こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。
第27回目は「中国経済リバウンドを考慮し中長期では買い目線を継続」です。
目次
1.豪ドル相場の定点観測
2.豪ドルは短期的には下を見ておいた方が無難
3.ただし中長期的には中国経済リバウンドにより豪ドルは買われやすい
1.豪ドル相場の定点観測
まずは現在の豪ドル相場について状況を確認します。
出所:Investing.com
AUD/USDは2週間で155Pips下落し、1AUD=0.6367USDとなりました。この間、米ドルの総合的な強さを示すドルインデックスはほぼ横ばい推移ですので、通貨選好がなされ結果として、英ポンドなどが買い戻された一方で、豪ドルは売られました。年初来ではオーストラリアの値下がり幅は英ポンドや日本円などと比べて少ないため、政府が介入する状況にない点は豪ドルが売られやすかった一因と思います。
AUD/JPYは2週間で1.12円下落し、1AUD=92.63JPYとなりました。この2週間はドル/円に持ち直しの動きが見られおおよそ1.00%上昇したのですが、豪ドルの下落がそれよりも大きかったため、小幅に売られた格好です。
その他、OPECによる減産発表などを受けて、資源価格の総合的な価値を示すBCOMが+4.21%となっています。これは豪ドルにとってプラス要因である一方、それ以上に米ドル買い圧力が強かったことを示しています。
なおIMM通貨ポジションは豪ドルのネットショートポジションが12,792枚と大きく減少し、▲27,764枚となりました。このポジション量は足元1年間でもっとも小さく、大方の投資家が豪ドルショートの利食いを入れたことを示しています。言い換えるとある程度の達成感は出たというところかも知れません。
2.豪ドルは短期的には下を見ておいた方が無難
本日は豪ドルを対米ドル(AUD/USD)で長い足から順にみていきます。まずは歴史的なチャートを用いて現時点を眺めて見ると、かなり下に位置していることが分かります。
AUD/USD月足チャート/出所:Investing.com
豪ドルの過去最安値は1米ドル=0.4773豪ドルで、実はじりじりと過去最安値が近づいてきています。現在の米ドル高は、米利上げ余地が縮小し、各国政府がドル高を牽制していることを考慮すればクライマックス局面に近いと思いますので、さすがに0.4773まで下押すことはないと思いますが、念のためここに1つのターゲットがあることは意識しておいた方がよいでしょう。
その上で現実的なターゲットとしては0.60あたりになりそうだとみています。残り327Pipsですからそこまで大きく離れているわけではないです。米ドル高が一段と強まればこの辺りまでは自然と達成するでしょう。
次に4時間足でみると、先週お伝えしたチャートポイントである0.65あたりが上値抵抗となっていることが確認できます。したがって短期的には戻り売り、または追随売りが有効な戦略となりそうです。
AUD/USD4時間足チャート/出所:Investing.com
そしてその際のターゲットとして利食いを0.60前後で、損切りラインを0.65前後に意識しておくと良いでしょう。
3.ただし中長期的には中国経済リバウンドにより豪ドルは買われやすい
ここからは中長期の豪ドルの目線についてです。
豪ドルのファンダメンタルズが歴史的に強いことについてこれまでの連載で長らくお伝えしてきました。そしてその現状は何も変わっていません。
ですから現在の豪ドル安の主因は豪ドルにあるのではなく、あくまで基軸通貨である米ドルが買われていることに起因します。さらにその米ドル高についても、先に述べた理由でクライマックス局面にあると考えています。
とすると米ドル高がピークアウトした際に買いやすいのは豪ドルだと考えています。理由の1つ目はオーストラリアの経済そのものが強いという点、もう1つが中国経済がこれから盛り上がってくる可能性が高く、中国経済と結びつきの深いオーストラリアにとって追い風となる点にあります。
以下のチャートはRBA(オーストラリアの中央銀行)が作成している中国の財政出動を図示したものです。左の棒グラフが年間のGDPに占める財政出動額を、右の折れ線グラフが四半期毎のインフラ投資額を示しており、それが例年よりも非常に大きいことが見てとれます。
中国の景気刺激/出所:RBA
中国はマクロの観点でみると厳しいゼロコロナ政策の結果、諸先進国よりも景気回復が遅れており、それをサポートするために大きな財政支出を行っています。したがってその反動が来年以降にでてくると想定されています。
例えばGDP予測に関しても、RBAは2023年の中国のGDPを6%超でみています。これは他の地域と比べると非常に大きく、特に米国との対比では際立っています。
GDP予測/出所:RBA
したがって現在の局面こそ米ドル高となっていますが、中長期的には中国経済の回復、そしてそれに連れたオーストラリア経済の高成長維持をメインシナリオに据えると、現在の安い水準のうちに豪ドルを仕込んでおくのも悪くないだろうと考えています。
したがって、「らくらくFX積立」においてはそろそろ豪ドルを仕込んでいくというのも一つのトレード戦略になり得ると考えています。
ただし、ドル/円がどこまで反落するかにもよるので、ドル/円は別途、考えることが必要です。もしドル/円はしばらく上をやり続けるという相場観をお持ちでしたら、豪ドルはその対の通貨として十分に検討できるはずです。
本日は以上となります。
引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。
<参考文献>
文中に記載しています。
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代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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