執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年6月27日 12時37分
ユーロ/円・ポンド/円は大台接近、過去の動向は参考となるか
ユーロ/円やポンド/円は底堅い展開
「有事の米ドル買い」を通じた円安を背景に、ユーロ/円は169.709円、ポンド/円は198.20円前後まで上昇しました。その後、上昇ペースが速かった反動から、ユーロ/円は167.90円付近、ポンド/円は196.95円前後まで緩む場面もありましたが、押し目を買い拾う動きがなおも優勢で、ユーロ/円は169.30円台まで戻し、ポンド/円は198.797円まで上昇しました。
もっとも、トランプ大統領がパウエルFRB議長の早期交代を画策しているとの報道を受け、米ドル安・円高が進むと、クロス円も頭打ちとなりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
英欧日の当局者発言に警戒
米ドルを中心とした相対的な動きが続く中、米関税政策や米ファンダメンタルズを背景に、FRBの利下げ時期を巡る観測が再燃するかどうかが、ユーロやポンドのドライバーになると見ています。米国の早期利下げ期待が後退すれば、米ドル高を通じてユーロやポンドは圧迫される一方で、利下げ前倒し期待が高まれば、ユーロやポンドがもう一段上昇する可能性もあります。
また、ECBや英中銀の金融当局者の発言も、ユーロやポンドの強弱を左右する要因となり得るため、注意が必要です。ECBは「利下げは最終局面」との認識を示しインフレに対するリスクから、成長に対するリスクに視線が向き始めています。ラガルドECB総裁がユーロ圏の成長に対して改めて不安を示すようであれば、ハト派的と受け止められ、ユーロの上値を重くする可能性もあるでしょう。
一方、英中銀は8月の利下げをすでに8割程度織り込んでいますが、ベイリー総裁が段階的な利下げを強調すれば、利下げペース加速の期待が後退してポンド押し上げの材料となりそうです。もっとも、タカ派的なトーンが後退し、利上げの先送り感が高まっている日銀の植田総裁が、インフレ加速への警戒感を示すとともに、金融政策の正常化に向けた前向きな発言をするようであれば、本邦金利の上昇を通じてクロス円が調整局面を迎えるリスクもあります。
基本的には、相対的な米ドル安の流れを背景に、ユーロやポンドは底堅さを維持すると考えますが、要人発言の内容によって方向感が定まりづらくなる局面も想定されます。
ユーロ/円・ポンド/円は節目の大台を意識(テクニカル分析)
ユーロ/円は、21日移動平均線および200日移動平均線の上昇を支えに、昨年7月26日の高値168.015円を上回り、169.709円と節目とされる170.00円に迫っています。ここを上抜けることができれば、昨年7月に付けた史上最高値175.423円が視野に入ってくる可能性もあります。
ただし、ストキャスティクスでは、%Kライン・%Dライン・Slow%Dラインがいずれも80%前後に位置しており、割高感が意識されやすい局面です。昨年も一度170円台に乗せた後、168.00円前後で値固めしてから史上最高値に到達した経緯を踏まえると、今回も170円台に乗せた付近では、短期的な達成感が広がるリスクに留意が必要です。
一方、ポンド/円も底堅い展開が続いており、198.80円付近まで上値を伸ばし、200.00円到達後の一段高が期待される場面です。ただし、昨年秋以降、200.00円の壁に2度阻まれてきたことを考えると、今回が三度目の正直となるかが注目されます。
200.00円を上抜けるまでは慎重に押し目買いを検討したいと考えますが、三度目も上値を抑えられるようであれば、調整局面を想定し、売り目線へ転換したいと考えています。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:166.000-171.000
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:195.000-202.000
6/30 週のイベント:
一言コメント
7月・8月に入ると、良く聞かれる言葉が“夏枯れ相場”。参加者が減ることで急落・急騰が逆に「割安・割高」の歪みを生みやすくなる時期で、相場のアグレッシブさが低下する時期でもあります。でも、そんな時だからこそ、普段は考えもしなかった“端っこ”の価値を、個人投資家が拾える面白さもあるのではないでしょうか。
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