総括
FX「リラ脆さ露呈、外交は異端ぶり発揮」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価首位)
予想レンジ トルコリラ/円 7.7-8.5
(ポイント)
*円と最弱争い敗れ独歩安へ
*フィンランド、スウェーデンのNATO加盟に異議
*インフレは70%で国民の不満高まる
*為替取引規制を導入
*ロシアマネーの受け皿もくろむ
*円に抜かれ再び通貨最弱へ
*対ドルでは15のせ
*好材料はない
*リラ特別預金の増加が支え
*観光収入は増えるも貿易・経常赤字は続く
*EU加盟の望みは捨てず
*ウクライナ危機でも株価は絶好調で30%高
*IMF成長見通し下方修正
*S&Pは格下げを実施
*非居住者にも特別リラ預金制度適用
*エルドアン政権が与党に有利な選挙制度改革を計画している
*主要食品の付加価値税を1%に引き下げ
*トルコ実業界はリラの対ドルレートを9から14の間で推移することを望む
(消費者物価を抑制出来ずリラ下落、長期金利上昇)
先週は9週ぶりの陰線となった。70%近くとなった消費者物価を管理できない不安があり、長期金利は22%から25%へ上昇した。一方、政策金利は国内企業支援のために14%で据え置かれている。リラが売られたが、政府の資金の海外流出を防ぐための為替ヘッジ付き預金での政府負担が大きくなってしまう。貿易、経常赤字が続きリラ安が進むトルコの苦肉の策であったが綻びが出てきた。
(フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請に異議)
一方、外交関係では、ウクライナ紛争に端を発するフィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請だが、これにNATO加盟国のトルコが異議を唱えている。トルコは両国をトルコがテロ組織と見なす反政府武装組織、クルド労働者党(PKK)の活動拠点になっているなどと主張し、不満を示している。加盟決定にはNATOを構成する30カ国全ての承認が必要で、思わぬ壁が立ちはだかった格好だ。
この問題がこじれるとウクライナ情勢の悪化や、トルコの対外関係も悪化の恐れがある。そうなればトルコは経済的に打撃を受け、リラ売りが加速する可能性もあるだろう。
(3月経常収支は)
3月経常収支は55.54億ドルの赤字となった。5か月連続の赤字。観光収入増加でサービス収支は23.29億ドルの黒字となったが、財の貿易収支が63.42億ドルの赤字となった。
また、今週は5月消費者信頼感指数の発表がある。
(国内の商取引で外貨使用を制限)
国内の法人や個人の不動産と、自動車を除く全ての動産(製品)の売買の際に、通貨トルコ・リラをベースに支払うことが義務付けられた。動産の売買額を外貨ベースで設定することは可能だが、取引はトルコ・リラで行う必要がある。
変更の背景に「リラの使用を優先し、ドル化に対抗する決意がある」と発表した。
4月21日時点で国内銀行にある全預金額4,173億5,100万ドルのうち、約57%に相当する2,385億2,300万ドルが外貨ベースの預金となっている。消費者物価指数が70%と高水準にある中、国民や企業は預金価値を保護するために外貨を購入する傾向がある。
(法人向け外為取引は10-16時に)
トルコの中央銀行と銀行調整監視機構(BDDK)は、銀行に対し法人顧客との外為取引を市場の流動性がある午前10時から午後4時の間に行うよう要請した。3人の銀行関係者の話によると、要請はこの数日の間に受けたという。
中銀はコメントを控えた。BDDKからは返答がない。(ロイター)
テクニカル分析(トルコリラ/円)
日足団子天井からボリバン下限へ、雲中へ
日足、団子天井から、ボリバン3σ下限まで下落。雲中へ。
現在のボリバン3σ下限は8.074。5月12日-16日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。20日線上向き。
週足、先週は9週連続陽線とならず。21年12月20日週-22年5月9日週の上昇ラインがサポート。21年12月20日週-22年5月9日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン中位。
月足、3月、4月の底堅さも5月は維持できない。3月-4月の上昇ラインを下抜く。21年9月-10月の下降ラインが上値抵抗。
年足、7年連続陰線。22年は寄り引き同時に近づいてきた。18年-21年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
ロシアマネーの受け皿もくろむ
欧米各国がウクライナに侵攻するロシアへの制裁を一段と強化する中、制裁と一線を画すトルコがロシアマネーの受け皿になろうともくろんでいる。 ロシアで発行されたビザやマスターカードといった国際ブランドのクレジットカードが各国で使えなくなった今年3月以降、トルコ南部のリゾート地アンタルヤなどのホテルでは、ロシアの決済システム「ミール」への対応が進んだ。
観光はトルコの主要な外貨獲得源だ。当局によると、昨年アンタルヤを訪れた外国人観光客はロシア人が最多で、全体の4割以上を占めた。
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたしま す。また、本レポートに記載された意見や予測等は、今後予告なしに変更されることがございます。 なお、本レポートにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、FX湘南投資グループグならびに株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。