こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。通貨売買の参考にして頂ければ幸いです。
第34回は「豪ドルが買われやすい3つの理由」です。
目次
1.豪ドル相場の定点観測
2.豪ドルが買われやすい3つの理由
3.豪ドルはしばし買い目線で臨みたい
1.豪ドル相場の定点観測
まずは現在の豪ドル相場について状況を確認します。
豪ドル定点観測表 出所:外為どっとコム、Investing.com
AUD/USDは2週間で77Pips上昇し、1AUD=0. 6985USDとなりました。この間、金融政策決定会合が行われず、米12月CPIなどの重要経済指標に振らされる展開となっていますが、0.6880レベルでは底堅く、ジワリと上昇が続いています。
AUD/JPYは0.64円下落し、1AUD=90. 27JPYとなっています。日本のインフレ率が上昇し、日銀の政策修正観測が高まる中で円買いが強まり、一時88. 10円台まで下落する局面も見られました。ただし、最終的に政策維持となったことで、現在は円売り優勢に傾いている状況です。
資源価格の総合的な価値を示すBCOMは+3.79%でした。昨年の6月頃から原油価格は徐々に低下してきましたが、ここにきて一服の兆しがみられており、引き続き資源価格が高止まりしそうな点は豪ドルにプラスな材料とみています。
なおIMM通貨先物における投機筋の豪ドルポジションは、ネットショートが▲33,620枚となりました。引き続き、投資家の買い余力、売り余力ともに十分な状況といえます。
ここまでが、ざっとですが直近2週間の振り返りと定点観測です。
2.豪ドルが買われやすい3つの理由
年初の豪ドルは底堅く推移しており、AUD/USDは、一時0.70を超えるレベルまで値を戻してきています。主な要因は3つあると考えています。
1つ目が中国経済のリバウンド期待です。これは中国がウィズコロナ政策へ移行したこと、不動産ディベロッパーに対する融資規制の緩和観測が広がっていること、財政支出の拡大が約束されていることが背景にあり、中国と経済的な結びつきの深い豪ドルに取ってプラスに働いているとみています。
2023年の中国経済に関する詳しい情報はこちらの記事をご覧ください。
2つ目はオーストラリアの強いインフレ圧力です。昨年の10月より月次のCPIが公表されることとなりましたが、直近の数値である11月のCPIが前年同月比で+7.3%と高止まりしていることが確認されました。
オーストラリアの月次CPI/出所:Australian Bureau of Statistics
現在のオーストラリアのインフレや政策金利、国債利回りを米国と比較すると以下のようになります。
オーストラリアと米国の物価と金利の比較表 出所:外為どっとコム、Investing.com
消費者物価(インフレ)と、10年物国債の利回りにおいて、オーストラリアが米国を逆転しつつある状況が見て取れます。こういったファンダメンタルズの変化が豪ドル高につながっている可能性が高いとみています。
3つ目が米国の弱い経済指標です。まずはじめに住宅関連指標から落ち込みが見られましたが、最近は小売売上高、景況感指数などのマインド調査も落ち込んできました。また連日のように大手テック企業における人員整理の報道が流れています。
こうした米国のファンダメンタルズの弱さが、米ドル買いを減退させる材料になっているとみており、逆説的に豪ドル高の材料ととらえています。
3.豪ドルはしばし買い目線で臨みたい
まずAUD/USDですが、いよいよ節目の0.70をクリアに上抜けそうな状況にあります。
AUD/USD4時間足チャート/出所:Investing.com
前述のファンダメンタルズを考慮しても、またチャート的にもまずは上目線で臨んだ方がよいでしょう。0.70より上で推移する時間が長くなってきたら、0.70に損切り注文を置いて、上目線で攻めていくのが一つの戦術となります。
上値抵抗の観点で言えば、0.7250、0.7500あたりが次に意識されるラインとなります。現段階においては米ドル金利の方が高く、買い持ちではスワップポイントがマイナスですので、節目では利食い先行でいくのがよいのではないでしょうか。
続いてAUD/JPYです。日本円の買戻しが強く、日銀の政策修正の観測が強いですので、円買い方向も警戒する必要がある状況です。ですが、88円前後では強烈な買戻しも見られています。
AUD/JPY4時間足チャート/出所:Investing.com
したがって押し目買い方針でエントリーし、88円を割り込むようなら、一旦、豪ドル/円の買いは撤退して作戦を再考するのが私なりの戦術となります。
今年のクロス円の特徴として、日銀の政策修正期待で円買い、緩和維持で円売りといった投資行動による上下動の値動きが挙げられます。したがって、押し目買い、適度に利食いを入れていくのがワークしやすいと考えています。
<参考文献>
文中に記載しています。
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代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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