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ドル/円の12月見通し「米利上げペースダウン観測でドルが軟化」

【外為総研 House View】

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執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 11月の推移
・11月の各市場
・11月のドル/円ポジション動向
・12月の日・米注目イベント
・ドル/円 12月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円 11月の推移

11月のドル/円相場は137.497~148.820円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約7.2%の大幅下落(ドル安・円高)となった。下落率は1998年12月以来の大きさであった。

2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げのペースが減速する可能性が示唆されたことでドル売りが先行。同時に金利の最終到達点であるターミナルレートの引き上げ観測も広がったため、ひとまず145円台では下げ渋ったが、10日に発表された米10月消費者物価指数(CPI)が予想以上に鈍化すると、一気に140円台へと急落した。15日には米10月生産者物価指数(PPI)も鈍化したことで137円台へ続落。売り一巡後は142円台に切り返す場面もあったが、23日のFOMC議事録で12月の利上げペース減速が濃厚になると再び140円台を割り込んだ。28日には137.50円前後まで下落して8月26日以来の安値を付けた。30日に行われたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演は想定したほどタカ派的な内容ではなかったと受け止められた。

ドル/円 11月の推移

11月のドル/円4本値
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

2日
FOMCは、市場予想通りにFF金利を75bp引き上げて3.25-4.00%にすると発表。声明では「利上げ継続が適切だと予測している」としつつ、「将来の利上げペースを決めるにあたり、累積した金融引き締めの効果が経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する」と表明した。パウエルFRB議長はその後の会見で「金融引き締めの効果が完全に現れるには時間がかかるだろう」「ある時点で、利上げペースを緩めることが適切となる」と述べて12月にも利上げペースを緩める可能性を示唆。一方で「経済データは最終的な金利水準が従来の想定よりも高くなることを示唆している」としてターミナルレートが9月FOMCの予測で示された4.625%よりも高くなるとの見通しを示した。

4日
米10月雇用統計は、非農業部門雇用者数が26.1万人増と予想(19.3万人増)を上回ったものの、前月(31.5万人増)から増加幅が縮小した。失業率は3.7%と予想(3.6%)を上回り、前月(3.5%)から上昇。労働参加率は62.2%に低下(前回62.3%)した。平均時給は前年比+4.7%と予想通りであった。

9日
8日に投票が行われた米中間選挙は与党・民主党が予想外に善戦。上院選ではジョージア州で決選投票が行われる可能性も浮上するなど、結果判明にはかなりの時間を要する公算が高まった。野党・共和党の躍進によって政権と議会の「ねじれ」が鮮明となればドルが下落するとの見方が修正を迫られた。

10日
米10月CPIは前月比+0.4%、前年比+7.7%と予想(+0.6%、+7.9%)を下回った。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も前年比+6.3%と予想(+6.5%)を下回り、40年ぶりの高水準だった9月(+6.6%)から伸びが鈍化した。FRBが12月に利上げペースを緩めるとの見方が強まる中、米長期金利の低下とともにドル売りが優勢となった。

15日
米10月PPIは前月比+0.2%、前年比+8.0%と予想(+0.4%、+8.3%)を下回った。食品とエネルギーを除いたコアPPIは前年比+6.7%(予想+7.2%)。前週のCPIに続いてPPIも鈍化したことで米国のインフレがピークアウトしたとの観測が広がった。

16日
米10月小売売上高は前月比+1.3%と予想(+1.0%)を上回った。自動車を除いた売上高も前月比+1.3%と予想(+0.5%)を上回る伸びとなった。自動車とガソリンを除けば+0.9%だった(予想+0.2%)。高インフレや金利上昇の中でも消費が堅調であることを示す結果となった。

23日
FOMCは11月会合の議事録を公表。「当局者らは利上げペースの減速が近く適切になると認識」「金融政策が十分に制限的なレベルに近づいているため、当局者はターミナルレートがペースよりも重要になっていることを強調」などの見解が示された。また「複数の当局者は以前の見通しよりも高いターミナルレートを予想している」ことも明らかになった。

30日
パウエルFRB議長はワシントンで講演。「インフレの先行きは依然として非常に不確実」としながらも「利上げペースを緩めることは理にかなっている」「利上げペースを緩める時期は早ければ12月となる可能性がある」などと発言。これを受けてドル売りが強まった。パウエル議長は「金利のピークは9月時点の予想よりいくぶん高いだろう」との認識も示したが、市場にくすぶる早期利下げ転換観測を強くけん制するトーンではなかったと受け止められた。

11月の各市場

米国債債利回り(2年、10年)

日経平均、NYダウ平均

11月のドル/円ポジション動向

ドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
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12月の日・米注目イベント

12月の日・米注目イベント

ドル/円 12月の見通し

11月のドル/円相場は24年ぶりの下落率を記録して137円台へと下落。10月に付けた32年ぶり高値151.94円前後からの下落率は約9.5%に及んだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げは12月にペースダウンを開始し、2023年前半には終了するとの見方が広がったことで一方的に進んできたドル高に修正が入っているようだ。

市場は2023年後半の利下げすら織り込み始めており、10月に4.3%台まで上昇していた米10年債利回りは3.6%台に低下している。そうした中で、12月の最大の見どころは13-14日に行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)だろう。利上げ幅はこれまでの75bp(0.75%ポイント)から50bpに縮小する公算が大きく、FF金利は4.25~4.50%(中央値4.375%)に引き上げられる見通しだ。また、これまでのFRBメンバーの発言からターミナルレート(今回の利上げ局面におけるFF金利ピーク)の見通しは従来の4.625%からいくぶん引き上げられるだろう。12月FOMCで、市場が「利上げの『ゴール』が見えてきた」と受け止めればさらにドルが下落する可能性がある。

ただ、そうした市場の見方を背景にドル安と株高が進めば、インフレ抑制効果が薄れることになる。このため、利上げの停止や利下げへの転換を早々と織り込み始めた市場に対してFRBが強くけん制する可能性も捨てきれない。現時点では、ドル反発の目が消えたとは言い切れないだろう。いずれにしても、ドル/円相場にとって12月FOMCが年内最大のヤマ場になりそうだ。

(予想レンジ:132.500~141.000円)

 
kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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