【告知】20時から開催 米雇用統計ライブ解説
執筆日時:2022年11月03日 14時00分
更新日時:2022年11月07日 11時30分(最新のデータを追記)
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
米ドル/円の押し目買い方針に変更なし、米利上げサイクルは長期戦覚悟か 11月4日の米国雇用統計の予想と戦略
目次
1.はじめに
2022年11月4日(金)、日本時間21時30分に米国の10月雇用統計が発表されます。2日の米FOMCで、利上げペース鈍化と金利の最高到達点引き上げの方向性が示唆され、引き締めは長期戦の様相と共に、見通しが難しくなってきました。4日の雇用統計の結果が、利上げペース鈍化をより強く意識させるのか、それとも、最高到達点の引き上げを強く意識させるのか注目されます。では、早速、前回の振り返りです。
2.前回のおさらい
・FRBの積極的な利上げ姿勢を肯定
10月7日、米労働省が発表した9月の非農業部門雇用者数(NFP)は市場予想の26.0万人増に対して26.3万人増と予想を上回る結果に。失業率は 3.5%と市場コンセンサスの3.7%から大きく低下し、平均時給は前月比0.3 %増となりました。市場では、労働需要の鈍化は示唆されていますが、雇用主の多くはまだ人材不足を補うため堅調なペースで採用を続けている様子を示しました。また、賃金の上昇が個人消費を支えている様子も明らかとなり、 FRBの積極的な利上げ姿勢を肯定する材料との見方が優勢でした。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
結果を受けた米ドル/円は、米10年債利回りが続伸する中で145.440円まで上昇幅を広げました。一方で、株式市場は失速。ダウ工業株30種平均は630.15 ドル安い、29296.79ドルで引けました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・FRB見通しからのかい離、縮まらず
・不安材料が一方向に揃えば、悲観的な結果も
消費活動がモノからサービスへ移っているため、製造業の雇用者は落ち着きつつありますが、サービス業は堅調で、9月ISM非製造業景気指数の雇用指数は8月の50.2から53.0へ上昇しています。 ちなみにNFPでは、コロナ前の2019年の製造業の新規雇用者の平均は7.9万人、サービス業の新規雇用者の平均は15.6万人でしたが、今年は製造業が6.0万人、サービス業が35.9万人と、 サービス業が現在の労働市場をけん引している様子が窺えます。
また、時間給の平均も頭打ち傾向が見られるものの、前年比ベースで5%増加と高水準を維持しています。9月FOMC時に公表された新たな経済見通しでは、今年末の失業率が3.8%、コアインフレ率が4.5%でしたから、直近の失業率3.5%、PCEコアデフレーター5.1%は目標水準に届いていません。景気の過熱感の後退は十分ではないようです。雇用市場は、利上げによる需要鈍化から労働市場は低下基調でありながらも、そのもっとも楽観的なラインを推移していると言えるでしょう。
図表3.米ファンダメンタルズ一覧 ※Data:Bloomberg
※失業保険継続需給者数は月末週の数字
とはいえ、一見、堅調そうに見える雇用情勢ですが、細部を見ると不安な点も複数あります。求人件数が緩やかだが減少傾向にあること、雇用コストも頭打ち感があること、チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が毎月発表する指標の、チャレンジャー人員削減数が増加傾向にあることなど、足もとの労働市場の需給が緩みつつある可能性はあります。これらの材料がそろってネガティブバイアスを高めれば、下落基調の中での悲観的なケースを辿る危険があり、油断はできません。こうして見ると、サービス業の好不調がヘッドラインの数字の強弱を左右するでしょう。
さて、NFPの見通しですが、市場予想は前月から低下して20.0万人となっていますので、①は前月を上回る26.4万人以上、②は市場予想を上回るが前月より低下の20.0~26.3万人、③はエコノミスト予想の下限を上回るが予想には届かない12.0~19.9万人、④はエコノミスト予想の下限を下回る11.9万人以下と4つに分けたいと思います。①はFRBが成長に対して強くブレーキをかけざるを得ないとの判断で、金利の最高到達点引き上げ観測から米ドル高が進む、②は着実な引き締めペースの継続期待から緩やかな米ドル高、③は引き締めペース鈍化観測から米ドル高が修正され、そして④は利上げサイクルが終盤に差し掛かっているとの思から、米ドルが下落するのではないかと考えています。
☆想定するシナリオ
パターン | NFP(万人) | 想定される米ドル/円の値動き | 理由 |
① | 26.4以上 | 発表後、1.5円上昇 | 金利の最高到達点拡大 |
② | 20.0~26.3 | 発表後、70銭上昇 | 着実な引き締め |
③ | 12.0~19.9 | 発表後、70銭下落 | 引き締めペース鈍化 |
④ | 11.9以下 | 発表後、1.5円下落 | 利上げサイクル終盤観測 |
※本指標発表後、1時間の値幅(過去3カ月):平均1.1円
図表4.[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||||
予想値 | 実績値 | 修正値 | 予想値 | 実績値 | 修正値 | |
2022年10月 | 20.0 | 26.1 | – | 3.5 | 3.7 | – |
2022年09月 | 26.0 | 26.3 | 31.5 | 3.7 | 3.5 | – |
2022年08月 | 29.8 | 31.5 | 29.2 | 3.5 | 3.7 | – |
2022年07月 | 25.0 | 52.8 | 53.7 | 3.6 | 3.5 | – |
2022年06月 | 26.8 | 37.2 | 29.3 | 3.6 | 3.6 | – |
2022年05月 | 32.5 | 39.0 | 38.6 | 3.5 | 3.6 | – |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 実績値 | 実績値 | |
2022年10月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
2022年09月 | 0.3 | 0.3 | 62.3 |
2022年08月 | 0.4 | 0.3 | 62.4 |
2022年07月 | 0.3 | 0.5 | 62.1 |
2022年06月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
2022年05月 | 0.4 | 0.4 | 62.3 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
2022年10月 | 50.0 | 49.1 |
2022年09月 | 48.7 | 53.0 |
2022年08月 | 54.2 | 50.2 |
2022年07月 | 49.9 | 49.1 |
2022年06月 | 47.3 | 47.4 |
2022年05月 | 49.6 | 50.2 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
4.今回の戦略
金利引き上げの影響で企業側が採用人数を絞っているものの、サービス分野の好調さから、②をメインシナリオと考えています。発表前のレベルによっては調整が必要ですが、米ドル/円は、8月2日の安値(130.382円)を起点とするフィボナッチファンの38.2%ライン(執筆時点で145.900円近辺)を支持線にしながら、再び150円に向けて下値を切り上げていく展開を想定しています。
図表5.米ドル/円チャート-8時間足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
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