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つみたてNISAユーザー必見! SP500CFDで短期利益を狙う方法

(画像=iStock)

 つみたてNISAを活用して、コツコツと資産を増やす人が増えています。しかし、相場が不安定だったり、株価が下落したりすると、「このまま続けて大丈夫?」「損切りしなきゃダメ?」「いつ『利確』すればいいの?」と、あれこれ迷ってしまうのではないでしょうか。

 実は、つみたてNISAで選択できる金融商品と同じものに投資をして、短期的に利益が狙える投資方法があります。それが「CFD(差金決済取引)」です。CFDを活用すると、相場下落時にリスクヘッジとして利益を確保したり、反発局面で短期収益を狙ったりすることが可能になります。

 ここでは、「損切りや利確の判断基準」や「つみたてNISAがマイナスの場合にどうすべきか」など、つみたてNISAユーザーが気になるポイントを交えながら、CFDの具体的な活用法をお伝えします。

つみたてNISAと長期投資の魅力

 NISAは少額から始められる長期分散投資のための制度として、多くの投資家から支持されています。最大の特徴は、非課税で投資信託の運用益が得られる点です。2024年からは、年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)の投資が可能で、非課税期間が無期限となったことで、さらに資産形成に適した制度へと進化しました。

つみたて投資枠では、毎月一定額を投資する「ドルコスト平均法」という手法が使われます。この方法では、価格が高いときは少なく、価格が安いときは多く買うことになり、結果として価格変動のリスクを抑えながら資産を増やせます。

なぜS&P500がつみたてNISAで注目されるのか?

 つみたてNISAの長期投資では、S&P500に連動する投資信託が特に注目されています。S&P500は、米国を代表する500社の大型企業で構成された株価指数で、その長期的な成長性と安定性が魅力です。S&P500に連動した投信は、特定の企業や業種に依存するリスクを抑えながら、イノベーションやテクノロジー分野で世界をリードする米国経済全体の成長を直接取り込むことが可能になります。

 また、S&P500は過去数十年間、年平均約10%(配当込み)のリターンを記録しています。その安定したパフォーマンスから、世界中の投資家に信頼されている資産形成の手段です。

S&P500の金融工学的なリスクとリターン

 ただ、投資の世界は常に「リスク」と「リターン」が表裏一体です。特に金融工学の観点からは、リスクとリターンは単なる曖昧な概念ではなく、数値として定量化され、投資戦略を立てるうえで重要な指標となります。確かにS&P500は長期的に高いリターンが期待されますが、投資のリスクを正しく理解して、管理することも重要になるのです。

(1)金融工学におけるリターン
金融工学においてリターンは、投資資産の価格変動や配当などから得られる収益率を指し、主に年次リターンで評価されます。S&P500の過去数十年のデータによると、年次平均リターンは約10%(配当込み)とされており、長期的な資産形成において非常に魅力的です。年次リターンは1年単位での運用成果を示しており、金融商品のパフォーマンスの目安となります。

(2)金融工学におけるリスク
リスクとは、リターン(収益率)が平均値からどれくらい上下に変動する可能性があるかを表す指標です。これは「標準偏差」という数値で表されます。

 S&P500の年次平均リターンの標準偏差は、過去のデータからおおよそ15%~20%とされています。この値は、リターンが平均値から±15%~20%程度の範囲で変動することを意味します。

 たとえば、年次平均リターンが10%で標準偏差が20%の場合、1年間で-10%(10%-20%)から+30%(10%+20%)の範囲にリターンが収まる確率が約68%(正規分布の±1σの範囲)となります。

 なお、短期売買する場合は、年次の標準偏差ではなく、より短期間の標準偏差で考えなければなりません。

 年次標準偏差を日次標準偏差に換算する公式は以下のとおりです。



 米国市場では年間の取引日数を252日とするのが一般的です。仮に年次標準偏差が20%であれば以下のようになります。



年次リターン分を短期トレードで獲得する

 S&P500を1年間保有した場合、期待されるリターンは約10%となります。ただし、上述した通り、年次標準偏差が±20%であるため、リターンの範囲は-10%から+30%に広がる可能性があります。これが長期投資においてリスク管理が重要とされる理由です。

 短期トレードを行い、日次標準偏差を目安に利食いを繰り返した場合、理論上のリターンは次のように計算されます。

 総リターン=日次リターン×トレード回数

 その際の日次標準偏差(日次リターン)は1.26%とし、1回の利食いでその値を獲得すると仮定します。

 1.26%×10=12.6%

 このように10回のトレードすると、約12.6%のリターンが期待できます。

 実際には取引コストや相場変動という予測できないリスクがあり、想定外の損失を出すこともあります。これはあくまでも仮定の話にはなりますが、10回ほど日次の標準偏差分の利益を出せば、年次リターンに匹敵する利益が挙げられることになります。このような可能性こそが「短期トレード」のメリットでしょう。

CFDでの「損切り」と「利確」の重要性

  短期トレードは、市場の変動を捉えて効率的に利益を狙える手法です。ただ、そのメリットばかりに目を向けるのは危険です。短期トレードにはリスクも伴います。まず、そのリスクを正確に把握し、適切に対処することが重要です。同時にリスクヘッジを行い、損失が発生した場合に、最小限に抑える仕組みを構築する必要があります。

 CFD(差金決済取引)による短期トレードでは、特にレバレッジを使うとリスクが大きくなります。損切りと利確のルールを事前に設定し、リスクコントロールしましょう。

(1)損切りをためらうな
レバレッジを使うと、小さな価格変動で大きな損失が生まれる可能性があります。このリスクを管理するために、「損失2%超で手仕舞い」のように、明確なルールを設けることが重要です。損切りをためらうと損失は拡大し、トレードが続けられなくなるリスクすらあります。

(2)利確基準を設定
その一方で、利益確定の目安も決めておきましょう。利益が出ると欲張りすぎるときがあります。ただ、相場が反転して、せっかくの利益を失う可能性もあります。「一定以上の利益が出たら確実に手仕舞う」というルールを設けると、短期トレードの投資効率は向上します。

短期売買はリスク幅でコツコツ蓄積

 短期トレードで成功するには、一度の「大幅利益」に頼るのではなく、日次のリスク幅の中で、コツコツと利益を積み重ねることです。1回のトレードにおけるリスク幅をあらかじめ限定し、そのリスク内で小さな利益を積み上げる戦略が、CFDでは有効です。

 リターンの例で示した通り、日次のリスク幅を1.26%(S&P500の平均的な日次標準偏差)と仮定し、そのリスク幅で10回ほど利益確定を繰り返すと、SP500の年次リターンを超える約12.6%の総リターンを得る可能性があることはお伝えしました。これを意識すれば、感情に流されないトレードができるはずです。

つみたてNISAの運用益がマイナスになったら・・・

 つみたてNISAの運用成績がマイナスになったとしても、長期的には大きな問題にならないと考えられます。これは、つみたてNISAが「ドルコスト平均法」を活用した長期分散投資が前提だからです。相場の回復とともに運用成績も改善する可能性が高いからです。しかし、それでも不安を感じたり、短期的にマイナスを補填したいと思ったりしたら、「CFD(差金決済取引)」を活用した戦略が有効な手段になります。

 CFDを活用して、つみたてNISAのマイナス分を補う方法は以下の通りです。

(1)ショートポジション
 CFDは相場下落局面でも利益が狙える「ショート(売り)」ポジションが可能です。S &P500の価格が下落する局面でも、ショートポジションを持つことで、利益が得られます。
 ただし、下落のタイミングを正確に見極めることは難しく、期待通りの結果を得ることは簡単ではありません。相場が下落後に急反発することもあり、大きな損失を被るリスクもあるので注意してください。

(2)リバウンド・トレード
 それに対して、暴落後のリバウンドを狙う投資戦略は、より現実的かつ効果的でしょう。相場の過剰反応で大きく下落した後は、一定水準まで回復するケースが多く、この反発を捉えることで、短期的な値上がり益を効率的に狙うことが可能です。

 ただし、リバウンド狙いには、いわゆる「落ちるナイフをつかむ」というリスクがあります。相場の底値を完全に見極めるのは難しいので、資金管理やストップロスを徹底しましょう。エントリーを分散する戦略や、「アタマとシッポはくれてやれ」の精神で、反発を十分に確認してからエントリーするようにしましょう。

(3)ミーンリバージョン戦略

 暴落時の取引はリスクが高く、慎重な戦略が求められます。暴落時以外でボラティリティが高まり、価格が平均値から大きく乖離したときは、ミーンリバージョン戦略が有効な選択肢となります。

 この戦略は、価格が極端に上下した後、平均値に戻る動きを利用します。ボリンジャーバンドや移動平均を活用して、「買われすぎ」や「売られすぎ」を判断、逆張りトレードを行います。ただし、トレンドが出ていると「回帰」が起きにくいので、リスクを管理してトレードします。

まとめ

 つみたてNISAは長期的な資産形成に適した制度です。ただ、相場が不安定になり、S&P500でも下落局面になれば、多くの人たちが不安を感じるのではないでしょうか。そうした状況でCFDを活用すると、短期的な利益を狙いながら、つみたてNISAのリスクをヘッジする有効な手段となります。

 CFDはショートポジションで、下落局面でも利益を確保したり、暴落後の反発でリバウンドトレードを行ったりすることができます。ミーンリバージョン戦略を活用すれば、ボラティリティが高い状況での平均値への回帰を狙い、短期間で効率的に利益を獲得することができます。

 なお、レバレッジが利用できるCFDは、リスクの高いトレード手法でもあるので、損切りや利確ルールを徹底し、リスク管理を怠らないようにしましょう。つみたてNISAとCFDをバランスよく活用することで、長期的な安定性と短期的な柔軟性を両立させて、資産形成の幅を広げましょう。


(本文ここまで)

岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。