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図表でわかる財務分析:米国株 エヌビディア(NVIDIA)決算  2025年1月期 2025/5/23

(画像=iStock)

 「決算書は難しそう」「数字ばかりでどこを見ればいいのかわからない」あなたはそう感じていませんか。しかし、企業の実態を正しく把握するには、新聞やテレビニュースだけでなく、実際にその企業の決算書を読み解くことが欠かせません。

 投資家は投資対象として優良な企業について、売上や営業利益のような数字だけでなく、「どのような分野や技術に投資しているのか」「どのように資金を動かしているのか」といった重要な情報を「損益計算書(P/L)」「貸借対照表(B/S)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」から読み解く必要があります。

 今回は米国株の中でも特に注目の高いエヌビディア(NVIDIA)の2025年1月期決算について、表やグラフを用いながらわかりやすく解説してみたいと思います。

エヌビディア(NVIDIA)の損益計算書

 事業構造や資金の動きを読み取ることで、決算書の見え方は変わります。米国株の代表的な存在であるエヌビディア(NVIDIA)は、AI市場拡大を背景に急成長を遂げており、投資家のみならず、多くの人たちから注目を集めている半導体企業です。2025年2月26日に発表された決算内容について、グラフなどを使いながら見ていきましょう。

 まず、損益計算書の内容から確認します。

(1)売上高が2期連続で100%超の成長

                2023→2024:+125.9%

                2024→2025:+114.2%

 AIやデータセンター向けGPUの需要急増を受けて、売上高は2023年の約270億ドルから2025年には約1300億ドルへと、わずか2年で約5倍に拡大しました。

売上高=「製品やサービスの販売規模を示す基本指標」

 

(2)営業利益・営業利益率の劇的改善

               営業利益成長率:2023→2024期 +491.2%、2024→2025期 +147.0%

               営業利益率:20.7%→54.1%→62.4%

 売上高以上の伸びを示しています。規模拡大に伴うコスト効率の改善、高付加価値製品の比率増加が寄与しました。売上の伸び以上に、製造コストや人件費を抑えられた結果、営業利益を大きく押し上げています。

営業利益:本業による収益力を示す指標

(3)当期利益(純利益)の成長

                当期利益成長率:2023→2024期 +581.3%、2024→2025期 +144.9%

                絶対額:4,368 → 29,760 → 72,880 百万ドル

 営業利益の大幅増加に加え、税務最適化や借入コストの縮減が相まって、最終的な手元利益も飛躍的に増加。株主還元や研究開発への再投資余力が一段と高まっています。

エヌビディア(NVIDIA)の貸借対照表

 続いて貸借対照表です。

(4)流動資産の急拡大

                2023→2025年:23,073 → 80,126 百万ドル(約3.5倍)

 現金、売掛金や在庫などの短期間で現金化可能な資産が大幅増加。急成長する売上高によって、データセンター向け在庫や運転資金が積み上がったと考えられます。

(5)固定資産の投資拡大

                2023→2025年:18,109 → 31,475 百万ドル(約1.7倍)

 工場設備や技術ライセンス、長期的な研究開発設備への投資が増加。高性能GPUの開発・製造能力強化に向けた資本的支出の拡大がうかがえます。

(6)流動負債の増加

                2023→2025年:6,563 → 18,047 百万ドル(約2.8倍)

 買掛金や短期借入金が増えたことで流動負債も大幅に増加しました。運転資金の増加に伴い、一時的に支払義務も膨らんでいることを示しています。

(7)固定負債は安定的

                2023→2025年:12,518 → 14,227 百万ドル(約1.1倍)

 長期借入金や社債発行などの中長期的な資金調達は緩やかな増加にとどまりました。成長投資は主に内部留保や自己資本で賄われている可能性が高いと思われます。

(8)流動比率の改善

                推移:351.6% → 417.1% → 444.0%

流動比率=「流動資産 ÷ 流動負債 × 100

 一般的に 100%以上 が「短期的な支払能力あり」とされます。エヌビディア(NVIDIA)は400%超という極めて高水準です。手元流動性が高く、短期的な資金繰りリスクは極めて低いと言えます。

(9)自己資本比率の向上

                推移:53.7% → 65.4% → 71.1%

自己資本比率「純資産 ÷ 総資産 × 100

 70%超の自己資本比率は、財務基盤の強さを示す指標として非常に高い水準です。借入依存度が低く、外部ショック(利率上昇や市場変動)への耐性が高い構造であることを示しています。

エヌビディア(NVIDIA)のキャッシュフロー計算書

 3つ目はキャッシュフロー計算書です。

(10)営業キャッシュ・フロー(営業CF)の急拡大

                推移:5,641 → 28,090 → 64,089 百万ドル

 2022年から2023年にかけて約5倍に増えおり、さらに2024年には約2.3倍と本業で稼ぐ現金が急増しています。売上高・営業利益の大幅増加に加え、減価償却費などの非現金費用や運転資本の管理改善が寄与しました。

 エヌビディア(NVIDIA)は売上増に比例して潤沢な営業CFを確保しています。特に大規模言語モデル向けGPU需要の伸長を受け、キャッシュ創出力が一段と高まっています。

(11)投資キャッシュ・フロー(投資CF)の変化

          推移:+7,375 → △10,566 → △20,421 百万ドル

 2022年は固定資産売却などのプラス要因がありましたが、それ以降は設備投資や研究開発投資などの支出が膨らんでいます。中でもGPU製造設備の増強や次世代技術開発への投資拡大を示唆しています。

 2023年以降のマイナス幅拡大は、長期的な競争力維持を目的とした資本的支出が主因です。成長余地が大きい分野への積極投資が、今後の売上・利益基盤を、さらに強化するでしょう。

(12)財務キャッシュ・フロー(財務CF)の推移

                推移:△11,617 → △13,633 → △42,359 百万ドル

 一貫してマイナス額が拡大しています。主に自社株買い、配当支払い、借入金返済などによるものです。なお、2024年の大幅なマイナスは、大規模な自社株買いプログラムが背景にあります。

 豊富な営業CFを前提に、株主還元策を積極的に実施しています。特にEPS(一株当たり純利益)向上を重視しながら、財務健全性を損なわない範囲で自社株買いを行っています。

(13)現金残高の推移と安定性

                推移:1,990 → 3,389 → 7,280 → 8,589 百万ドル

 営業CFの増加が投資・財務CFのマイナスを上回っており、期末現金残高は継続して増加しています。手元流動性は高く、短期的な資金繰りリスクは低い状態です。

 事業拡大に伴う多額の設備投資、株主還元などを行いながらも、十分な現金を保有している点が、エヌビディア(NVIDIA)の強みです。将来的な市場変動にも十分に耐えうる体力が備わっています。

エヌビディア(NVIDIA)の市場評価指標(PER/PBR)

 最後は市場評価指標からエヌビディア(NVIDIA)を分析します。

(14)市場評価指標(PER/PBR)は「成長企業」らしさを示す

 PER は株価を1株あたりの当期利益(EPS)で割った値です。「利益に対して株価がどれだけ割高か」を示します。一方のPBR は株価を1株あたり純資産(BPS)で割った値です。「純資産に対して市場がどれだけ高く評価しているか」を表します。

PER=「株価÷一株当たり利益 EPS

 

 一般的にPERの数値が大きいほど株価は割高、小さいほど割安と判断されます。

 

PBR=「株価÷一株当たり純資産 BPS

 

 PBRが1倍は株価と企業の純資産価値が同水準。1倍未満は割安、1倍以上は割高と判断されます。

 PERは2023年1月期に約117倍、2024年1月期に約51倍、2025年1月期は約44倍と、2年連続で大きく低下しています。この背景にあるのは、エヌビディア(NVIDIA)利益が急拡大して、売上や利益の伸びに対する株価上昇ペースがやや抑えられたことの影響でしょう。つまり、利益増加にともない「1株あたりの利益に対して支払う株価」が相対的に割安感を帯びてきたということになります。

 一方でPBRは2023年に約23倍、2024年に約35倍、2025年に約40倍と順調に上昇しています。純資産(自己資本)が増加しつつも、株価の伸びがさらに上回っていることから、1株当たり純資産に市場が高い期待を寄せていることがうかがえます。特に成長企業としてのブランド力、AI 戦略への期待感が強く反映されていると考えられます。

エヌビディア(NVIDIA)の2025年1月期決算の総括

 エヌビディア(NVIDIA)は売上高がわずか2年で約5倍に増加、営業利益率は20.7%から62.4%へと飛躍的に改善しています。また、流動資産が大幅に膨らむ一方で、自己資本比率が53%から71%に上昇、短期・長期ともに堅固な財務基盤を築いていることがわかりました。そして本業で稼ぐ営業キャッシュ・フローが5,641百万ドルから64,089百万ドルへと急増し、投資や自社株買いを上回るキャッシュ創出力によって、期末現金残高が1,990百万ドルから8,589百万ドルまで積み上がっています。

 そして、投資家にとって重要な市場評価指標からは、エヌビディア(NVIDIA) が「利益拡大により PER が低下する一方で、将来の成長期待から PBR は上昇する」という成長企業らしい二面性を持っていることが分かりました。今後、利益成長が継続すると PERがさらに低下する可能性はありますが、同時に市場の期待感に変化がなければ、PBR は高止まりすることでしょう。投資判断では、この両指標をみながら、「割安感」と「成長期待」のバランスをつかむことが大切です。

 さて、今回は図表を用いた財務分析というアプローチから、投資家からの注目を集める米国株「エヌビディア(NVIDIA)」という企業の経営状況を考えてみました。エヌビディア(NVIDIA)はあなたの目にどのように映りましたでしょうか?

(本文ここまで)

 
岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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