【外為総研 House View】
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 1月の推移
・1月の各市場
・1月のドル/円ポジション動向
・2月の日・米注目イベント
・ドル/円 2月の見通し
ドル/円
ドル/円の基調と予想レンジ
ドル/円 1月の推移
1月のドル/円相場は127.225~134.771円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.8%下落した(ドル安・円高)。
前年末に、日銀が物価見通しの引き上げを検討していると報じられたことで緩和修正観測が高まると年始から円買いが先行。3日には130円台を割り込んで下落した。その後一旦は134円台へと買い戻されたが、6日発表の米12月雇用統計で賃金の伸びが鈍化した上に米12月ISM非製造業景況指数が活動縮小を示す50.0割れへと低下したため失速。
12日に米12月消費者物価指数(CPI)の鈍化を受けて再び130円台を割り込むと、翌13日には128円台も割り込んで続落。16日には約7カ月半ぶりに127.23円前後まで下値を切り下げた。日銀が金融政策の現状維持を決めた18日には131円台へと持ち直す場面もあったが、上値の重さは拭えなかった。その後、月末にかけては、おおよそ129-131円のレンジでもみ合った。
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
4日
米12月ISM製造業景況指数は48.4と予想(48.5)を下回り、2020年5月以来の水準に低下した。内訳の構成指数では新規受注が45.2へ低下した一方、雇用は51.4へと上昇。仕入れ価格は2020年4月以来の低水準となる39.4に落ち込んだ。その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月会合の議事録を公表。参加者は高インフレが想定より根強くなるリスクに言及。早期の利下げ転換には慎重な考えを示した。参加者は「金融環境が不当に緩和されれば、物価安定を回復するための努力を複雑にしてしまう」と懸念を示したことが明らかになった。ドルはショートカバーが強まり上昇した。
6日
米12月雇用統計は非農業部門雇用者数が22.3万人増、失業率が3.5%となり、市場予想(20.5万人増、3.7%)より強かった。一方、平均時給は前月比+0.3%、前年比+4.6%と予想(+0.4%、+5.0%)を下回る伸びにとどまった。これを受けてさらなるインフレ鈍化への期待が高まり米国債と米国株が上昇する中、ドル/円は米債利回りの低下を背景に軟化した。前日の米12月ADP全国雇用者数の好結果などで予めドルが上昇していたことから、手仕舞い売りが活発化した模様。
12日
「日銀は17-18日に開く金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」との一部報道が伝わると円買いが先行。その後、米12月CPIが前年比+6.5%と前月の7.1%から伸びが鈍化すると、予想通りの結果とはいえインフレ鈍化を確認したことでドル売りが活発化した。ドル/円は、これらを受けて132円台前半から128円台後半まで大幅に下落した。
13日
米ミシガン大の調査に基づく5-10年の期待インフレ率は3.0%と前月(2.9%)からやや上昇した一方、1年先の期待インフレ率は4.0%と前月(4.4%)から大きく低下した。ドル/円は2022年5月31日以来の127円台に差し込んだ。
18日
日銀は金融政策の現状維持を決定。短期金利を-0.10%、長期金利を0±0.5%に誘導するイールドカーブ・コントロール(YCC)も修正しなかった。大方の予想通りではあったものの、長期金利許容変動幅を前回に続いて拡大するとの思惑がくすぶっていたことから本邦長期金利が急低下した。「共通担保資金供給オペ」の拡充を決めたことなども材料視され、ドル/円は131円台に急伸。しかし、黒田総裁が退任する4月以降に日銀が緩和修正に動くとの観測は消えず上げ幅を縮小。米12月小売売上高が前月比-1.1%と予想(-0.9%)を下回ったことや、米12月生産者物価指数(PPI)が前年比+6.2%と市場予想 (+6.8%)を下回り、前月(+7.3%)から鈍化したことで下落に転じる場面もあった。
23日
日銀は5年物の共通担保資金供給オペを実施。前週の会合で拡充を決めた同オペに注目が集まる中、1兆円のオファーを通知。その後、同オペに3.1兆円の応札があったことが判明すると、金利低下とともに円安に振れた。
26日
米10-12月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比年率+2.9%と予想(+2.6%)を上回った。一方、GDPの約7割を占める個人消費は前期比年率+2.1%と予想(+2.9%)を下回った。同時に発表された米12月耐久財受注は前月比+5.6%と予想(+2.5%)を大幅に上回った。米新規失業保険申請件数は18.6万件と前週(19.2万件)から予想(20.5万件)に反して減少した。
30日
財界や学界の有志からなる令和国民会議(令和臨調)が政府・日銀の共同声明見直しを提言すると一時円買いが強まった。次期日銀副総裁候補とされる翁氏が共同座長を務める同会議の提言によって日銀の緩和修正を巡る思惑が高まった。
1月の各市場
1月のドル/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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2月の日・米注目イベント
ドル/円 2月の見通し
2月のドル/円相場は、1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、3日の米1月雇用統計、14日の米1月消費者物価指数(CPI)に加えて、10日頃に発表される見込みの日銀(次期正副総裁)人事案がポイントになるだろう。ドルの下落トレンドが最も強まりそうなシナリオは、FOMCが利上げペースを一段と緩めた上に利上げの打ち止めを視野に入れていることが明らかになり、続いて雇用の減速とインフレの鈍化が示されるケースであろう。もっとも、現時点でFOMCが引き締めスタンスを著しく弱めることは考えにくい。年後半の利下げ転換さえも織り込みつつある市場から見ればFOMCの引き締め継続スタンスはタカ派的に映る可能性もあろう。むしろ、雇用情勢が堅調を維持し、インフレが思ったほど鈍化しないことでドルが反発するシナリオの方が確率としては大きいのではないだろうか。
日銀総裁・副総裁人事については、総裁候補として雨宮副総裁、中曾前副総裁、山口元副総裁らが有力視されている。雨宮氏なら黒田路線の継承が連想されて円安、白川前総裁の下で副総裁を務めた山口氏なら円高の反応を見込む声が多い。また、1月に政府・日銀の共同声明見直しを提言した翁氏が副総裁に指名されれば円高の反応を示す公算が大きいと見られる。とはいえ、2月10日を目途に国会に提示する予定の人事案について現時点で観測報道すら出てこないところを見ると、隠し玉的なサプライズ指名の可能性もないとは言えないだろう。ダークホースとして豊田章男・トヨタ社長(次期会長)の名前も挙がる。予断を持たずに発表を待つ必要がありそうだ。これら、2月前半に集中する重要イベントが目先のドル/円相場のトレンドを決定づける可能性もあるだけに、それぞれの結果を確認したい。
(予想レンジ:126.000~135.000円)
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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