【告知】21時15分から開催 米雇用統計ライブ
更新日時:2023年1月10日 13時05分(データを更新)
執筆日時:2023年1月5日 13時30分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
米労働市場のミスマッチ残存で米ドル/円戻りトライ!次のポイントは133円半ば 23年開運日(一粒万倍日&天赦日)である1月6日の米国雇用統計の予想と戦略
目次
1.はじめに
2023年1月6日(金)、日本時間22時30分に米国の12月雇用統計が発表されます。企業が人員削減計画を発表しながらも、実際の雇用情勢に目立った影響はこれまでのところ見られず、労働市場のひっ迫傾向は残っています。こうした状況がまだ続くのか、それともそろそろ雇用にも需要鈍化の波が押し寄せるのか注目されています。では、早速、前回の振り返りからです。
2.前回のおさらい
・FRBの利上げペース減速示唆も、利上げサイクルは肯定
2022年12月2日、米労働省が発表した11月の非農業部門雇用者数(NFP)は26.3万人増と、市場予想の20.0万人増を上回りました。また、失業率は3.7%、時間給は前月比で0.6%増でした。レジャー、レストランバーでの雇用者数増加が、ヘッドラインの数字を押し上げた一方、小売、派遣業が減少しました。積極的な利上げにもかかわらず、労働需給のミスマッチ改善が緩やかなペースに留まっていることを示しました。最終的な到達金利が引き上げられる可能性が残った一方、12月会合は0.75%利上げから0.5%へのペースダウンを許容できるとの見方が優勢でした。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
結果を受けた米ドル/円は、一時135.984円まで上昇したものの、その後は利食い売りから、134円前半へ押し戻されました。また、株式市場はFRBの引き締め継続観測から、ダウ工業株30種平均は350ドル超下げる場面があったものの、その後は切り返し、結局、34.87ドル高の34429.88ドルで取引を終えました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・雇用の受け皿となっているレジャー産業の回復は続くか
・雇用統計の指標性は若干低下
11月の雇用市場は、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズなど大手IT企業、ウォルト・ディズニー、大手行の相次ぐ人員削減計画など、人員削減数が10月の約2倍まで増加していたにもかかわらず、雇用情勢の強さを示す結果になりました。図表3.に示すように、余剰人員を抱える企業が増えていることは間違いないのですが、求人件数が依然として高水準をキープしているほか、新規失業保険申請件数も歴史的な低水準へ再び低下するなど、労働市場のひっ迫が続いている様子を示す指標結果も散見されます。どちらが米労働市場の本当の姿なのか市場も判断に迷っています。
図表3.雇用関連指標一覧
出所:外為どっとコム総研
こうした問題の要因は新型コロナウイルスの影響です。コロナによる巣ごもり生活でサービスからモノへの支出が急拡大し、個人の消費行動は大きく変わりました。これによって、産業構造も変化したため製造業・情報産業は雇用拡大が進みました。しかし、これがワクチンの普及でモノからサービスへ消費の主体が移るようになり、それまで雇用を支えていた製造業・情報産業では人員が過剰となり、整理を始めていると考えられます(図表4.)。ただ、現在は、レジャー・宿泊が2020年3月よりも人員が足りておらず採用を絞っていないため、人員削減計画がある中でも米雇用情勢は全体として底堅さが保たれていると言えそうです。とはいえ、レジャー・宿泊だけで今後も他分野の過剰分を賄え切れるとは思えませんので、将来的には雇用情勢の軟化は避けられないのかもしれません。
以上のように考えると、先行きの不透明さは払しょくされずに残っていますが、現状では労働者は次の就職先がある程度見つけやすいため、労働市場は底堅いとの判断に留まりそうです。
図表4.主な産業の就業者数
出所:外為どっとコム総研
また、今後の注意点としては、家計調査と事業者調査のかい離です。事業者調査から算出されるNFPは26.3万人増ですが、家計調査では13.8万人減少しています(図表5.)。米労働省はより正確な失業保険関連の税記録データと照合し、雇用統計データの見直した結果を2月に1月の雇用統計と同時に発表しますが、その時にこのかい離がどちらへ収束するのかで、FRBの利上げの道筋は変わって行きそうです。事業者調査に寄っていけば、雇用情勢は堅調と判断されFRBの利上げサイクルの継続性を高めそうですし、逆に家計調査に寄っていけば雇用の軟化と判断され、FRBの利上げサイクルの終了観測を高めるかもしれません。雇用情勢への判断が2月に大きく変わるかもしれないため、今回の指標結果への反応が限定される可能性もありそうです。
図表5.事業所・家計調査別の雇用者数増減
出所:外為どっとコム総研
さて、結果と場合わけですが、前回と同様にNFPと時間給の組み合わせで考えたいと思います。市場予想ですが、NFPは20.0万人、時間給の前月比は0.4%とどちらも11月から鈍化が見込まれています。①は時間給、NFPともに予想以上、②NFPは予想以上で、時間給は弱い、③NFPは予想以下で時間給は強い、④時間給もNFPともに予想以下の場合に分けたいと思います。
☆想定するシナリオ
パターン | NFP(万人) | 想定される米ドル/円の値動き | 理由 |
① | NFP、時間給とも予想以上 | 発表後、1.5円上昇 | 積極的タカ派継続 |
② | NFPは予想以上、時間給は予想以下 | 発表後、70銭上昇 | 雇用の底堅さ、インフレバイアス緩和 |
③ | NFPは予想以下、時間給は予想以上 | 発表後、70銭下落 | 雇用軟化、インフレバイアス健在 |
④ | NFP、時間給とも予想以下 | 発表後、1.5円下落 | 成長鈍化不安 |
※本指標発表後、1時間の値幅(過去3カ月):平均1円22銭
図表6.[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||||
予想値 | 実績値 | 修正値 | 予想値 | 実績値 | 修正値 | |
2022年12月 | 20.0 | 22.3 | – | 3.7 | 3.5 | – |
2022年11月 | 20.0 | 26.3 | 25.6 | 3.7 | 3.7 | 3.6 |
2022年10月 | 20.0 | 26.1 | 28.4 | 3.5 | 3.7 | – |
2022年09月 | 26.0 | 26.3 | 31.5 | 3.7 | 3.5 | – |
2022年08月 | 29.8 | 31.5 | 29.2 | 3.5 | 3.7 | – |
2022年07月 | 25.0 | 52.8 | 53.7 | 3.6 | 3.5 | – |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 実績値 | 実績値 | |
2022年12月 | 0.4 | 0.3 | 62.3 |
2022年11月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
2022年10月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
2022年09月 | 0.3 | 0.3 | 62.3 |
2022年08月 | 0.4 | 0.3 | 62.4 |
2022年07月 | 0.3 | 0.5 | 62.1 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
2022年12月 | 51.4 | 49.8 |
2022年11月 | 48.4 | 51.5 |
2022年10月 | 50.0 | 49.1 |
2022年09月 | 48.7 | 53.0 |
2022年08月 | 54.2 | 50.2 |
2022年07月 | 49.9 | 49.1 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
4.今回の戦略
発表前の水準によっては調整が必要ですが、足もとの失業保険申請件数の低水準をキープしている点で、②がメインシナリオと考えます。テクニカル的にも、週足一目均衡表・雲上限(129.652円)をキープできており、目先は戻りを試す格好を想定します。ただし、昨年高値(151.942円)からの下降トレンドラインが推移する、133.200-600円付近が一つの壁になりそうですので、ここを突破できるかどうかがポイントになりそうです。
図表7.米ドル/円チャート-4時間足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
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