
※登壇者の発言は収録時点の情報に基づいた見解となります。
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「円安はなぜ止まらないのか」「インフレはいつまで続くのか」「株高はどこまで行くのか」——2026年の相場を読み解くうえで欠かせない問いに、それぞれの専門家が独自の視点でお答えいただきました。本記事では、1月に公開した動画の内容をまとめてご紹介します。
エミン・ユルマズ氏|円安・株高・インフレは止まらない(2026年1月14日撮影)
●2025年相場の振り返り——「往って来い」の1年
年初はドル円相場が堅調に推移し、一時158円台を付けたものの、その後は円高方向への調整局面を迎えました。しかし再び円安基調が強まるなか、年末にかけての高市政権誕生がドル円相場の追い風となり、結果として「往って来い」の1年となりました。
●2026年のドル円は160円突破か——円安継続の3つの根拠
エミン氏は2026年のドル円について、160円台への移行シナリオを描いています。その根拠として3点を挙げています。
① アメリカが円安を容認する可能性:サプライチェーンの日本回帰や対中国戦略における日本の重要性から、160円台でも米国が牽制しないシナリオがある
② 基準点の上方修正:これまで150円を中心に±10円の変動を想定していたが、160円が新たな基準になりつつある
③ インフレ長期化による円安圧力:日本の長期金利上昇(10年債2.1%・30年債3.4〜3.5%)が示す通り、市場はインフレ高止まりを織り込み始めている
一方で短期的な調整リスクも指摘。リスクオフや2月下旬〜3月にかけての株式市場調整の可能性には注意が必要としつつも、ファンダメンタルズでドル円が本格的に円高に転じる材料は乏しいという見立てです。
●インフレはいつまで続く?——日銀の予測vs市場の見方
日銀は2026年前半にコアインフレ率が2%を下回ると予測していますが、エミン氏はこれに懐疑的です。中国とのデカップリングによるコスト増、高市政権の21兆円経済対策、レアアース国内生産のコスト上昇など、構造的なインフレ要因が複数重なっており、市場は日銀よりインフレ長期化を想定していると分析します。
「インフレは悪いことではない」というのもエミン氏の重要なメッセージです。適度なインフレは賃金上昇や消費活性化につながり、30年間のデフレで停滞した日本経済のマインド転換に必要なプロセスだと強調しています。
●日経平均6万円到達の可能性と注目セクター
51,200円のレジスタンスを突破した日経平均は、5万円台から6万円台へのステージ移行が視野に入っているとエミン氏は分析します。注目セクターとして以下を挙げています。
・短期:化学・機械
・長期:エネルギー・インフラ・防衛関連・ヘルスケア
・銀行株:20年間停滞していた銀行株が長期金利上昇を受けて急騰中
内田稔氏|円高ではなくドル安——構造的な円安の正体(2026年1月28日撮影)
●「円高」ではなく「ドル安」——相場の読み方が変わった
内田氏が最も強調したのが「円高とドル安を区別して見ること」の重要性です。1月下旬にドル円が159円台から152円前半まで急落した局面について、クロス円(ユーロ円・スイスフラン円など)を見ると円安方向に戻していた点を指摘。つまりこれは「円が強くなった」のではなく「ドルが弱くなった」だけであり、円そのものの弱さは変わっていないと分析します。
トランプ大統領が「ドルはまだ高すぎる」と発言したこともドル安に拍車をかけており、ドル指数は4年ぶりの安値圏まで下落しています。
●円安が止まらない根本理由——実質金利のマイナス
通常、日米金利差が縮小すれば円高になるはずですが、現在はそうなっていません。内田氏はその理由を「実質金利」で説明します。
・実質金利 = 名目金利-インフレ率
日本はこの実質金利のマイナス幅が先進国の中で大きく、円が売られ続ける根本的な原因となっています。本格的な円高転換には、日銀の追加利上げかインフレ率の低下が必要だとしています。
●2026年ドル円レンジ——基本は150〜155円、リスクは160円超の円安
内田氏の基本シナリオは150〜155円レンジですが、「リスクは円高より円安方向」と明言しています。貿易赤字の拡大(5〜10兆円規模の見込み)、デジタル赤字、企業の海外M&Aなど円売りフローが複合的に重なっているためです。またユーロやスイスフランなどのクロス円は史上最高値更新の可能性も残ると分析しています。
●日銀・FRBの金融政策と協調介入の可能性
日銀については年2回ペースの利上げを想定しており、160円が次の利上げ前倒しのトリガーになりうると分析。FRBについては2026年に3月・6月の計2回程度の利下げを予想しつつ、年内に「利下げ打ち止め」が視野に入ると見ています。
市場で話題になった「協調介入」の可能性については、極めて低いと結論づけています。国際的なコンセンサスの欠如、日本の自助努力不足(利上げが中立金利の下限にも達していない)、アメリカのドル安容認が難しい構造、の3点がその理由です。
●金(ゴールド)高と株高の共存——インフレ時代の資産戦略
金も株も同時に上昇している現象について、内田氏は「世界的なインフレが原因」と説明します。インフレ環境下では現金の実質価値が目減りするため、実物資産・リスク資産への資金シフトが起きやすくなります。ドル安だから金高というより、「世界中どの通貨建てでも金が上がっている」状態であり、これは世界的な通貨価値の目減りを意味するとしています。
インフレと円安が同時進行する環境では、株式・金・REIT・外貨建て資産の4つへの分散投資が有効で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が過去20年で年4〜5%の利回りを実現してきた4分割戦略が個人投資家にとっても参考になるとしています。
2人の見解を比べてみると
●共通していたこと
・円安基調は継続する(構造的な円安)
・インフレは日銀の想定より長引く可能性が高い
・現金保有のままでは資産が実質的に目減りするリスクがある
・株式市場は上昇方向(インフレ・円安の恩恵)
●アプローチが違ったこと
・エミン氏は日本株の具体的なセクター・銘柄視点や地政学リスクとの絡みを重視した「投資家目線」の解説が中心
・内田氏は実質金利・貿易収支・中央銀行政策といった「マクロ構造」の分析を丁寧に積み上げる学術的アプローチが中心
・ドル円の着地点についても、エミン氏が160円突破のシナリオに積極的な一方、内田氏は150〜155円を基本としつつ160円方向のリスクとして捉えており、スタンスにやや差がある
「円安・インフレ・株高が続く」という大きな方向感ではお二人の見方は一致しています。その一方で、どのレベルで円安が落ち着くか、どのアセットで資産を守るかという具体論では、専門家によっても視点に幅があることがわかります。
まとめ——個人投資家へのメッセージ
エミン・ユルマズ氏、内田稔氏、お二人の見解を通じて浮かび上がってくるのは、「2026年は変化に備えるだけでなく、変化を味方につける発想が求められる年」というメッセージです。
円安・インフレ・株高という環境は、預貯金だけで資産を守ろうとする人にとっては逆風です。一方で、適切に情報を収集し、自分なりの戦略を持って動ける人にとっては、資産を育てるチャンスでもあります。
お二人の視点を参考にしながら、自分自身の相場観を育てていくことが、変化の激しい2026年を乗り越えるヒントになるはずです。
外為どっとコム マネ育チャンネルでは、引き続き経済の第一線で活躍されている有識者をお招きし、最新のドル円相場見通しをお届けしていきます。ぜひ動画・記事もあわせてご覧ください。
エミン・ユルマズ氏エコノミスト、グローバルストラテジスト
トルコ・イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。
97年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学大学院にて生命工学修士取得。
2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に関わる。
2024年にレディーバードキャピタルを設立し、代表を務める。
現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。文筆活動、SNSでの情報発信も積極的に行っている。
国際公認投資アナリスト内田 稔(うちだ・みのり)氏
高千穂大学商学部教授。慶應義塾大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2012年から2022年まで外国為替のチーフアナリスト。22年4月から現職。J-money誌の東京外国為替市場調査では2013年より9年連続個人ランキング1位。国際公認投資アナリスト、証券アナリストジャーナル編集委員、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、(株)FDAlco為替アナリスト。
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