
作成日:2026年3月12日 14時00分
4億バレル放出合意後もWTIは上昇
WTI原油は、米国とイスラエルによる対イラン攻撃の拡大やホルムズ海峡の通航停滞を受けて急騰し、3月9日には一時119.48ドルと2022年6月以来の高値をつけました。その後は早期沈静化観測から急反落し、3月10日には83.45ドルで取引を終えました。しかし、3月11日にIEA(国際エネルギー機関) 加盟国が史上最大規模となる計4億バレルの緊急備蓄放出で合意した後も、船舶攻撃や米・イラン双方の強硬姿勢が意識され、3月12日アジア時間にはWTI原油は94ドル台半ばまで反発しています。
備蓄放出でも消えない供給不安、相場は依然「上目線」
本来なら大きな下落要因となるはずですが、市場では中東情勢の緊張や海上輸送への不安が強く意識され、供給リスクの方が勝っており、WTI原油を押し上げています。
米・イラン双方の対立が続く中で、備蓄放出だけでは不安を払拭できず、価格は高止まりしています。見方によっては、備蓄放出「だけ」の対抗策しか打ち出せず、市場に『燃料』投下をしたともいえるかもしれません。イラン情勢が急速に落ち着く可能性はあるものの、少なくとも3月12日から19日にかけては下落よりも上昇リスクを意識すべき局面だと考えられます。
今はとにかく供給不安
市場が注目しているのは、備蓄を放出したという事実そのものではなく、それによって中東の供給不安を本当に解消できるのかという点です。備蓄放出は急騰を一時的に抑える効果はあっても、相場全体を下向きに変える決定打にはなりにくいと見られています。
こうした状況から、市場は依然として供給リスクを強く意識しており、価格の上昇基調が続きやすいと判断しているのが現状です。
戦略石油備蓄の低下、トランプ大統領のブレブレ発言が不安定リスク
原油価格が下がりにくい背景には、主に以下の3つの要因が絡み合っています。
- 米国SPRの低水準による「余力への不安」:
米国の戦略石油備蓄(SPR)は約4億1544万バレルと過去より低水準で、量は不足していないものの有事に使える余力が小さいとの印象から、市場は供給ショックへの不安を強めている。 - 短期エスカレーション(激化)のリスク:
米国はインフレ懸念から原油高を放置しにくい一方で、長期戦を避けたい思惑が短期的な圧力強化につながる可能性があり、緊張がすぐに和らぐとは限らず、むしろ局地的な対立が強まるリスクが意識されている。 - 米政権の発言のブレ:
トランプ大統領は3月1日に「4週間ほど」と述べたのちに、3月9日に「かなり終わりに近い」、3月11日に「すぐ終わる」と述べ、一貫性を欠いているため、市場は見通しを掴みにくく、発言が相場を揺らす状況が続いて投資家が安心して売りに動けない状態になっている。
乱高下しつつも上値を試す展開、明確な安心材料がないと下落難しい
これらを踏まえると、3月12日から19日の原油相場は荒い値動きになりやすいものの、依然として上方向を試しやすい展開が続くと見られます。備蓄放出という下落要因があっても供給不安が強いため、ホルムズ海峡の緊張が高まれば一段高となる可能性があります。
一方で、大きく下落するには海上輸送の正常化や報復の連鎖停止など明確な安心材料が必要ですが、現状ではそれが見えていないため、急落を狙うより下値の堅さを前提にした対応が現実的と考えます。
92.4ドルが重要な分岐点、過熱感も
WTI原油 日足チャート

移動平均線(10日)+ローソク足
ローソク足は10日移動平均線(92.4ドル)を上回って推移し、急騰後の押しでもこの水準を維持しているため形は崩れておらず、短期的には92.4ドルが重要な分岐点となり、これを割らない限り押し目買いが入りやすい地合いが続いています。
また、2月末以降は安値を切り上げながら上昇しており、急騰後も深い調整が入っていないことから買い意欲の強さがうかがえ、相場は「急騰後の高値圏でのもみ合い」に近い状態で、短期的には95ドル台の定着、さらに100ドル前後が上値の目安になりやすい状況です。
RSI(9日)
RSI(9)が83.6というのはかなり高いです。一般的に70超で買われすぎを意識しやすいので、80台はかなりの過熱圏です。これは「すぐ下落する」という意味ではありません。強いトレンド相場では、RSIが高いままさらに上がることもあります。ただ、ここから新規で飛びつくにはやや遅く、上がっても一気に一直線というより、いったん日柄調整か値幅調整を挟みやすい場面です。
92.5~94.0ドル付近の押し目買いがメインシナリオ
今週のWTI原油は、上昇基調を維持している一方で、9日RSIが高水準にあり、値動きが荒くなりやすい局面です。したがって、高値を追いかけるよりも、シナリオごとに対応を分けておく方が実務的です。
メインシナリオ
基本は上昇基調の継続です。10日移動平均線の92.4ドルを上回る限り、押し目買いが中心となりそうです。
- 買い場の目安は92.5~94.0ドル付近
- 上値の目安は95.5~97.0ドル、その先は99.0~100.0ドル
- 高値を追いかけるより、押した場面を待って入る方が無難。
サブシナリオ
95ドル台後半を明確に上抜けた場合は、上昇の勢いが一段と強まる可能性があります。この場合は順張りでついていく展開を想定します。
- この場合は順張りでついていく展開
- 目標はまず100ドル前後、さらに強ければ102~103ドル
- 急騰後の反落も大きくなりやすいため、利確は早めを意識したい
リスクシナリオ
92.4ドルを終値で明確に下回る場合は、短期の上昇一服を警戒したいところです。この場合は、いったん買い目線を弱めるべき局面と考えられます。
- 92.4ドルを終値で明確に下回る場合は、短期の上昇一服を警戒
- 下値の目安は90ドル前後、その下は88ドル台後半
- 無理な逆張りは避け、下げ止まりを確認してから判断したい
このように、今週は強気を基本にしつつも、過熱感が強いため、飛び乗りではなく水準を見ながら対応するのが現実的と考えられます。
今後の注目スケジュール
中東リスクが主役ですが、週後半は金融政策と在庫統計が値動きを増幅しやすい構図です。
- 3月13日:米・PCEデフレーター(FRBが重視する物価指標)
- 3月17〜18日:米・FOMC(連邦公開市場委員会)およびパウエル議長会見 ★最大の焦点
- 3月18日:米・2月PPI(生産者物価指数)、米EIA週間石油在庫統計
- 3月18〜19日:日銀・金融政策決定会合および植田総裁会見
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