
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年11月21日 15時14分
160円到達前の一呼吸が深い可能性も
米ドル/円、瞬く間に157円台到達
米ドル/円は157円台に到達し、157.891円と1月以来の高値を記録しました。背景には複数の要因が重なっています。
まず、日本政府が編成を進めている2025年度の補正予算が総額21.3兆円規模と、前年の13.9兆円を大きく上回る見通しとなったことで、財政運営に対する不透明感が意識され、円の上値を抑える要因となりました。
さらに、政府・日銀が金融緩和を継続する姿勢を維持していることや、円安是正に対して消極的なスタンスを示していることも、円売り圧力を強める材料となっています。
また、米国では政府機関の一時閉鎖が解消され、これまで延期されていた経済指標の発表が再開される見通しとなったことに加え、12月の利下げ観測が後退したこともあり、米ドルが対円で強含む展開となりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
円安優位だが一先ず材料出尽くし感も
米国勢がサンクスギビングデーの休暇を取得するため、通常であれば閑散相場が見込まれる時期ですが、米政府機関の再開により、9月の米卸売物価指数や小売売上高などが発表される見通しで、気を抜けない展開となりそうです。
12月FOMCまでの時間が限られる中、先週の雇用統計では判断がつかなかった部分を、これらの経済指標から読み取ることが求められます。特にインフレに関する情報が足元では不足しているため、9月分の卸売物価指数はこれまで以上に注目が集まる可能性があります。
仮にインフレ再加速が示されれば、12月の利下げ見送り観測が強まり、米ドル高が進行する展開も想定されます。この場合、利上げや円安是正に慎重な本邦政府の姿勢も相まって、米ドル/円が一気に円買い介入の警戒水準である160円を超える可能性も否定できません。
ただし、最近では日本政府による円安牽制のトーンもやや強まっており、サンクスギビングデーの休暇を控えたポジション調整の動きが加速する可能性もあります。そのため、これまでのように一方向の買いが続くとは限らず、注意が必要です。
また、月末週というタイミングでリバランスの動きが重なれば、想定以上に調整幅が深くなるケースも考えられます。無理をせず、ブラックフライデーの結果を確認してから取引を再開するのも一つの選択肢といえるでしょう。
チャネル上限突破で達成感広がれば154円半ばも(テクニカル分析)
米ドル/円は、今年の安値である139.883円(4月22日)を起点とした上昇チャネルの上限を上抜けており、相場は155〜160円のレンジに移行した可能性はあります。
ただし、10月1日の安値146.583円を起点としたフィボナッチ・エクスパンションの100%ラインに到達したことで、短期的には達成感が広がりやすく、上値追いよりも調整への警戒を強める局面と考えられます。
仮に156.00円を割り込んだ場合、21日移動平均線(154.38円:執筆時点)まで下落する可能性もあり、焦らず押し目買いの水準を慎重に見極めたいところです。
【米ドル/円チャート 日足】

出典:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:154.000-159.000
11/24 週のイベント:

一言コメント
高市首相の発言で『存立危機事態』という言葉が注目を集めています。2015年の「ユーキャン新語・流行語大賞」でノミネート語50語の中に選ばれた実勢のある言葉ですが、恥ずかしながらあまり意味を理解していませんでした。
事典によれば、『わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態』だそうです。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。
