【外為総研 House View】
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 2月の推移
・2月の各市場
・2月のユーロ/円ポジション動向
・3月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 3月の見通し
ユーロ/円
ユーロ/円の基調と予想レンジ
ユーロ/円 2月の推移
2月のユーロ/円相場は158.080~163.715円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約1.9%上昇した(ユーロ高・円安)。
2日の米1月雇用統計や8日の内田日銀副総裁の発言を受けて上昇したドル/円相場につれ高して始まると16日には1月高値(161.86円前後)を上抜けた。この間、14日にはユーロ/ドルが3カ月ぶりに1.07ドルを下回る場面があったが、円安を支えにユーロ/円は強含みで推移した。
その後は、欧州中銀(ECB)のラガルド総裁が早期利下げに否定的な見解を繰り返し示したことなどからユーロ主導で上昇。20日に162円台を回復すると、仏・独・ユーロ圏の2月サービス業PMIが予想を上回った22日には163円台を回復するなど順調に上値を伸ばし、26日には163.72円前後まで上昇して昨年11月27日以来の高値を付けた。
しかし、29日には高田日銀審議委員がマイナス金利の解除に前向きな発言をしたことなどから円が買われたため一時162円台を割り込んで小反落した。
始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
158.859 | 163.715 | 158.080 | 162.043 |
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
1日
ユーロ圏1月消費者物価指数(HICP)・速報値は前年比+2.8%と市場予想(+2.7%)を上回ったが、前月(+2.9%)から伸びは鈍化した。エネルギーや食品などを除いたコアHICPも前年比+3.3%に鈍化した(予想+3.2%、前月+3.4%)。
6日
ECBによる12月消費者期待調査で、向こう1年間の期待インフレ率は3.2%と前回(3.5%)から低下。一方、今後3年間の期待インフレ率は2.5%と前回(2.4%)から小幅に上昇した。
8日
ベルギー中銀のウンシュ総裁は「賃金に関する一段のデータが得られるまで利下げを待つ必要がある」と発言。賃金の伸びについては「減速しているものの、力強く減速しているわけではない」との見解を示した。その後、レーンECB専務理事も「2%目標への道筋確保には一段のディスインフレ(インフレ鈍化)が必要」として早期の利下げ転換には慎重な考えを示した。また、「ディスインフレのプロセスは現時点で予想以上に速く進展している可能性はあるが、中期的な見通しはあまり明確ではない」と述べた。
12日
スペイン中銀のデコス総裁は「ECBが3月に発表するインフレと経済成長に関する新たな見通しは、利下げの開始時期を決定する上で極めて重要だ」との見解を示した。なお、前週末10日にはイタリア中銀のパネッタ総裁がECBの利下げについて「刻一刻と近付いている」と述べたことも伝わっていた。
13日
独2月ZEW景気期待指数は19.9と市場予想(17.3)を上回り、前回(15.2)から上昇。1年ぶりの高水準となった。ZEW(欧州経済研究センター)は「ドイツに対する経済的な期待が再び改善した」「回答者の3分の2以上が、インフレの低下を踏まえECBが6カ月以内に利下げを実施すると予想している」と表明した。
15日
ラガルドECB総裁は「2024年を通じて、ディスインフレが緩やかに続く見通し」としながらも 「インフレを左右する要因として、賃金の重要性が増している」「インフレが2%に向かいつつあることを示す追加データが必要」などとして「ECBは性急な決断は避けたい」と述べた。
22日
独2月製造業PMI・速報値は42.3と市場予想(46.0)に反して前回(45.5)から低下。一方、同サービス業PMI・速報値は48.2と市場予想(48.0)および前回(47.7)を上回った。続いて発表されたユーロ圏2月製造業PMI・速報値は46.1(予想47.0、前回46.6)、同サービス業PMI・速報値は50.0(予想48.8、前回48.4)だった。
23日
独1月IFO企業景況感指数は85.5と前回(85.2)から上昇し市場予想と一致した。IFO経済研究所は「ドイツ経済は低レベルで安定しつつある」との見解を示した。
26日
ラガルドECB総裁は「現在のディスインフレ(インフレ鈍化)プロセスは継続すると見込まれるが、それが2%目標の持続的な達成につながるという確信を政策委員会は必要としている」として早期の利下げ開始にあらためて慎重な姿勢を示した。また、欧州経済については「底打ちの兆しがますます増え、一部の先行指標は年後半の改善を示唆している」と述べた。
2月の各市場
2月のユーロ/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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3月のユーロ圏注目イベント
ユーロ/円 3月の見通し
欧州中銀(ECB)は3月7日の理事会も政策金利を4.50%に据え置く公算が大きい。かつて高まっていた市場の早期利下げ観測は、ラガルド総裁ら主要メンバーの多くが「早すぎる利下げはリスクが大きい」などと述べたことで大きく後退した。現時点で市場が想定するECBの利下げ開始時期は6月となっている。
ただ、2月にはパネッタ伊中銀総裁やビルロワドガロー仏中銀総裁が利下げに前向きな発言(タカ派メンバーの発言の陰で目立たなかったが)を行なっており、ECB内には早めの利下げを志向するハト派勢力が一定数存在することは確かであろう。同じくハト派と目されているデコス・スペイン中銀総裁は2月に「3月会合で発表する最新のインフレ見通しと経済見通しが、利下げ時期を決定する上で重要」と述べた。3月7日のECB声明やラガルド総裁の会見が「タカ派色が薄れた」と市場に受け止められるようだと、次回4月利下げの織り込みが進むことも考えられるため注目したい。
他方、3月18-19日には日銀金融政策決定会合が行われ、市場の一部にはマイナス金利の解除が決まるとの見方もあることから、ユーロ/円相場は円が主導する形で大きく変動する可能性がある。大勢は据え置き予想だが、それだけにもしマイナス金利を解除すれば、一時的にせよ円高(ユーロ安)に振れることになるだろう。ただし、マイナス金利の解除で緩和修正が打ち止めになる(追加引締めは当面ない)との見方が広がるようなら、結局は円安(ユーロ高)基調に戻ることも考えられる。3月のユーロ/円はECBと日銀の金融政策、及びそれに対する市場の受け止め方が相場を動かす要因となりそうだ。
(予想レンジ:158.500~164.000円)
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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