今回は高千穂大学商学部教授の内田稔氏をお迎えし、足元の為替相場と今後の投資戦略について伺いました。
【必見】内田稔氏の解説動画
トランプ政権2年目で円安ドル高は続くのか
第二次トランプ政権が発足して1年が経過しました。2026年は中間選挙を控え、トランプ大統領の動向が引き続き為替市場に大きな影響を与えることが予想されます。
●株高でも支持率低迷―FRBへの利下げ圧力が強まる
アメリカでは株高が続いているにもかかわらず、トランプ大統領の支持率が低迷しています。このため、FRBに対してさらなる利下げ要請が続く可能性は十分に考えられます。中間選挙イヤーということもあり、外交や防衛での不規則な発言にも警戒が必要です。
FRB利下げ見通しと日本への影響
●日銀の利上げ路線は継続できるのか
トランプ政権は基本的に円安を嫌っているため、円安是正に役立つ日銀の利上げ路線を後押ししています。したがって、FRBへの干渉が日本の金融政策に直接影響する可能性は限定的です。
ただし、FRBが大幅な利下げに転じた場合、ドル安円高が進み、日銀は利上げをしにくくなります。また円高によってインフレが和らげば、利上げの必要性も低下するでしょう。
●2026年の追加利下げは年2回程度
現パウエル議長の任期は5月までで、次期議長は就任後の利下げを約束した人物になる可能性が高いとされています。労働市場の悪化が続いていることから、3月と6月に合計2回程度の利下げが見込まれます。
一方で、株式相場は過去最高値圏で推移し、インフレ率も依然として2%の目標より高く、GDP成長率も好調を維持しています。そのため、2026年はいずれかのタイミングで利下げ打ち止めが視界に入る年になると予想されます。
●アメリカ経済を正確に把握する2つの重要指標
経済指標が強弱まちまちの中、特に信頼できる指標が2つあります。
ダラス地区連銀のウィークリーエコノミックインデックスは、10種類の日次・週次データから全米GDP成長率を毎週推計しており、現在アメリカ経済が前年比2%台の成長を維持していることを示しています。
カンザスシティー地区連銀のLMCI(Labor Market Conditions Indicators)は、24種類の労働市場指標を束ねたもので、労働市場の悪化は続いているものの、その度合いはかなり和らいできていることを示しています。
2026年ドル円レンジ予想|150-160円で円安継続か
●基本レンジは150-155円、リスクは160円方向の円安
現在、円高からドル安に移行しつつあります。ドルが各通貨に対して3〜5%下落すれば、145〜150円程度までのドル安円高が起こりうるでしょう。
ただし、円そのものの構造的な弱さが懸念されます。実質金利がマイナスであることや、日米関税交渉によってアメリカからの輸入が増え、2026年の貿易赤字が5〜10兆円程度に拡大する可能性があります。
これにデジタル赤字、企業のM&A、海外への証券投資といった円売りフローが重なるため、再びドル円が160円方向に向かう可能性も十分残っています。
基本レンジは150〜155円だが、リスクとしては円高よりも160円超えの円安方向に戻る可能性の方が高いと考えられます。
●クロス円でも円安進行に警戒
円が弱くドルも弱いということは、ユーロやスイスフランなど他通貨が相対的に強くなります。そのため、ユーロ円やスイスフラン円などのクロス円では円安が進みやすくなります。2025年同様、クロス円が史上最高値を更新する可能性もあります。
日本のインフレ定着が円安を加速させる
●インフレ継続なら円安・株高・金利高のトリプル効果
2026年の日本マーケットにおける最大のテーマは、インフレが定着するのか、それともディスインフレに戻るのかという点です。
インフレが続く場合、円安、株高、長期金利上昇が同時進行すると考えられます。実質金利がマイナス圏を脱することが難しくなるため円安に作用し、インフレは数字が大きくなる現象なので株価上昇とも共通します。長期金利もインフレ期待を反映して上昇圧力が残ります。
●日本でインフレが続く4つの構造的要因
日本でインフレが定着すると予測される理由は以下の通りです。
1. インバウンド需要の急増:日本経済史上かつてない規模
2. 人手不足と賃上げ:従来より大幅に進展
3. 企業の価格転嫁:以前より積極的に実施
4. ハト派寄りの日銀金融政策:緩和的スタンスの継続
これらの構造的要因を考慮すると、2026年も日本はインフレが続き、それが円安を後押しする可能性が高いと見られます。
金価格高騰と株高の共存|インフレ時代の資産運用
●なぜ金も株も同時に上がるのか
現在、株式市場が高値圏にある一方で金相場も大きく上昇しています。通常、リスク回避で金が買われるなら株は下がるはずですが、金高株高が共存しているのは世界的なインフレが原因です。
インフレはお金の価値が目減りする現象であり、世界中のインフレ国では物価上昇以上に株価が上がっています。金についても、コロナ後に各国が通貨供給を増やし世界的にインフレが進んだ結果、金と通貨全体の比較において金の優位性が意識されている状況です。
単にドル安だから金高というわけではなく、世界中どの通貨建てでも金が上がっているという現象が起きています。
円安・インフレ時代の投資戦略|4つの資産で分散投資
●インフレヘッジに有効な4つの資産クラス
インフレと円安が同時進行する環境では、現金を持っているだけで実質的に資産が目減りします。インフレヘッジとして有効な資産は以下の4つです。
1. 株式:企業収益の増加でインフレに対応
2. 金(ゴールド):実物資産として価値保存機能
3. 不動産・リート:家賃収入と資産価値の上昇
4. 外貨建て資産:円安による為替差益も獲得
金が上がっているからといって一気に傾けるのではなく、バランスの良い分散投資が重要です。金は配当や利息を生まない点で株に劣り、インフレが続けばドル円が再び160円を超える可能性もあるため、外貨建て資産への投資も有効です。
●年金基金GPIFの資産配分に学ぶ
日本最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、資産を以下のように配分しています。
・外国株式:25%
・外国債券:25%
・円債券:25%
・日本株:25%
この4分割戦略により、過去20年間平均で年4〜5%の利回りを実現しています。円建てと外貨建て、株と債券をバランス良く分散するというのが、個人投資家にとっても有効な戦略のヒントになるでしょう。
まとめ:2026年の為替相場とインフレ対策
●2026年ドル円相場のポイント
・トランプ政権2年目の中間選挙イヤーでFRBへの利下げ圧力継続
・FRBは年2回程度の利下げ後、打ち止めへ
・ドル円は150〜155円中心も、160円方向の円安リスク
・日本のインフレ定着が円安・株高・金利上昇を同時に招く
・インフレと円安に備えた分散投資が必須
2026年は不確実性の高い年になりますが、適切な情報収集と分散投資でリスクを管理しながら、インフレと円安環境に適した資産運用を心がけましょう。外貨、株式、金、不動産への分散投資で、円安とインフレから資産を守ることが重要です。
国際公認投資アナリスト内田 稔(うちだ・みのり)氏
高千穂大学商学部教授。慶應義塾大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2012年から2022年まで外国為替のチーフアナリスト。22年4月から現職。J-money誌の東京外国為替市場調査では2013年より9年連続個人ランキング1位。国際公認投資アナリスト、証券アナリストジャーナル編集委員、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、(株)FDAlco為替アナリスト。
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