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金(ゴールド)が『有事の金買い』に見えない理由|上昇再加速は「ETFとスーパーウィーク」(XAU/USD 週間見通し)2026/3/12

 

金は「米金利とドルの動き」振り回される

イラン情勢を受け、いわゆる『有事の金買い』への期待がある中、実際の金価格は高値圏にあるものの極端な上昇はみせていません。このような短期的な金価格の動向は、単なる「地政学リスク」だけで判断するのではなく、米国の物価指標や主要中銀のスタンスを受けた「米金利とドルの動き」を見る必要があります。

中央銀行の買いという強力な下支えはあるものの、当面は金利とドルの影響が優先されやすい局面です。チャート上でも上値の重さが確認されており、各国の重要イベントが目白押しの「スーパーウィーク」を通過するまでは、高値圏での神経質な持ち合い(レンジ相場)が続く見通しです。

高値更新後は伸び悩み

今年1月末に5,590ドル台の史上最高値を記録したあと、金価格の上昇勢いはいったん落ち着いています。3月上旬に5,230~5,300ドル台まで持ち直す場面も見られましたが、直近では5,160ドル台へと反落しました。足元の相場は「史上最高値圏」というより、「最高値からはやや水準を切り下げた高値圏」と捉えるのが適切でしょう。

※数字は当社 金スポットCFDを参考

なぜ「有事=金買い」にならないの?金価格を動かす2つの大きな力

現在の金市場では、以下の「上値を抑える要因」と「下値を支える要因」が激しく綱引きをしています。

1. 上値を抑える要因:米国のインフレ懸念と高金利

通常、米金利が上昇すると、利息を生まない金は魅力が低下し売られやすくなります。足元では、米国の根強いインフレ圧力や原油高を背景に、「米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが先送りされるのではないか」との観測が浮上。これが金利の高止まりとドル高を招き、金の上値を重くしています。

【近年の金と金利の関係】

  • 2022年:ウクライナ侵攻直後に金が急騰 → その後は金利上昇で反落
  • 2025年:金利高止まりでも金が上昇する“デカップリング(連動性の崩れ)”が発生
  • 2026年現在:再び金利の影響が強まり、金は金利に敏感に反応

2. 下値を支える要因:地政学リスクと中央銀行の買い

一方で、中東情勢の緊張といった地政学リスクは、いざという時の「安全資産」としての金需要を力強く支えています。加えて、世界各国の中央銀行による「金の爆買い(2025年は年間863トンと高水準)」も継続しており、これが中長期的な強固な土台となって相場の急落を防いでいます。

さらに今後は、投資信託(ETF)を通じた投資家の資金流入に改善の兆しが見られるかが、上昇トレンド再加速へのカギとなります。これは、投資家が「金を持つ合理性」を再評価し始めた可能性を示す重要なシグナルです。

ただし、ETFに資金が本格的に回帰するには「金利低下の明確な兆し」「インフレ懸念の後退」が必要であり、現状ではまだ条件が整っていません。そのため、買い材料と売り材料が拮抗しやすい相場環境が続いているのです。

つまり、現在の金相場はまさに「地政学リスクによる下支え」vs「金利高による上値抑制」という構図になっています。

【テクニカル分析(日足チャート)】

金スポット 日足/10日移動平均線/RSI 9日(外為どっとコムCFDネクスト)

金スポット 日足/10日移動平均線/RSI 9日(外為どっとコムCFDネクスト)

実際のチャート(日足)にも、上昇の勢いが一服し、方向感を探る様子が表れています。

  • 10日移動平均線(5,178ドル)
    直近の価格は、10日移動平均線付近で絡み合うように推移しており、やや下抜ける場面も見られます。これは短期的な上昇トレンドが一旦停止し、上値の重い「持ち合い(レンジ)」に入ったことを示唆しています。再び明確な上昇トレンドを描くには、まずこの5,178ドルのラインをしっかりと上抜ける必要があります。
  • 9日RSI(42レベル)
    相場の過熱感を示すRSIは「42」となっており、強弱の分かれ目である「50」をやや下回っています。急激な「売られすぎ(30以下)」の水準ではないものの、2月下旬に見られたような上昇の勢い(モメンタム)は明確に低下しており、テクニカル面からも上値が重くなりやすい形状と言えます。

想定レンジと価格シナリオ

ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)とテクニカル分析の両面を考慮し、当面の価格シナリオを以下のように想定します。

想定コアレンジ:5,080ドル ~ 5,250ドル

◆ 上昇シナリオ(最高値圏に向けた再上昇)

米国の物価指標(PCEやPPI)が落ち着きを示し、FOMCで市場の予想以上に利下げに前向きな姿勢(ハト派)が示された場合。金利低下とドル安を追い風に10日移動平均線(5,178ドル)を力強く突破し、再び5,250ドルなどの上値を試す展開が期待されます。

◆ 下落シナリオ(5,050ドルに向けた調整)

逆に、米国のインフレ懸念がさらに強まり、FOMCで「利下げは当分先」という強い姿勢が示された場合。RSIが下向きであることからも、高金利が嫌気されて利益確定売りが優勢となりそうです。その場合、直近の下値の節目である5,080ドルや5,050ドル付近まで、一時的な下落(スピード調整)が起こる可能性があります。

今後の注目スケジュール

この期間は、米国の重要なインフレ指標や、主要国の中央銀行による金融政策の発表が集中するため、相場が大きく動く可能性があります。

  • 3月13日:米・PCEデフレーター(FRBが重視する物価指標)
  • 3月17〜18日:米・FOMC(連邦公開市場委員会)およびパウエル議長会見 ★最大の焦点
  • 3月18日:米・2月PPI(生産者物価指数)
  • 3月18〜19日:日銀・金融政策決定会合および植田総裁会見
  • 3月19日:英中銀(BOE)、スイス中銀(SNB)政策金利発表、ECB理事会
 
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