(1)
前週末の米中による関税引き上げの応酬を受けて週明けのオセアニア市場は円買い優勢でスタート。トルコリラ/円の10%を超える急落の余波もあってドル/円が104.44円前後まで一時下落した他、豪ドル/円が70円台を割り込むなど、クロス円も軒並み下落した。
(2)
中国の劉鶴副首相は、米国との貿易戦争について「エスカレートさせることに断固反対する。中国にも米国にも全世界にも不利だ」と述べた上で「冷静な態度で交渉と協力で問題を解決したい」と語り、米国に協議再開を呼びかけた。
(3)
トランプ米大統領は「中国が昨夜、我々の通商チームに電話し、テーブルに戻ろうと言ってきた」「中国側から非常に生産的な電話が2回あった」と発言。前出の劉中国副首相の発言の効果も相まって米中貿易戦争を巡る過度な懸念が後退すると円の売戻しが活発化した。なお、その後中国外務省が「電話会談は承知していない」としてトランプ米大統領の発言を否定したが、市場の反応は一時的だった。
(4)
独8月Ifo景況感指数は94.3と市場予想(95.1)を下回り前回(95.8)から低下。同期待指数も91.3と予想(91.8)に届かなかった。
(5)
ドル/円は、106.00円前後に観測された売り方のストップロスオーダーを巻き込んで、一時106.39円前後まで上値を伸ばした。なお、米7月耐久財受注は前月比+2.1%と予想(+1.2)を上回る伸びとなったものの、変動の大きい輸送用機器を除いた受注は前月比-0.4%と、予想(±0.0%)を下回った。
ドル/円の見通し
昨日のドル/円は、終値ベースで約0.7%の上昇。早朝には105円台を割り込み、104.40円台まで下落したが、その後は断続的にショートカバーが入り一時106.30円台まで反発する場面もあった。米中貿易戦争の激化を嫌気して、円が急騰する形でスタートしたものの、劉中国副首相とトランプ米大統領が通商協議の再開に前向きな姿勢を示した事で過度な懸念が和らぐと、リスク回避の円買いが逆流した。
もっとも、こうした市場の動きは「総悲観」の後退であり、「楽観」見通しが高まった訳ではない。昨日の米債市場では、2年債利回りが上昇した一方、10年債利回りは横ばいとなったため、「逆イールド」が再発生している。こうした中ではドル/円の上値は限られる公算で、特に前週末の急落前からの上値抵抗である106円台後半は戻り売り圧力が強まりそうだ。