静にいる自分を持っておかないといけない。ポジション持ってドキドキしちゃって、仕事中も気になってスマホ見たり、そういったのってポジションが大きいから起きることです。僕も証券会社に入社して、初めて自分で株を買ったときは、気になっちゃって気になっちゃって、四六時中レートを見ていました。

今思えば冷静になれないくらいの大きなポジションだったんですね。ポジションを持っていても平気でいられる、無理なく自分でやれる規模なら、そんなに慌てないですね。

PickUp編集部:
余裕資産を使った取引というのが大事なんですね。
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川口一晃:
ドキドキしない金額で、FXトレードに慣れていくのが大事。ドキドキしちゃって気になってしょうがないのはもう少し控えたほうがいいかもしれません。

PickUp編集部:
川口さんは投資家教育に取り組んでいらっしゃいますが、今考えていることを教えてください。
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川口一晃:
今、多くの生徒さんを抱えて投資やFXを教えています。投資の王道を伝え、ちゃんとした投資家を育てたいという思いで指導しています。そんな中で、僕が歩んできた時と徹底的に違うと感じたのは、今が便利になりすぎていることです。投資を学ぶ生徒さんは、いろんなことをすでに学んでいて、知識は豊富なんだけど、どうも深さが無いと感じています。実践の、本当のマーケットと距離がありすぎる感じです。

PickUp編集部:
トレードの仕方や、投資判断のやり方は、インターネットや本で調べればすぐに情報が手に入りますもんね。
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川口一晃:
ええ。僕はチャートの見方を含めた「価格の分析」が非常に浅いと感じます。

1つの例で言うと、本来だったら安く買って高く売る、高く売って安く買い戻すのが投資家の基本なんだけど。その投資判断の時、価格をしっかりと見極めないといけないのに、RSIが何パーセントだとか、移動平均線がどうだとか、そういうテクニックに走ってしまう人が90パーセント以上だと感じます。そうではないだろうと。今の価格をまず見て、これが上がるのか下がるのかを分析しないといけない。でも、分析ツールが便利になりすぎて、タップ1つ、クリック1つでファンダメンタルズの情報もテクニカルのデータも手に入る。だけど、あなたが一番行うべきことのは、今のこの値段を買うか売るか、利益確定や損失確定はいくらが目標かっていうことでしょう、と。

この辺がわからず失敗してる個人投資家が非常に多いと思ってます。僕の指導は、価格の分析ができる投資家をつくることを目標にしています。テクニカルの知識も必要だし、ファンダメンタルも抜きには語れない。その前に、価格分析ができる1人でやっていける投資家をつくる。僕は師匠から投資を教わるときに後進の指導を約束してるので、そうした投資家を育成していきたいです。あと、そろそろ僕も年なんで、ペンタゴンチャート分析の継承者探しの意味もあり、いろいろな投資家の人たちに相場を教えています。

PickUp編集部:
その、価格分析なんですけど、具体的にはどうすればいいんでしょうか。パッと思い浮かぶのはレート推移を記録したローソク足の形を分析するということなんですが。
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川口一晃:
そうですね。価格分析とは、80パーセントから90パーセントは値動きの把握です。これまでの値動きを見て、つぎの値動きを予測していき、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析で補完していくイメージです。僕のTwitterで相場分析のチャート画像をツイートしていますけど、移動平均か一目均衡表しか出さないです。少ないテクニカル分析でも、いろんな変化が感じ取れます。

PickUp編集部:
なるほど。言い換えると、シンプルなチャート分析をするということなんですね。
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川口一晃:
ええ。価格分析が先、それ以外は後。この順番を間違ってる投資家が90パーセント以上だと思っています。 価格分析は、現在までを分析し、この先はこういう展開があるんだっていうのを先に分かっていないといけません。なので、僕のところで学ぶ生徒さんは、未来のチャートが書ける指導してます。

PickUp編集部:
未来のチャートですか?
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川口一晃:
はい。まず方眼用紙を配って「ローソク足を書いて」って言って、実際に書いてもらいます。

PickUp編集部:
え、生徒さん自身が紙にローソク足を書くんですか。か、書けるのかなあ・・・
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川口一晃:
書くサイズは1日を1ミリでも何でもいいから、自分で手で書くよう言っています。生徒さんが描くチャートの書きっぷりについて、僕は何も言わない。これを2カ月ぐらい続けてもらうんです。そのうち、生徒が変化してくる。それを僕は待ってるんです。

PickUp編集部:
なんだか地味な筋トレを続けて気付きがあるとかに似ていますね。まさに体で覚えるですね。 頭でっかちに手を動かさないでいると、わかったつもりになるだけで相場分析が上達しないということでしょうか。
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川口一晃:
はい。そういった意味では私の投資指導は体育会系です。全身全霊で値動きを体に染み込ませないとダメです。染み込ませば、どの相場でも大丈夫。繰り返しになりますが、今は検索すれば情報がすぐ手に入るけど、やっぱりそういう時代だからこそ自分で手を動かして身につけることが大事だと感じています。

PickUp編集部:
本日はありがとうございました。

PickUp編集部より

現在は後身の育成に尽力を注いでいる川口さん。それは出会うべくして出会った師匠の存在が大きいのでしょう。また、自身の失敗談からマイルールの重要性について力強く話されていたことが印象的でした。自分をいかに客観視して相場に真摯に向き合うことの大切さを改めて気づかせてくれる、そんなインタビューとなりました。

↓↓↓前編はこちら
https://www.gaitame.com/media/entry/2019/11/21/181551

kawaguchi.jpg 川口一晃 氏
1960年北海道生まれ。1986年、銀行系証券会社(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。その後、銀行系投資顧問会社(現・三菱UFJ国際投信)、国内投信会社(三洋投信)にて11年間ファンドマネージャーを務める。1996年末、ブルームバーグLP入社。アプリケーションスペシャリストとして株式、投信を中心に分析ツールの開発に従事。その後、外資系証券会社を経て、独立し、2004年にオフィスKAZ代表取締役に就任。相場の世界ではチャートの鉄人として特にペンタゴンチャートの第一人者として知られている。現在では、テレビ・ラジオ等で番組レギュラーを持つなど各種メディアで活躍。独特のやさしい語り口には定評がある。また、沖縄金融特区や「日銀親子で学ぶお金の教室」等で講師を、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会では社会教育推進委員会委員を務めるなど金銭教育分野でも活躍。著書に『「株」と「為替」をチャートで読む』(明日香出版)、『神秘の株価予測法 ペンタゴンチャート入門』(東洋経済新報社)、『これでわかった!投資信託』(PHP研究所)、『まんがよくわかるシリーズ お金のひみつ』(学研)など多数。