長期金利上昇は、日銀の利上げスタンスを市場が織り込んでいる【外為マーケットビュー】
動画配信期:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
市場予想動画の要約・まとめ
## 昨日の為替動向
- ドル円は一時149.196円まで上昇した後、148円台に下落して推移
- 朝方からじわじわとドル円が上昇する展開が見られた
- 現在の推移:148円前半付近で取引されている
- 株価の下落や円高に進む局面が一旦和らいでいる状況
## 日銀関連
- 植田日銀総裁の参議院予算委員会での発言:
- 基調的な物価上昇率は現時点でまだ2%を下回っていると述べた
- 物価上昇率が少しずつ上がってきているため金融緩和度合いへの調整を何度か実施してきた
- 日銀の表現では「非常に緩和的である状態から、緩和度合いを少し正常に向けて調整している過程」と説明
- 長期金利は市場において自由に形成されることが基本的な姿勢
- 金利が急激に上昇する例外的状況では、市場における安定的な金利形成を促す観点から機動的にオペレーション(国債買入)を臨時に実施する方針
## 日本国債市場の動向
- 日本の10年債利回りが一時1.58%程度まで上昇している
- 金利上昇要因として複数の影響が考えられる:
- 日銀の利上げスタンスを市場が織り込んでいる動き
- ドイツの財政拡張政策(インフラ投資・防衛費増大)の国際的な波及効果
- 日銀によるテーパリング(国債購入の段階的縮小)の進行
- 金利上昇は国債が売られていることを意味し、日銀は必要に応じて買入オペで対応する準備がある
## 米国インフレ指標(CPI)発表
- 前月比:0.5%から0.2%に低下(改善)
- 前年比:3.0%から2.8%に低下(改善)
- コアCPI(変動の大きい食品・エネルギーを除く):
- 前月比:0.4%から0.2%に低下(改善)
- 前年比:3.3%から3.1%に低下(改善)
- いずれも市場予想(2.9%、3.2%)を下回る良好な数字となった
- CPIの発表直後、ドル円は一時148円10銭程度まで下落したが、すぐに戻し149.196円まで上昇した
## CPI詳細項目の動向
- 航空運賃:4%低下(物価抑制要因)
- 住居費:0.4%から0.3%に低下(物価抑制要因)
- 卵価格:10.4%上昇(前年比では58.8%上昇)と食品価格の一部で高い上昇が継続
- トランプ大統領の関税引き上げ政策の影響はまだCPIデータに反映されていないが、今後物価上昇圧力となる可能性がある
## FRB(米連邦準備制度理事会)の政策見通し
- 物価が落ち着いていれば、FRBは必要に応じて機動的に金利引き下げが可能になる
- パウエルFRB議長は「様子見」のスタンスを示している
- 今後、景気が大きく減速した場合は利下げ圧力が高まる可能性
- 株式市場が下落すれば「パウエル・プット」(中央銀行による市場下支え)を期待する展開も考えられる
## カナダ中央銀行の金融政策
- 昨日、政策金利を0.25%引き下げ、2.75%に設定(予想通りの利下げ)
- しかし、利下げにもかかわらずカナダドルに対してドル売り・カナダドル買いの動きが見られた
- マックレム総裁の警告内容:
- トランプ大統領の関税政策による経済への影響で「新たな局面に直面」している
- コスト拡大によるインフレ上昇圧力と需要押し下げ圧力の両方を注意深く精査する必要がある
- 今後の金利変更は慎重に進める方針を示した
- 関税を巡る不透明感から一時的に為替が乱高下(一時1.452程度まで上昇)したが、その後は落ち着き、現在は1.43台中盤で推移
## 株式市場の動向
- 日経平均株価:3万7千円前半で推移
- 米国株に比べて相対的に底堅い動き
- 3月は配当を出す企業が多く、配当狙いの買いが下支え要因の可能性
- 明日のSQ(特別清算指数)が注目される展開、特に3万7千円台のオプション取引の攻防が焦点
- 米国ナスダック:
- 前日比1.2%上昇と底堅い動き
- テクノロジー関連株が全体的に強い買いが入った
- 半導体指数は2.45%上昇と力強い動き
- 1万1750ポイント付近が当面のレジスタンス(上値抵抗線)となっている
## 今日の注目経済指標
- 米国PPI(生産者物価指数)の発表
- 米国新規失業保険申請件数の発表
- これらの指標を見極めて今後の相場動向を判断する重要性が高い
## ドル円相場の見通し
- 昨日の高値149円台を更新できるか注目される
- 148円付近がサポート(下値支持線)となり得るか
- 再び円高方向(ドル売り)に向かうかが焦点
- 150円到達は当面遠のいた印象
## 結論
ドル円相場は148〜149円台のレンジで推移しており、日銀の金融政策と米国のインフレ動向が引き続き主要な影響要因となっている。米国のインフレ指標は予想より良好な結果となり、緩やかな物価上昇傾向を示しているが、トランプ大統領の関税政策による今後の物価上昇リスクには警戒が必要。カナダ中央銀行は利下げを実施したものの、関税政策による経済への複雑な影響を警戒している。株式市場はテクノロジー株を中心に回復の兆しを見せているが、日経平均は明日のSQが重要な焦点となる。今後の金融政策や経済指標の発表を注視しながら、マーケット参加者は慎重な取引姿勢を維持している。
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株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。
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