執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年4月18日 14時10分
約2年ぶりの138円台が見えて来るか、半導体関税の行方注目
米ドル/円、年初来安値更新
米ドル/円は年初来安値を更新。『米国売り(米株・米債・米ドル売り)』の勢いは和らいだものの、米国において半導体製品の対中輸出規制がさらに強化されるなど、相変わらず米中の貿易摩擦激化が懸念され、米ドル/円は先週の安値である142.053円(4月11日)を下回り、141.607円まで下げ幅を広げました。その後、初回日米交渉を終えた赤沢経済再生相が「為替は加藤財務相と米財務長官で協議」としたため、円安是正問題が来週以降に先送りされたことに対する安堵感から米ドル/円は143.08円レベルまで戻したものの、トランプ大統領がパウエルFRB議長解任への口撃を強めると、142.00円割れまで押されるなど、上値の重い展開となりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
日米財務相会談で厳しい要求あるか
『米国売り』の勢いはいったん和らぎ、パニック的なリスク回避の動きは一服しています。しかし、関税問題は米中対話がほとんど進展していない中で、パウエル議長の進退問題など投資家を悩ますネタは多く、センチメントの改善ムードは広がりづらいと思われます。株式や米ドル/円には下向きの力が残ったままになりそうです。トランプ大統領は今後、導入予定の半導体関連の関税措置の詳細を発表するとしており、内容次第では米国からの資金引き揚げに伴う円高の流れが再燃する危険があります。トランプ大統領の言動には引き続き注意が必要でしょう。
また、来週は米ワシントンで開催される世界銀行・国際通貨基金(IMF)春季会合、主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など、国際会議が相次ぎます。出席する加藤財務相は、滞在中に米国との二国間会談を申し入れており、為替についての協議が行われる可能性が高くなっています。閣僚級協議後に石破首相は「依然として日米の立場に隔たりがある」との認識を明らかにしていたこともあり、モノの移動についての考え方の隔たりを、円安是正で帳尻を合わせようと、厳しい要求が出される危険もありそうです。場合によっては、米ドル/円は2023年7月以来の138円台が見えてくるのではないかと、考えています。
140円割れなら138円台が視野入り(テクニカル分析)
米ドル/円は、期間21日のボリンジャーバンドの-2σラインに絡みながら、上値を切り下げる動きが続いていて、目線は下向きのままと言えそうです。140.00円の節目付近ではかなりのサポートはありそうですが、同レベルを割り込めば昨年の9月16日安値139.576円や、昨年12月3日安値148.644円からの上昇幅の倍返しとなる、138.422円辺りが意識されてきそうです。一方、上方向は144.00円付近からは上値が重くなりそうです。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:139.000-144.000
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一言コメント
欧州系の金融機関のレポートでは、スイスフランの上昇からSNB(スイス国立銀行、中銀)が利下げや通貨売り介入など何かしらの対応策が求められる状況に陥りつつあるとしています。スイスのCPIは前年比で0.3%と政策金利の0.25%を僅かに上回る水準まで落ちてきており、通貨高がさらにインフレを押し下げる危険もあります。どこまでスイスフラン高が続くかは分かりませんが、レンジブレイクして急速にスイスフラン高が進んだ後に、中銀の行動によるスイスフランの急落には要警戒と思われます。
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