このレポートでは、メキシコペソとアメリカ経済や日本円との為替レートの動き、メキシコペソの見通し、そしてその影響を受ける可能性のある要因について詳しく解説します。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
X(Twitter): https://twitter.com/KandaTakuya
ファンダメンタルズ良好もペソ弱含み 投機筋のロング半減
メキシコペソは上値の重い展開が続いている。ペソ/円は今月9日に付けた8.072円前後の安値から一時8.400円前後まで持ち直したが、20日には8.11円台に押し戻される場面があった。ドル/メキシコペソも今月6日に付けた直近高値(ペソの安値)の18.486ペソに迫る18.466ペソへと20日に再び上昇した。メキシコ経済は引き続き堅調で、中銀も高金利の維持を表明していることを踏まえると、足元の弱含みがファンダメンタルズに基づいたペソ安とは考えにくい。投資家の持ち高調整によるところが大きいと見るべきだろう。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の国際通貨先物(IMM)の取組によると、10月17日時点で投機筋によるメキシコペソの買い越し(ネットロング)残高は約4.4万枚と減少基調が続いており、7月のピーク時の約9.6万枚から半分以下に減少した。もっとも、投資家の持ち高調整の動きがピークを越えたかどうかはまだわからない。調整されうる買い持ちは、まだ半分近く残っていると見ることもできるためだ。
米政治が不透明要因に
メキシコにとって、イスラエル情勢などの地政学リスクも不透明要因だが、米国の政治情勢も大きな不透明要素だろう。隣国の米国では下院議長不在の混乱が続いており、つなぎ予算の期限が到来する11月17日までに事態が収束するメドは立たない。11月後半以降には予算枯渇による政府部門の一部閉鎖が起きる可能性もある。また、来年の米大統領選に対する不透明感も強い。再選を狙うバイデン米大統領がメキシコ国境の壁の建設再開を決めたのも劣勢が見込まれる大統領選を意識したものと見られる。野党・共和党の大統領候補に依然としてトランプ前大統領が有力視されている点もメキシコにとって不安材料だろう。これらの不透明感がペソの一段の持ち高調整を促す可能性は否定できないだろう。
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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