“納得のいく円安。”

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ドル・円相場は3月7日に付けた安値114.80から2回の陰線(終値が始値を下回る。)を見せて3月28日に高値125.08を付けた後3日間反落して3月31日に121.28の戻し安値を付けた後は再び騰勢を強め、本日の朝高値126.78を付けるまで12日間連騰を続けている。
陽線(終値が始値を上回る。)を勝ち、陰線を負けとするとこの31日間の戦績は26勝5敗で陽線が圧倒的な強さを誇る。

3月からの週足・ローソク足を見ると7週連続して陽線を見せており、3月からは7戦全勝となる。

見事な勝ちっぷりである。

この、今のところ無敵のドル・円相場(一方的な円安進行)に対して有力な敵は出てこないのであろうか?(円安進行を止める手立ては無いのか?)

残念ながら有力な敵が見付からない。

ついひと月ちょっと前までは“有事の円買い。”と言うちょっと見え難い援軍が居たが、今はそれが消え失せた。

それどころか今やドル・円相場は日銀総裁からの円安容認や、益々の日米金利差拡大と言う援軍を得て、ついに2002年5月以来の凡そ20年ぶりとなる126円台の円安水準まで値を上げた。

最近ちょこちょこ急激な円安進行に対する懸念の様なコメントが聞かれる様になったが、全く緊迫感が伴わない。

我が国の為替政策の責任者である鈴木財務大臣が、
“為替の安定は重要、急激な変動は望ましくない。”
“円安進行含め為替動向を緊張感持って注視している。”
“為替の過度な変動や無秩序な動きは悪影響を与える。”
“円安が進んで輸入品が高騰している傾向にある。”
“価格が十分に転嫁できず、賃金が伸びない環境は悪い円安。”
などと述べたが、“そんな事、分かってるわい。”としか思えず、海外からの反応も冷たくて詰まらないコメントで相場が下がった折はドルを買う良いチャンスだと考えている様だ。

この急激なドル高&円安の波に乗れなかったらしい海外の友人が悔し紛れに、“Stop chatting, and do something instead !”=(ぺちゃくちゃしゃべってばかりいないで、やる事をやれ!”と言い放ったが、残念ながら為す術が無いのである。

術の一つとして実弾介入(ドル高&円安の流れを止める為にドル売り&円買い介入を行う。)が噂されるが、この実現性は低かろう。

介入が成功する条件として、
-市場が投機的な動きをしており、それを止める必要が有る。
(ドル高&円安の動きは金利の低い円を売って金利の高いドルを買う極めて理に適った商行為の結果であり、投機ではない。)

-市場のポジションが偏っている。
(シカゴ・IMM.の投機筋は相変わらず円の売り持ち(約111億ドル相当の買い持ち)ポジションを保持しており、また我が国の個人投資家も少額(約6億ドル相当)のドルの買い持ちを保持しているが、輸出・輸入の実需筋は、リーズ・アンド・ラグズ(輸出が早目に決済・予約を行い、輸入が逆に遅めに決済・予約を行う。)の結果売りたい人は既に売っており、買いたい人は買い遅れている。
市場の潜在的なポジションは大きくドルのショートになっていると思われる。

-ドル・円の介入を行うには我が国だけの単独介入では効果が薄く、米国との協調が必要である。
(現在の米金融当局の関心は専らロシアに対する経済制裁の有効性を確固たるものにすることで、ドル・円相場に対しては何の興味も持っていない。
かつての様な円安進行に対する恒常的なアレルギーは無い。
バイデン政権の最大の懸案であるインフレ進行に対してドル高はむしろ歓迎すると言う空気が有る。)

-中央銀行の金融政策の後押しが必要である。
(これに対しては黒田日銀総裁が再三に渡って、“必要があれば躊躇なく追加緩和を行う。”と言い切り、他の主要国の緩和から引き締めへの金融政策の変更とは際立った相違が有り、望むべくもない。)

これらを考えるとどうも介入の可能性は低いし、その効果は限られたものであろう。

今朝方、黒田日銀総裁が為替相場に関して
“為替相場は経済・金融のファンダメンタルズを反映するべき。”
“為替相場の動きが経済・物価に与える影響は十分注視。”
“最近の円安はかなり急激な為替変動。”
と言及し、最後のコメントに反応してドル・円相場は一時126.78の高値から126.23まで急落したが、すかさずドル買いが入り、直ぐに値を戻した。

日足・週足チャートで見る様にドル・円相場は綺麗な上昇トレンドを示しているが、買われ過ぎ・売られ過ぎを示すテクニカル分析は明らかに買われ過ぎを示しており、何時訂正が起きても不思議ではないが、 “日銀が金融政策の変更を仄めかす。”、或いは“米国で景気減速のサインや物価上昇が一服する。”などの兆候が表れない限り基本的なドル高&円安の流れは変わるまい。

今朝のドルの下げは大したものではなかったが、依然として下がったら買うと言うBuy on dips.の戦略を継続したい。


今週のテクニカル分析の見立てはドルの買われ過ぎを警戒しながらも、127.75近辺までのドルの上昇を予測。
124.00を切るまではBuy on dips.が有効。

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