更新日時:2022年05月09日 12時50分(データを更新します)
執筆日時:2022年05月02日 16時00分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
1.はじめに
2022年5月6日(金)、日本時間21時30分に4月の米雇用統計が発表されます。ウクライナ戦争を巡る警戒心は残っていますが、もっぱら金融市場のメインテーマは世界的なインフレ動向です。こうしたなか、米国は6月FOMCで0.75%へ利上げ幅が広がるのではとの思惑も燻り始めています。今月の雇用統計がこうした見方を後押しする結果となるのか要注目です。今月もイベント前に、前月の振り返りや今回のポイントを簡単に整理して臨みましょう。早速、前回の振り返りです。
2.前回のおさらい
・失業率はコロナ前の水準を回復
・賃金は上昇ペースが加速
4月1日、米労働省が発表した3月の非農業部門雇用者数(NFP)は市場予想の48.0万人増に対して43.1万人増にとどまり、雇用拡大ペースは若干緩和しました。しかし、前月分が67.8万人増から75.0万人増へ上方修正され、均せば堅調なペースを維持しています。また、失業率も3.6%とコロナ前の水準へ回復しました。分野別には専門分野の雇用の伸びが頭一つ抜け出ていましたが、極端に弱い分野もなく全体的に雇用が拡大している様子が窺えました。また、注目された時間給は0.4%増と再び加速傾向を示しています。総合的にみて、5月FOMCでの0.5%利上げの下地を整える結果と言えそうです。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
結果を受けたドル/円は、米10年債利回りが2.45%台まで上昇したことを支えに一時123.034円と日通し高値を付けました。株式市場もしっかり。消費関連株に買いが入り、ダウ工業株30種平均は3日ぶりに反発し、34818.27ドルでその週の取引を終えました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・イベントリスクは利上げ幅0.75%への支持を高めるのこと
・インフレがピークを打つ兆候見られれば、ドル高はいったん調整も
雇用者数は、コロナ禍で失われた2200万人を全て回復するまであと160万人ほどに迫っています。加えて、賃金を引き上げる動きも継続しているほか、求人数も過去最高水準にあるなど企業側が労働者確保に苦労している様子が確認できます。労働市場の基調は強いままでしょう。他の雇用関連指標からも、トレンドが変化する兆候はみられておらず、4月統計も底堅い結果となりそうです。あと160万人ほどに迫ったコロナ前の水準にどこまで近づけるのか注目されます。
また、賃金動向の行方にも着目です。コストプッシュ型のインフレがさらに続くのか、米経済が利上げに耐えられるのか、米インフレがピークを迎える兆しがみられるのかなどへ移っています。一部ではインフレがピークをつけつつあることを示唆する指標もみられますが、こうした見方を覆して6月FOMCでの利上げ幅0.75%への下地を整える結果となるか注視されます。FOMC内では、未だ6月0.75%利上げへの支持は十分に集まっていませんので、雇用統計の結果を受け利上げ幅拡大への声が高まればタカ派化がもう一歩進展でしょう。
図表3.米CPIと時間給の推移
賃金上昇がさらに加速(A)するなら、米長期金利の3%台定着とともにドル/円は133円を目指し、6月にかけて135円を試すかもしれません。もっとも、金利の上昇幅拡大への不安が投資家心理を不安定化させ、ドル/円の値動きも荒っぽくなりそうです。賃金の上昇ペースが緩やかに留まれば(B)、インフレがピークを迎えつつあるとの見方からドルはいったん調整しそうな雰囲気です。ただし、この場合は、ここまで既に織り込まれた利上げペースは維持されますので、ドル/円は127.00円程度までの調整を挟んで、133.00円程度へ切り返していきそうです。最後に、賃金の上昇が鈍化(C)するようなら、タカ派化を織り込みが過ぎたとの反省からドルへの調整幅が深くなり、ドル/円は6月にかけて125.00円程度まで下値を模索する可能性はありそうです。
☆想定するシナリオ
パターン | 時間給/前月比 | 想定されるドル/円の値動き |
A | 0.5%以上 | 6月ないし7月の利上げ幅が0.75%へ拡大するとの見通しから133円を通過点として6月にかけ135円を目指す |
B | 0.1-0.4% | 127.00円付近までの調整を挟み、133.00円を目指す |
C | 0.0%以下 | 米利上げ織り込み済から6月にかけて125.00円程度まで下値模索か |
図表4.[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||||
予想値 | 実績値 | 修正値 | 予想値 | 実績値 | 修正値 | |
2022年04月 | 39.1 | 42.8 | – | 3.5 | 3.6 | – |
2022年03月 | 49.0 | 43.1 | 42.8 | 3.8 | 3.6 | – |
2022年02月 | 40.0 | 67.8 | 75.0 | 3.9 | 3.8 | – |
2022年01月 | 19.9 | 46.7 | 48.1 | 3.9 | 4.0 | – |
2021年12月 | 40.0 | 19.9 | 51.0 | 4.1 | 3.9 | – |
2021年11月 | 55.0 | 21.0 | 24.9 | 4.5 | 4.2 | – |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 実績値 | 実績値 | |
2022年04月 | 0.4 | 0.3 | 62.2 |
2022年03月 | 0.4 | 0.5 | 62.4 |
2022年02月 | 0.5 | 0.0 | 62.3 |
2022年01月 | 0.5 | 0.7 | 62.2 |
2021年12月 | 0.4 | 0.6 | 61.9 |
2021年11月 | 0.4 | 0.3 | 61.9 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ADP雇用統計(万人) | ||
予想値 | 実績値 | 修正値 | |
2022年04月 | 39.5 | 24.7 | – |
2022年03月 | 45.0 | 45.5 | 47.9 |
2022年02月 | 38.8 | 47.5 | 48.6 |
2022年01月 | 20.8 | -30.1 | 50.9 |
2021年12月 | 40.0 | 80.7 | 77.6 |
2021年11月 | 52.5 | 53.4 | 50.5 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
4.今回の戦略
シナリオAなら、高くても買っていかざるを得ないかもしれませんが、支持線としてワークしている、期間21日のボリンジャーバンドの+1σライン(4/29時点128.787円)付近までの下げを待って打診的な買い出動かなと考えます。シナリオB・Cなら、先ずは売り参入で、Bなら21日移動平均線(4/29時点で126.415円)付近で買いに転じ、Cなら125.00円付近まで耐えて買いに転じる格好を想定しています。もっとも、結果公表まで少し日がありますので、発射台次第では微調整の必要もあるでしょう。
図表5.ドル/円チャート-日足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
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