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ドル/円の2月見通し「日銀の早期緩和修正観測高まるも円買いに勢いなし」

【外為総研 House View】

House View

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 1月の推移
・1月の各市場
・1月のドル/円ポジション動向
・2月の日・米注目イベント
・ドル/円 2月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円 1月の推移

1月のドル/円相場は140.795~148.803円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約4.2%上昇(ドル高・円安)した。

年始から、3日の米12月ISM製造業景況指数、4日の米12月ADP全国雇用者数など良好な経済指標の結果を受けてドル買いが先行。新NISA(小額投資非課税制度)の開始に伴う本邦個人投資家の海外投資意欲の強さが意識されたため円安も進行した。5日の米12月雇用統計や11日の米12月消費者物価指数(CPI)の発表後は146円付近で伸び悩んだものの、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が早期利下げに慎重な考えを示した16日には147円台へと上昇した。さらに、17日には米12月小売売上高の増加を受けて148円台へと続伸。FRBの早期利下げ観測が後退する中、19日には148.80円前後まで上値を伸ばして昨年11月28日以来の高値を付けた。

その後は上昇が一服したものの、底堅さを維持。23日の日銀金融政策決定会合では、早ければ3月にもマイナス金利の解除に踏み切るとの見方が広がったが、円高の動きは一時的だった。ただ、148円台では伸び悩む動きが続き31日の日銀主な意見や米連邦公開市場委員会(FOMC)消化する中、146円台後半で1月の取引を終えた。

始値 高値 安値 終値
140.849 148.803 140.795 146.952


出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

5日
米12月雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比21.6万人増と市場予想(17.5万人増)を上回り、失業率は3.7%と予想(3.8%)を下回った。また、平均時給は前年比+4.1%と予想(+3.9%)以上に伸びた。ただ、労働参加率が62.5%に低下(前月62.8%)したほか、非農業部門雇用者数の10月分と11月分の増加幅が合計7.1万人の大幅な下方修正となった。その後に発表された米12月ISM非製造業景況指数は50.6と市場予想(52.5)を下回り前月(52.7)から低下した。

10日
NY連銀のウィリアムズ総裁は「当局の目標を完全に達成するにはしばらくの間、景気抑制的な政策スタンスを維持する必要があるだろう」「インフレ率が持続的に2%に向かうと確信したときにのみ、抑制の程度を緩めることが適切となる」と発言。また、ウィリアムズ総裁はダラス連銀のローガン総裁が今月6日に量的引き締め(QT)の減速に言及したことについて「銀行の準備預金はQT開始前の水準とほとんど変わっていない」として異論を表明した。

11日
米12月CPIは前月比+0.3%、前年比+3.4%と市場予想(+0.2%、+3.2%)を上回った。食品とエネルギーを除いたコアCPIも前年比+3.9%と市場予想(+3.8%)を上回った。ただ、コアCPIの伸びは前月の+4.0%から小幅に鈍化した。なお、その後クリーブランド連銀のメスター総裁は「12月CPIの結果は我々の仕事がまだ終わっていないことを示唆している」として「3月は利下げには早すぎる」との見解を示した。

17日
米12月小売売上高は前月比+0.6%と市場予想(+0.4%)を上回った。自動車を除いた売上高は+0.4%(予想+0.2%)だった。なお、国内総生産(GDP)の推計に用いられるコア小売売上高(自動車・ガソリン・建材・食品サービスを除く)は前月比+0.8%と市場予想(+0.2%)を大幅に上回った。

23日
日銀は金融政策の現状維持を決定。声明文で「粘り強く金融緩和を継続していくことで(中略)物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指していく」と表明した。展望リポートでは事前報道通りに2024年の物価見通しを従来の2.8%から2.4%に下方修正した。植田日銀総裁はその後の会見で、2%の物価目標実現の確度について「少しずつ高まっている」とした上で「目標実現が見通せる状況に至ればマイナス金利を含めた大規模金融緩和策の継続の是非を検討していくことになる」などと発言。一方で、マイナス金利を解除しても「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と強調した。

25日
米10-12月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比年率+3.3%と市場予想(+2.0%)を大きく上回った。7-9月期の+4.9%から減速したが、好調な個人消費(前期比年率+2.8%)などに支えられて堅調な伸びを示した。

26日
米12月個人消費支出(PCE)は前月比+0.7%と市場予想(+0.5%)を上回り、米経済のけん引役である個人消費が引き続き堅調なことを示唆。米12月PCE物価指数(デフレーター)は前年比+2.6%で予想と一致した。一方、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターは前年比+2.9%と市場予想(+3.0%)をやや下回った。

31日
日銀が公表した1月の金融政策決定会合の主な意見で「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」などとする緩和修正に前向きな見方が多く示された。

一方、FOMCは政策金利を据え置き、声明で「政策金利に対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める」として、利上げバイアスを取り下げた。ただ、インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとはみていない」として早期利下げには一定の距離を置いた。

パウエルFRB議長も会見で「年内の利下げが適切となる可能性高い」としつつも「利上げが可能な段階に到達するには、インフレが持続的に低下しているとの確認が必要」「労働市場が力強く経済が健全という基本シナリオの下、利下げのタイミングについて慎重になれる」などと発言。その上で「3月利下げは基本シナリオではない」と明言した。

1月の各市場

1月のドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

2月の日・米注目イベント

ドル/円 2月の見通し

 米連邦公開市場委員会(FOMC)は、1月会合で利上げバイアスを取り下げた一方で、早期の利上げ転換には慎重な姿勢を示した。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は利下げの条件として、インフレの持続的な低下と労働市場の軟化を挙げた。インフレについては「確信が得られる可能性が高い」として一段の鈍化に自信を示したが、労働市場はなおも堅調との見方を維持した上で「労働市場の予期せぬ弱体化が見られれば利下げ時期は早まる」との見解を示した。

それにもかかわらず、1日時点で米金利先物が織り込む3月(次回FOMC)利下げの確率は依然として50%強を示している。5月(次々回FOMC)に至っては90%以上の利下げを織り込んでいる。こうした市場の思惑的な利下げ観測は、パウエルFRB議長の発言を踏まえると、「労働市場の弱体化」が見られない限り、後退の余地が大きいと言えるだろう。

2月2日の米1月雇用統計はこれまで以上に重要な意味を持つことになりそうだ。なお、本校執筆の1日時点で米1月非農業部門雇用者数は18.5万人の増加が予想されており、1月失業率は0.1ポイント上昇の3.8%にとどまる見通しだ。1月平均時給についても前年比+4.1%の堅調な伸びが見込まれている。現時点で「労働市場の弱体化」シナリオはメジャーなものとは言い難く、利下げ織り込みの後退がドルの押し上げにつながる公算が大きいと見ておきたい。無論、米1月雇用統計が予想外に「労働市場の弱体化」を示すようなら、文字通り「予期せぬ」事態となることからドル高見通しを撤回せざるを得なくなる。いずれにせよ、2月のドル/円相場のカギは米1月雇用統計が握っていると考えられる。  

他方、日銀が3月にもマイナス金利の解除に踏み切るとの見方があらためて広がりつつあるが、それと同時にもし解除しても金融緩和維持の姿勢に変化はないとの見方も市場に浸透しつつある。日銀主要メンバーの発言によって円相場が上下することはあっても一時的な反応にとどまるだろう。
(予想レンジ:143.000~150.000円)

 
kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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