米利下げへの織り込み、FOMCメンバーは先走り過ぎだと考えている可能性【マット今井 実践トレードのつぼ】
収録日:2023/11/30
元邦銀ディーラーの今井雅人氏が現状の世界経済を詳細に分析し、今後の為替相場動向まで踏み込み見通しを示します。
目次
0:00 相場ふり返り
0:52 FOMCメンバーの利下げについての言及とドル円動向
3:51 パウエルFRB議長発言に注目
4:53 足元のトレード戦略
4:32 【PR】口座開設特別キャンペーン
要約
相場ふり返り
この1週間ですけれども、僕はだんだんと円売りが一回クリスマス前に拡大するというか、もう一勝負ファンドなんかがしてくるんじゃないかな、と考えていたんですけれども、突然米利下げの可能性について「来年の春先にも利下げがあるんじゃないか」という観測が広がりまして、そのことによってアメリカの長期金利が下がり、それに合わせる形でドルも下落する展開になりました。特にドル円の下げがキツかったので、クロス円も下がってしまって、全体的に円高になり、予想していた展開とは違う流れになってしまいました。
FOMCメンバーの利下げについての言及とドル円動向
一番大きかったのは、FOMCメンバーの人たちが利下げについて言及をしたということです。代表的なものを一つ取り上げると、ウォーラーFRB理事はFOMCメンバーの中で最もタカ派の一人、タカ派ということは利上げに対して積極的で、利下げはなかなか好まない方なんですが、この人が講演で2つのポイントを言いました。
1つは今のいろいろな経済指標を見ていると、今の金利水準はとても好位置にある、適切な水準にある、十分引き締まった状況にある、というような表現をしています。この言葉が何を意味しているかというと、もうこれ以上利上げをする必要がないという、認識を示しているわけですね。タカ派のメンバーが、もうこれ以上の利上げが必要なんじゃないか、とったことが一つのインパクトでした。
2つ目は利下げの可能性について言及をしたということ。今はテイラールールに基づいて政策運用をしていますが、このテイラールールでインフレ率が十分に低下しているということが確認できれば、テイラールールに従って金利を下げ始めるということができますと。それも数カ月後、3、4、5カ月かわからないけど数カ月後、というような言い方をしています。これは、まず利下げということをあえて言及したという点と、数カ月というある意味時間軸を少し表に出したということで、マーケットは驚いたわけです。それで一気に、金利が下がりドル売りになったわけですが、1番ドルロングが溜まっているのはドル円なので、ドル円での投げ売りが出たっていうことですね。下で買おうと思ってた人達もこういう状況を見てサっと引いてしまったということで、投げ売りがキツくなっている。利下げ観測を背景に、ポジション調整が起きているということですね。ただ、CMEのFFレートの先物市場を見ていると、もう5月の利下げも6割以上を織り込んでいます。この時期にもう6割を織り込むというのは、ちょっとやっぱり先走りすぎだと思いますので、早晩私はこれは落ち着いてくると思っています。ただ投げ売りが続いてますから、ドル円はちょっと戻るとドル売りが出てしまう。まだ投げ売りの最中ですので、頭が重くなってくると思いますが、これが一巡するとだんだん底を固めてくるんじゃないかなというふうに考えています。
パウエルFRB議長発言に注目
今週は米PCEのデフレーターという、非常に重要な指標が出ますので、これの動向次第でインフレが予想より下がってるってことになると、もう一段売られるかもしれませんので、この指標はよく見ておかなければいけません。
正直申し上げて今マーケットの、来年の利下げに向けての織り込みは、FOMCメンバーにとってはあまり喜べない、ちょっと先走り過ぎだと考えていると思うんです。そういう時は今までのケースで言うと、マーケットが一回盛り上がってるのを、冷やすというような発言をよくやります。そういう意味で言うと、今週パウエルFRB議長の発言が出てきますから、利下げをここで織り込むのは時期尚早的な発言が出てくるんじゃないかなと思いますので、その辺はよーく見ておく必要があると思います。
足元のトレード戦略
なかなかこういう状況になるとトレードやりづらいんですけれど、まだ投げ売りの状態ですから、目先はドル円で戻りをちょっと売って軽く抜くという程度にやっておいて、投げ売りが終わったところをきちっと拾って、またドル円ロングを持つというようなイメージで今週はやっていきたいなと思っています。

今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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