失業率悪化ペースが鈍化すれば、利下げ後ずれ期待で一時的に米ドル高か
はじめに-鈍化傾向の一服感も
更新日付:2026年1月13日 11時10分(データを更新)
執筆日時:2026年1月8日 12時40分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
2026年1月9日に、米国の12月雇用統計が公表されます。
今回は、43日間に及んだ政府機関閉鎖が終了したことで、統計データに生じていた“ノイズ”が大幅に低減すると見込まれます。特に11月の失業率は、回答率の低下や調査期間のずれにより、実態を正確に反映していない可能性が高く、労働市場の基調を再評価するうえで12月統計は重要な材料になり得ると見られます。
では、前回の振り返りからです。
前回のおさらい-ノイズ混じりで判断先送り
・失業率は4.6%へ急悪化
12月16日には、政府閉鎖の影響で10月・11月分の統計が同時に発表されました。
- 10月NFP:▲10.5万人(大幅減少)
- 11月NFP:+6.4万人(市場予想5.0万人を上回る)
- 11月失業率:4.6%(9月4.4%から悪化)
民間部門の雇用者数3カ月平均は8月の1.3万人から11月には7.5万人へ改善し、労働市場が底打ちしつつある可能性が示唆されました。しかし、失業率が大幅に悪化するなど、回答率低下や閉鎖の影響によるデータの歪みも意識され、FRBが政策判断に活用できるほどの信頼性は十分ではないとの見方も広がりました。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:データ米国労働省

各市場の反応
【為替市場】
失業率悪化を受け米ドル/円は 154.397円まで下落。
ただし「実態悪化ではない」との見方から 155円付近まで反発し、その後は 154.70円前後で方向感に欠ける展開となりました。
【株式市場】
主要3指数はまちまち。
利下げ追加の有無を巡る見方が分かれ、方向感は限定的でした。
- ダウ平均:前日比 ▲0.84%(▲386.51)の 45,752.26ドル
- ナスダック総合:前日比 ▲2.16%(▲486.18)の 22,078.05
- S&P500指数:前日比 ▲1.56%(▲103.40)の 6,538.76
【金市場】
金価格は 4,340〜4,368ドルのレンジで推移し、方向感を欠く展開となりました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 5分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
今回の見どころ-失業率改善なら利下げ時期後ずれか
・雇用の落ち込みは底打ちの可能性
・失業率はノイズ減少で改善の可能性
労働市場関連指標(民間雇用、新規失業保険申請、求人件数)からは、労働需給の緩和ペースが鈍化し、安定化の兆しが見られます。
ただし、NFPの増加は「教育・医療」部門に依存しており、景気敏感セクターの雇用は依然として弱い点には注意が必要です。
図表3.雇用者数変化に関連するデータ

出所:各種公表データを基に外為総研が作成
※失業保険データは、雇用統計調査週の分
ダラス連銀が示す「安定的な雇用維持に必要な新規雇用者数(ブレークイーブン雇用者数)」は3万人前後です。
3万人以上 → 労働市場は安定
3万人未満 → 労働市場は弱い
という判断ができます。市場予想はすでにこのボーダーラインを上回っていますが、NFPがさらに市場予想を上回れば、労働市場の底堅さが増しつつあるとの見方が広がるでしょう。3万人以上で市場予想の範囲内であっても、労働市場の安定化期待から追加利下げ期待の後ずれ観測が広がり、米ドルを支えることになるのではないでしょうか。逆に、3万人を下回るようなら、労働市場への不透明感を高め、FRBの追加利下げ期待を高める可能性があります。
求人件数の改善や政府機関の再開を考えると、今回は3万人を上回り、労働市場の底堅さを示唆するのではないかと考えます。ただし、ブレークイーブン雇用者数が低下しているため、今後の雇用者数の増加ペースは大きくならない可能性があります。
図表4.主要産業の雇用者数推移

出所:米国労働省データを基に外為総研が作成
※単位:万人
また、失業率は改善が見込まれます。11月は政府機関閉鎖の影響で回答率が64%と低く、通常とは異なるデータを使って計算されたため、数字が歪んだ可能性があります。調査期間も閉鎖と重なり、本来は雇用者としてカウントされる人が失業者として扱われたケースもあったとされています。
こうした“ゆがみ”も解消されれば、12月の失業率は改善する可能性が高く、一時的にせよ労働市場への安心感につながるのではないでしょうか。
まとめ
- 政府機関閉鎖が終わり、12月の雇用統計はノイズが減って信頼性が高い見込み
- 11月の失業率悪化は“歪み”の可能性が高く、12月は改善しやすい
- NFPは3万人以上なら安定、3万人未満なら弱いと判断
- 雇用が強い → 利下げ期待後退 →米ドル高(円安)
- 雇用が弱い → 利下げ期待上昇 →米ドル安(円高)
戦略
■ 1. 米ドル/円(FX)の戦略
● シナリオ①:雇用が強い → 米ドル高(円安)になりやすい
発表後に米ドルが上昇し始めたら、短期で「押し目買い」を狙う
157円台をしっかり超える動きが出れば、流れに乗る形で買いを検討
ただし、157.70-80円には短期レジスタンスも控えているため、この近辺は注意
● シナリオ②:雇用が弱い → 米ドル安(円高)になりやすい
発表後に下落が続くなら、短期で「戻り売り」を検討
156円割れが見えてきたら、円高方向への動きが強まりやすい
■ 2. 株式市場の戦略
● 雇用が強い場合
利下げが遅れる → 金利が高い → 株にはやや逆風
ただし、景気が強いという安心感で、ハイテク株は下げにくい可能性も
● 雇用が弱い場合
利下げ期待が高まる → 株式市場には追い風
特に金利に敏感なハイテク株が上がりやすい
■ 3. 金(ゴールド)の戦略
● 雇用が弱い → 金利低下 → 金は上がりやすい
● 雇用が強い → 金利高止まり → 金は下がりやすい
雇用が弱いと判断されたら、短期で金買いを検討
雇用が強い場合は、金は無理に触らず様子見が安全
図表5.ドル/円チャート

米ドル/円 日足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
付随データ
図表6.[雇用統計の実績と予想]
| 年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||
| 予想値 | 初回結果 | 予想値 | 初回結果 | |
| 2025年12月 | 7.0 | 5.0 | 4.5 | 4.4 |
| 2025年11月 | 5.0 | 6.4 | 4.5 | 4.6 |
| 2025年10月 | - | -10.5 | - | - |
| 2025年09月 | 5.0 | 11.9 | 4.3 | 4.4 |
| 2025年08月 | 7.0 | 2.2 | 4.3 | 4.3 |
| 2025年07月 | 10.4 | 7.3 | 4.3 | 4.2 |
| 年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
| 予想値 | 初回結果 | 初回結果 | |
| 2025年12月 | 0.3 | 0.3 | 62.4 |
| 2025年11月 | 0.3 | 0.1 | 62.5 |
| 2025年10月 | 0.3 | 0.4 | - |
| 2025年09月 | 0.3 | 0.2 | 62.4 |
| 2025年08月 | 0.3 | 0.3 | 62.3 |
| 2025年07月 | 0.3 | 0.3 | 62.2 |
◇関連の経済データ実績
| 年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
| 2025年12月 | 44.9 | 52.0 |
| 2025年11月 | 44.0 | 48.9 |
| 2025年10月 | 46.0 | 48.2 |
| 2025年09月 | 45.3 | 47.2 |
| 2025年08月 | 43.8 | 46.5 |
| 2025年07月 | 43.4 | 46.4 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
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