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【2026年最新ドル円相場見通し】米中対立は終わる?AI革命や米中関係の大転換がマーケットに与える影響を武者陵司氏が解説《武者陵司×神田卓也》後編 2026年4月11日

はじめに

前半では、イラン停戦後の原油・金・日本株・高市政権について武者陵司氏にうかがいました。後半では、AI革命がもたらす産業・雇用の変革、米中関係の大転換、円相場の見通し、そして個人投資家へのメッセージをお届けします。

【必見!】武者陵司氏の解説動画

 

 

「SaaSの死」とAI革命

― 2026年1月、アンソロピックがSaaS企業の業務を代替するAIエージェントツールを発表したことをきっかけに、SaaS関連株が急落しました。いわゆる「SaaSの死」についてどうご覧になりましたか?

これはこれから起こることの氷山の一角だと思います。AIと技術革新により、ほぼすべての仕事が機械やロボットに代替されていく時代の入り口にすぎません。

重要なのは「リープフロッグ現象」です。電話網のない新興国が、固定電話を飛ばして一気に携帯電話の時代に入ったように、技術の進化は時として既存の産業や技術を丸ごと無用の長物にしてしまう。そろばんがコンピューターに駆逐されたように、SaaSも今後さらに陳腐化していく。そしてこれは既存の勝ち組にも起こりうることです。

ただ、一方で新しいビジネスチャンスも次々と生まれます。リープフロッグで新しいところに飛びついて、新たな産業を開拓できる企業も出てくる。変化に対応できるかどうかが問われる時代です。

― AIバブル崩壊を懸念する声もあります。AI企業同士の循環取引などはバブルの予兆でしょうか?

 

AIバブルは崩壊する?

今起こっていることは、かつてのバブルとは本質的に違います。サブプライムショックの本質は「情報の非対称性を悪用した不正なビジネス慣行」でした。収入・職業・資産を十分に持たない人にまで融資を行う、いわゆる「ニンジャローン」に類する仕組みが、システムに組み込まれていた。

今のアメリカ金融市場はどうか。プライベートクレジットはプロ同士の取引ですから、騙されるとすれば騙される側にも責任がある。規制すべき対象ではなく、むしろ余剰資金を効率的に運用する市場機能として評価できます。市場のリスクプレミアムも全く動いていない。深刻な危機につながる種が存在するという議論は、言い過ぎだと思いますね。

テクノロジーと需要創造

― ご著書では「技術発展による供給過剰を補うため、政府が財政拡大で需要を創出することが重要」とおっしゃっています。もう少し詳しくお聞かせください。

 

テクノロジーの発展はいつの時代でもデフレ要因

 

技術が発展しない時代は、供給力は変わらない。需要が増えればすぐにインフレになって天井にぶつかります。しかし今はインターネット、AIによって生産性がどんどん高まり、供給力が膨らみ続けている。それに見合う需要を提供しなければ、経済はデフレ・供給過剰に向かって崩壊します。1929年の大恐慌も同じメカニズムで起きた。

そしてAmazonもGoogleもMicrosoftも、どんなに利益が増えてもリストラを続けている。昔の大企業のように「儲かったから工場を増やして人を雇う」という構図にはもうなりません。情報産業が雇用を生まない以上、信用創造と財政赤字拡大による需要創造が決定的に重要なのです。

 

米国家計の収支動向

 

アメリカはまさにこれを実践しています。政府支出と資産価格上昇によって、AI革命で雇用が失われても完全雇用が維持されている。アメリカの家計消費データを見ると、給料だけでは消費の伸びに追いつかず、資産所得政府支出がその差を埋めている。これが現実です。「財政健全化が重要」と言い続けるのは極めて時代錯誤な議論と言わざるを得ません。

米中関係の大転換

― 11月の米中間選挙を控え、トランプ政権と中国の関係はどう変わりますか?

米中関係は劇的に変わると思います。第1次トランプ政権は中国潰し政策でした。しかし第2次トランプ政権は「中国のレジームチェンジは求めない、共存できるものは共存する、ただし現状変更は絶対に許さない」という全く異なるスタンスです。

さらに中国の工業力はアメリカの10倍の鉄生産量、100倍の造船能力を誇る。関税問題でトランプが一時144%の関税率を課そうとしたところ、中国はレアアースの供給停止で応酬し、トランプは事実上降参した形になりました。資源消耗戦に入ったらアメリカは勝てません。

一方、アメリカの軍事的優位性はベネズエラ・イランの軍事作戦で証明された。工業力では中国、軍事・情報力ではアメリカという構図が鮮明になり、お互いが相手の強さをリスペクトせざるを得ない状況になったのです。

 

急変している米国相手国別貿易収支

 

特に注目すべきは貿易統計です。まもなくアメリカの最大の貿易赤字相手国が台湾になる可能性があります。TSMCの最先端半導体なしにはAI革命が進まないという現実が、これを生んでいます。中国が台湾に手出しをすれば、アメリカのハイテク産業にとっては大きな痛手です。台湾有事は当面起きえない。これは非常に重要な認識の転換です。

5月の米中首脳会談が実現すれば、軍事対立ではなく経済協調の時代が到来する兆しです。これはマーケットにとって計り知れないポジティブサプライズになると思います。

ドル円相場の見通し

― 停戦後のドル円は155円前後で落ち着いています。今後の円相場をどう見ますか?

ドル円は天井圏、円安はこれ以上進まないと見ています。最大の理由は、日米間で155円台半ばを「落ち着きどころ」として合意しているとみられるからです。

 

円の購買力平価からの乖離

 

為替は市場で決まるものと思われがちですが、私はそう思わない。為替は権力者が自らの意図通りに資源配分を動かす手段です。日本にとって通貨安は競争力強化というメリットがある。円安が進めば世界の需要が日本に集まる。実際、2022年以降の円安が日本経済を大きく押し上げたことは事実です。

ただし、円安が行き過ぎればインフレが進行し国民生活を苦しめます。それを止めるための利上げは、アメリカにとっても金融引き締めにつながりマイナスです。双方の利益が一致する水準が155円台半ばということです。今回のイラン問題があっても160円を超えなかったということは、その水準に岩盤的なコンセンサスが形成されつつある証左だと思います。

しばらくは150〜155円のレンジ相場が続くのではないでしょうか。

個人投資家へのメッセージ

― 激動の時代を生き抜く個人投資家へ、特に若い世代へのメッセージをお願いします。

端的に言うと「ハイリスク・ハイリターンは行き過ぎ、ゼロリスク・ゼロリターンはもってのほか」です。ミドルリスク・ミドルリターンを目指す運用姿勢が重要だと思います。

デフレの時代はキャッシュイズキングで、現金を持っていれば資産価値が守れました。しかし時代は変わった。インフレ時代に現金だけを持ち続けることは「キャッシュイズベガー」の状態です。

現在の日本は企業の固定資産純利益率が非常に高いのに、政策金利が1〜2%という空前の利潤・利子ギャップが存在します。こんな投資チャンスは世界の歴史を見渡してもほとんど例がない。低コストで資金を調達して高リターンの資産に投資できる局面が今続いているのです。

 

主要国のドーマー条件の推移(名目GDP成長率-長期金利)

 

日銀の利上げが株価に影響するという懸念もわかります。ただ、日本だけが他の先進国と違って名目経済成長率が長期金利を大幅に上回っている。この「ドーマー条件」が満たされている限り、ちょっとやそっとの利上げは株価にとってマイナスにはなりません。

NISAでオルカン中心の投資が広がっていることは悪くない。ただ、できれば複数の異なる資産を持って、パフォーマンスの差に注目することで学びが深まります。なぜ差が生まれるかを考えることが、リテラシー向上につながるのです。

そして最後に、相場を当てようとしないこと。私自身、間違いの連続でした。「アメリカはダメだ」と思っていたらアメリカが強かった、「トランプはどうにもならない」と思ったらアメリカ経済が好調だった。間違いを素直に認めて仮説を修正し続けることが、正しい判断への近道です。

インタビューを終えて

AI革命による雇用喪失を「需要創造で補う」という明快な処方箋、台湾が米最大の貿易赤字相手国になりつつあるという驚きのデータ、そして「米中共存」という地政学的な大転換──武者氏の分析は常に「現実をフラットに見る」姿勢から出発しています。個人投資家にとっては、「現金を持ち続けることが最大のリスク」というメッセージが、今この時代に最も重く響くのではないでしょうか。

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yoshizaki.jpg武者陵司氏
1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券(株)に入社。 1988年~1993年ニューヨーク駐在、(株)大和総研アメリカでチーフアナリスト、米国のマクロ・ミクロ市場を調査。1997年ドイツ証券(株)調査部長兼チーフストラテジスト、2005年ドイツ証券(株)副会長を経て、2009年(株)武者リサーチを設立。 著書に『株価7万円の最強日本経済』等がある。

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