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図表でわかる財務分析 エヌビディア(NVIDIA)  2025年1Q決算・2Q予想

(画像=iStock)

 

 生成AIの需要拡大を背景に、エヌビディア(NVIDIA)の株価がニューヨーク株式市場で大きく上昇、2025年7月9日には時価総額が一時4兆ドルを超えて、史上初の時価総額4兆ドル企業となったことが大きなニュースとなりました。その一方で、エヌビディア(NVIDIA)は、中国向けAI半導体販売による収入の15%を米国政府に支払うことでトランプ政権と合意していたことが、今月に入り伝えられるなど、不安材料も出てきています。

 そこで今回は、2025年5月28日に発表されたエヌビディア(NVIDIA)の2025年(FY25)1Q(2月~4月)決算と、8月27日発表予定の2025年2Q(5月〜7月)の業績予想を、主要指標と図表を使って解説してみます。

 まず、エヌビディア(NVIDIA)の損益計算書の内容から確認しましょう。エヌビディア(NVIDIA)はAIとデータセンター向けGPUの需要拡大を背景に飛躍的な成長を遂げる注目株です。2025年5月28日に公表された2025年(FY25)1Q決算では、売上高が前年同期比プラス69.2%の44,060百万ドル、営業利益がプラス28.0%の21,640百万ドル(営業利益率49.1%)、純利益がプラス26.2%の18,780百万ドルを計上。そして、27,410百万ドルという強力な営業キャッシュフロー(営業CF)を背景に、期末現預金残高は15,230百万ドルまで積み上がりました。

(1)エヌビディア(NVIDIA)の直近業績と2025年2Qの業績予想

 以下の表はエヌビディア(NVIDIA)の2023年(FY23)3Qから2025年(FY25)1Qまでの決算内容と市場が予測する2025年(FY25)2Qの業績予想です。

 

業績推移(四半期ベース)

決算期 FY23 3Q FY23 4Q FY24 1Q FY24 2Q FY24 3Q FY24 4Q FY25 1Q FY25 2Q予想
売上高 18,120 22,103 26,044 30,040 35,082 39,331 44,062 47,500
営業利益 10,417 13,615 16,909 18,642 21,869 24,033 21,638 24,200
当期利益 9,243 12,286 14,881 16,599 19,309 22,091 18,775 20,500
営業利益率 57.5% 61.6% 64.9% 62.1% 62.3% 61.1% 49.1% 50.9%
売上高成長率 205.5% 265.3% 262.1% 122.4% 93.6% 77.9% 69.2% 58.1%
営業利益成長率 1633.3% 421.8% 690.1% 174.1% 109.9% 76.5% 28.0% 29.8%
当期利益成長率 1259.3% 768.9% 628.4% 168.2% 108.9% 79.8% 26.2% 23.5%
EPS 0.37 0.49 0.60 0.67 0.78 0.89 0.76 0.83
PER 53.47 51.13 51.32 53.08 55.75 48.52 35.76 34.00
PBR 30.02 34.99 43.90 47.75 52.64 44.01 32.29 30.00

単位:百万ドル

(※1)EPS=希薄化後一株当たり利益
(※2)PER=株価収益率
(※3)PBR=株価純資産倍率

 

 エヌビディア(NVIDIA)の2025年(FY25)1Q決算は好調な結果となりました。1Qだけですでに売上高は44,062百万ドルに達しています 。これは前年度(FY24)の通期売上高である130,497百万ドルの約34%を、わずか3ヵ月間で達成するという高い進捗率となっています。好調の要因は主にAIサーバー向け半導体の高い需要が継続していると考えられます。

 ハイテク市場を担当する米証券アナリストの2025年(FY25)2Qに関する予想は、「1Qに引き続き、高成長が続く」という見通しです。そのコンセンサス予想を参考にしながら、以下に成長率と利益率の動向を織り込んだ私の分析を示します。

1)市場の期待(ポジティブ要因)

 期待の中心にあるのはデータセンター事業の継続的な成長です。世界中の企業でAI投資が継続しており、エヌビディア(NVIDIA)のGPUに対する需要は依然として高い状況が続くと見られます。2Qの売上高予想の47,500百万ドルは、この需要が継続することを前提としています。

2)企業が直面する課題(リスク要因)

 分析における注意点は利益率の動向です。予想営業利益率50.9%は高水準ですが、ピーク時からは低下しています。これは、新製品の次世代GPU「ブラックウェル(Blackwell)」への移行にともなう一時的なコスト増や、競争環境の変化などを反映したものです。

 また、売上高成長率はプラス58.1%と、依然として高いものの、成長のペースは鈍化しつつあります。エヌビディア(NVIDIA)は、これまでの急成長から持続的な高成長へと移行する段階にあるものと考えられます。

(2)通期ベースで見たエヌビディア(NVIDIA)の成長と収益性

 エヌビディア(NVIDIA)の「稼ぐ力」はどう変化したのか。通期ベースで2021年(FY21)から現在までの損益計算書を見ていきます。

 

決算期 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY25 1Q FY25 2Q予想
売上高 26,914 26,974 60,922 130,497 44,062 47,500
営業利益 10,041 5,577 32,972 81,453 21,638 24,200
当期利益 9,752 4,368 29,760 72,880 18,775 20,500
営業利益率 37.3% 20.7% 54.1% 62.4% 49.1% 50.9%
売上高成長率 61.4% 0.2% 125.9% 114.2% 69.18% 58.12%
営業利益成長率 121.6% △44.5% 491.2% 147.0% 27.97% 29.81%
当期利益成長率 125.1% △55.2% 581.3% 144.9% 26.17% 23.50%
EPS 0.38 0.17 1.19 2.94 0.76 0.83
PER 59.4 116.9 51.1 43.9 35.8 34.0
PBR 21.5 22.7 35.0 39.8 32.3 30.0

単位:百万ドル

 

1)売上高の動向

 2021年(FY21)から2024年(FY24)の4年間で、売上高は26,914百万ドルから130,497百万ドルへと、およそ4.8倍拡大しました。特に2023年(FY23)はプラス125.9%、2024年(FY24)はプラス114.2%と、2期連続で100%超の高成長を達成しています。

2)営業利益の動向

 2021年(FY21)から2024年(FY24)の通期ベースで見ると、2021年(FY21)にプラス121.6%だった成長率は、2022年(FY22)にマイナス44.5%と大きく落ち込みましたが、2023年(FY23)はプラス491.2%とV字回復、2024年(FY24)もプラス147.0%となっています。営業利益率も上昇し、高付加価値製品の比率増加と規模拡大によるコスト効率改善の結果が鮮明に出ています。

3)当期利益(純利益)の動向

 2021年(FY21)から2024年(FY24)までの4年間、当期利益は上下に変動しながら、2023年(FY23)にはプラス581.3%の成長率をとなり、2024年(FY24)もプラス144.9%の成長率で、72,880百万ドルという過去最高益を達成しました。

(3)株主価値指標の動き

1)EPS(1株当たり利益)

 EPSは会社が稼いだ最終的な利益を株式1株あたりに換算したものです。株主にとって保有する1株がどれだけの価値を生み出したかを示す重要指標です。

 2021年(FY21)のEPSは0.38ドルでしたが、2024年(FY24)は2.94ドルと、利益の増加にともない、約17倍と急増しました。これは株主の取り分が驚異的なペースで増加していることを示しています。

2)PER(株価収益率)

 現在の株価がEPSの何倍まで買われているかを示す指標がPERです。市場の「期待度」を表しています。2022年(FY22)は利一時的に利益が落ち込んだため、PERは「異常値」とも言える116倍まで急上昇しました。その後、利益が2023年(FY23)、2024年(FY24)と急増したことで、2024年(FY24)には43.9倍に低下しました。

 これは「株価は上がっているものの、それを上回るスピードで利益が成長しているため、株価の『割高感』が薄れている」ということを意味しています。市場は、エヌビディア(NVIDIA)の将来の成長に高い期待を寄せつつ、その評価が確かな利益に裏付けられてきた、より健全な状態と言えます。

3)PBR(株価純資産倍率)

 PBRは株価が1株あたり純資産(会社の解散価値)の何倍かを示す指標です。ブランド力や技術力といった無形の価値も評価に反映されます。PBRは一貫して上昇傾向にあります。2024年(FY24)には39.8倍という非常に高い水準に達しました。市場がエヌビディア(NVIDIA)を現在の資産価値だけでなく、同社が持つAI分野での圧倒的な技術力や、将来にわたって高い利益を獲得し続けるだろう「期待値」が、株価に大きく織り込まれていることを示しています。

(4)貸借対照表で財務の「安定性」をチェック

 貸借対照表は、会社の財産(資産)、借金(負債)、純資産のバランスを示しているので、財務の安定性が計測できます。いわば会社の「健康診断書」です。

 

 

決算期 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY25 1Q
流動資産 28,829 23,073 44,345 80,126 89,935
固定資産 15,358 18,109 21,383 31,475 35,319
流動負債 4,335 6,563 10,631 18,047 26,542
固定負債 13,240 12,518 12,119 14,227 14,869
純資産 26,612 22,101 42,978 79,327 83,843
流動比率 665.03% 351.56% 417.13% 443.99% 338.84%
自己資本比率 60.23% 53.67% 65.39% 71.08% 66.94%

単位:百万ドル

 

1)資産・負債・純資産の動向

 2021年(FY21)から2024年(FY24)にかけて、エヌビディア(NVIDIA)の総資産は約44,200百万ドルから約111,600百万ドルへと2.5倍以上に拡大しました。これは主にAI・データセンターへの投資や研究開発拠点の強化によるものです。2025年(FY25)1Qの総資産は125,254百万ドルとさらに増加しています。これはAI需要を支えるための戦略的投資が継続していることを示しています。

 こうした事業拡大にともない、負債も増加しています。しかし、その伸びは資産や純資産の増加ペースを下回っています。その中でも固定負債は比較的安定しており、大規模な成長投資を借入金に過度に依存せず、自己資金でまかなえていることがうかがえます。

 返済不要の自己資本である純資産は、2021年(FY21)の26,612百万ドルから2024年(FY24)の79,327百万ドルへと、3年間で約3倍に増加しています。これは稼いだ莫大な利益が着実に内部に蓄積され、エヌビディア(NVIDIA)の「体力」が強くなっていることを示しています。

2)流動比率の動向

 2021年(FY21)以降、エヌビディア(NVIDIA)は300%超という極めて高水準を維持しています。これは売上急増にともない、現金や売掛金などの流動資産の積み増しが、流動負債を大きく上回った結果です。2025年(FY25)1Qも338.8%と高水準を確保しており、短期的な支払い能力の問題はまったくありません。

3)自己資本比率の動向

 2021年(FY21)以降、自己資本比率は2022年(FY22)に一時的に低下したものの、その後は大きく改善し、2024年(FY24)には71.1%という非常に高い水準となりました。借入金の増加を上回る利益剰余金の積み増しが進んだことが主因です。2025年(FY25)1Qも66.9%と高水準を維持しており、この強固な財務基盤が、2025年(FY25)2Q以降も積極的な成長投資を支えると考えられます。

(5)キャッシュフロー計算書で「健全性」を判断

 最後にキャッシュフロー計算書を確認します。キャッシュフロー計算書は会社の現金の出入りを示す「家計簿」です。現金に余裕がなければ、企業経営は苦しくなります。「家計簿」で健全性をチェックしましょう。

 

 

決算期 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY25 1Q
期首現預金残高 847 1,990 3,389 7,280 8,589
営業CF 9,108 5,641 28,090 64,089 27,414
投資CF △9,830 7,375 △10,566 △20,421 △5,216
財務CF 1,865 △11,617 △13,633 △42,359 △15,553
期末現預金残高 1,990 3,389 7,280 8,589 15,234

単位:百万ドル

 

1)営業キャッシュフロー(営業CF)

 本業で現金を稼ぐ力を示す営業CFは、2023年(FY23)以降、爆発的に増加しています。2024年(FY24)は年間64,000百万ドルを超え、2025年(FY25)1Qだけでも27,400百万ドルの現金を本業だけで稼ぎ出しています。エヌビディア(NVIDIA)のAI事業が、会計上の利益だけでなく「本物の現金」を生み出す強力無比なエンジンであることを証明しています。

2)投資キャッシュフロー(投資CF)

 将来への投資を示す投資CFは、2023年度以降、再び大きなマイナスになっています。これは、本業で稼いだ潤沢な現金を、次世代GPUの開発やデータセンターの増強など、未来の成長のために積極的に再投資しているからです。

3)財務キャッシュフロー(財務CF)

 資金のやりくりを示す財務CFは、2022年(FY22)以降、巨額マイナスが続いています。これは稼いだ現金を使って大規模な自己株式取得や配当金の支払い(株主還元)を積極的に行っているからです。事業の成長と株主への利益還元を両立させていることを示しています。

(6)エヌビディア(NVIDIA)の2025年(FY25)2Q業績予想

 エヌビディア(NVIDIA)の2021年(FY21)から2025年(FY25)1Qまでの財務データを分析し、同社が歴史的なAIブームを牽引し、驚異的な成長と極めて高い収益性を両立させて、盤石な財務基盤を築いていることを確認しました。

 その勢いは2025年(FY25)1Qも継続しており、売上高は前年同期比で大幅に増加し、高い営業利益率を維持しています。財務面でも、強力な営業CFを背景に、潤沢な手元資金を確保し、高い安全性を示しています。

 市場が示した2025年(FY25)2Qの業績予想を見ると、「売上・利益ともに力強い成長が継続する」という高い期待が反映されています。これまでの分析で明らかになった膨大な営業CFを原資に、次世代製品への投資を続けながら、株主還元を実行する理想的な経営サイクルの継続を予想しています。

 エヌビディア(NVIDIA)を評価する際は、単に売上高の驚異的な成長性だけでなく、60%に迫る収益性(営業利益率)、70%近い財務の安定性(自己資本比純資産)、これらを支えるCFという複数の側面から総合的に判断することが重要です。

 2025年(FY25)2Q決算は、同社がこの力強い成長サイクルを維持できているかどうかを見極める上で、重要な試金石となるでしょう。

 

(本文ここまで)

 
岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。