目次
▼中東リスク勃発するもランドは比較的堅調に推移
▼世界的なインフレ鎮静化なるか
中東リスク勃発するもランドは比較的堅調に推移
南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。
第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート
欧州や中国経済に比べた米経済の相対的な安定を材料にした7月半ば頃からのドルの底堅い推移は、10月第1週に公表された米主要経済指標が強弱マチマチであったことや、最近のFRB幹部による米長期金利上昇は追加利上げの必要性を低下させるといった発言を受けて、一旦頭打ちとなった。こうした流れを受けてランドも10月以降、対ドルで持ち直しがみられつつあったが、イスラエル・パレスチナ戦争勃発(10/7~)による地政学リスクの台頭で市場のリスク回避地合いがやや強まると、持ち直しは一服した。結果的にランドは、依然としてここ2ヵ月程度の1ドル=19ランドを挟んだ動きが続いており、主要な新興国通貨の中では比較的底堅い推移となっている。南アフリカの重要な貿易相手国である中国経済に持ち直しの兆しがみられていることや、国内の電力不足問題が小康状態にある他、インフレ率も安定化に向かいつつあることなどが、一定の支援材料になっているとみられる。もっとも、中国経済については、不動産関連を中心にまだ先行き不透明感は強く、中東情勢も今後悪化すれば、市場のリスク回避地合いが強まり、ランドにとってはマイナス材料となり得る。
南ア製造業PMIは低下が続く
南アフリカの製造業PMIは低下基調が続いており(第2図)、これまでの大幅な利上げや世界経済減速の同国経済への影響も注視する必要がある。情勢悪化によるランドの下落リスクには引き続き警戒が必要だ。
第2図:南アフリカの製造業PMI
南アランド/円 週足チャート
南アフリカランド 特設サイト:
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当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランドおよびメキシコペソ(MXN)はインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、こちらのページをご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。
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