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FX/為替「米国雇用統計の予想と戦略 2022年4月号」By 外為どっとコム総研

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更新日時:2022年04月04日 13時00分 結果データを反映
執筆日時:2022年03月31日 14時00分
執筆者:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人

目次

1.はじめに
2.前回のおさらい
3.今回の見どころ
4.今回の戦略

1.はじめに

2022年4月1日(金)、日本時間21時30分に米国で3月雇用統計が発表されます。米国がサマータイムとなりましたので、今月から発表時間は日本時間で1時間前倒しされます。お気を付けください。金融市場はウクライナ紛争への警戒が残っていますが、米引き締めサイクルの本格稼働で米金融政策の今後の進路への注目も集まっています。投資家は今年の利上げ幅が2%を超えるだろうとの市場見通しを補完する材料となるのか、QT(資産縮小)開始はいつごろかなど、雇用統計の結果を通じて見定めようとしています。今月もイベント前に、前月の振り返りやポイントを簡単に整理して臨みましょう。早速、前回の振り返りです。

2.前回のおさらい

2月NFPは67.8万人増と、市場予想の40.0万人を大幅に上回る結果
・時間給は前月比横ばいと、インフレ圧力に変化の兆しも
・ドル/円はウクライナ問題で指標結果への反応は限定的

3月4日、米労働省が発表した2月の非農業部門雇用者数(NFP)は市場予想の40.0万人増に対して67.8万人増と好調な結果に。ヘルスケアが大幅に伸びたほか、建設業、物流分野の底堅さがヘッドラインの数字を押し上げました。かたや小売分野はコロナ感染症の影響から伸び悩みました。また、失業率は3.8%と2020年2月以来の水準に改善し、米経済が物価上昇や金融引き締めなどの逆風に耐えられるとの楽観的な思いを高めました。今回の結果は、米金融当局が計画通り引き締め策を遂行することへ自信を与える結果と言えそうです。

図表1.分野別新規雇用者数(千人)出所:米国労働省

産業別 Fed-21 Dec-21 Jan-21 Fed-22
全体 710 588 481 678
製造分野 -18 93 24 105
鉱業・林業 -4 8 1 9
建設業 -52 44 7 60
製造 38 41 16 36
非製造業分野 711 468 424 549
倉庫 10.7 18.5 12.3 18.3
小売 49.10 38.2 69.2 36.9
運輸 64.6 22.3 51.1 47.6
公益(電気・ガス・水道) -0.1 -0.6 1 0
情報 13 9 10 18
金融・保険 -8 14 3 35
専門・企業向け 102 91 73 95
医療・教育 76 65 33 112
レジャー・娯楽 393 186 167 179
その他のサービス 11 24 5 25
政府分野 17 27 33 24

結果を受けたドル/円は、115.400円近辺での小動きに終始しました。ただ、NY午後からは、ウクライナ情勢の緊迫感から114.649円レベルまで下げました。一方、株式市場もさえない展開でした。ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所のロシア軍占拠が嫌気され、ダウ工業株30種平均は終値ベースで179.86ドル安い33614.80ドルとなりました。

図表2.前回発表前後のドル円の動き

ドル/円チャート 30分足

出所:外為どっとコム「ネオチャート

3.今回の見どころ

・オミクロン株への脅威後退で雇用加速も
・NFPの市場予想は50.0万人前後が中央値
・需給ひっ迫懸念から賃金動向に着目

昨年末から今年に初めにかけて米労働市場は弱含んだと思われていましたが、蓋を開けば直近5カ月で300万人を上回る雇用が創出されたことが明らかになりました。2020年2月のコロナ前の米労働者数が約1億5250万人程度で、足もとが1億5000万人レベルですのでその差は約250万人程度まで縮小させており、米雇用環境は堅調さをアピールしています。

他の雇用指標を眺めても、大きな変化はなく政府が取りまとめる今回の雇用統計も引き続き雇用拡大が見込まれます。加えて、オミクロン株の影響が限定的だったことも安堵感を与えていますので、雇用拡大ペースが加速する期待もあります。NFPは48.0万人程度の増加が見込まれています。

・賃金の上昇ペース加速なら、5月のQT(資産縮小)開始のシグナルも
・賃金の上昇ペース鈍化なら、FEDへのタカ派な見方に修正も

ただ、労働者数はコロナ前の水準へ近づいている一方で、同労働省が別にまとめる求人件数データは依然として1100万人を超える高水準をキープしていますので、雇用市場の基調的な強さよりも、企業が労働力確保に苦労していると推察される点には注意が必要でしょう。労働市場の需給引き締まりは粘着性が強いインフレ押し上げ要因となります。前月は賃金の上昇圧力鈍化から米利上げペースが緩やかになるとの見方が一時的に強まる場面はありましたが、その後の一連の当局者発言ではこの点はほとんど触れられずに、利上げペース加速を示唆する内容ばかりが並んでいます。

当局者もこうした部分を察知して、利上げを急いでいるのではないでしょうか。市場も、当局者の発言に連動する形で今年末のFF金利水準見通しを2.50-2.75%(今年6回の会合の内、少なくとも3回~4回0.5%の利上げが必要)へ引き上げています。今月の賃金動向が、こうした強気な見方を正当化するのかどうか注目されます。

図表3.米5月FOMCでの利上げ織り込み度

5月FOMCでの各金利水準の織り込み度

※出所;CME Group

上述したように、労働市場の需給の引き締まり具合が米金融政策の行方を見通す上で重視されると考えますので、賃金動向がドル相場の値動きのドライブ要因になるとみています。(A)前月比で0.5%増より上では5月の利上げ幅が0.5%以上になるとの観測から、ドルが上昇幅を広げそうです。もっとも、その場合、株価も同時に調整することが見込まれるため、ドル円は高値圏で不安定な動きになりやすいでしょう。(B)0.2-0.4%程度ならドル円は緩やかに上方向を目指しそうですが、(C)マイナスから0.1%に留まれば、過度なタカ派ムードが一度緩和され調整に向かうのではないでしょうか。

☆想定するシナリオ

パターン 時間給/前月比 想定されるドル/円の値動き
0.5%以上 5月の利上げ幅見通しが0.5%以上になる可能性も想起され124円回復目指す
0.2-0.4% 緩やかに123.000円近辺へ下値切り上げ
0.1%以下 利上げ織り込みが緩和し120.500円付近へ調整


図表4.[雇用統計の実績と予想]

年月 非農業雇用者数変化(万人) 失業率(%)
予想値 実績値 修正値 予想値 実績値 修正値
2022年03月 48.0 43.1 3.8 3.6
2022年02月 40.0 67.8 75.0 3.9 3.8
2022年01月 17.0 46.7 48.1 3.9 4.0
2021年12月 40.0 19.9 51.0 4.1 3.9
2021年11月 55.0 21.0 24.9 4.5 4.2
2021年10月 45.0 53.1 54.6 4.7 4.6

 

年月 平均時給/前月比(%) 労働参加率(%)
予想値 実績値 実績値
2022年03月 0.4 0.4
2022年02月 0.5 0.1 62.3
2022年01月 0.5 0.6 62.2
2021年12月 0.4 0.5 61.9
2021年11月 0.4 0.4 61.9
2021年10月 0.4 0.4 61.7

 

◇関連の経済データ実績

年月 ADP雇用統計(万人)
予想値 実績値 修正値
2022年03月 45.0 45.5 62.4
2022年02月 38.8 47.5 48.6
2022年01月 20.8 -30.1 50.9
2021年12月 40.0 80.7 77.6
2021年11月 52.5 53.4 50.5
2021年10月 40.0 57.1 57.0

出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー

4.今回の戦略

・再度、黒田シーリングトライの地盤固められるか注目


ここ10日程度のドル円は、2015年8月以来の高水準となる125.083円をつけた直後に、121.30円付近まで振り落とされるなど、振幅の大きな値動きとなっています。120円以上では上昇スピードが速かったせいもあり、流行に乗っただけの買いも多かったようで、下落スピードも相応に勢いが出ました。2015年6月高値の125.853円が遠のいた感じで、仕切り直しと言った状況です。指標の好結果を受けて上に走った場合は、足もとの下落で買い捕まった投資家が多数いるとみられる122.500-123.500円ゾーンでの戻り売りを消化できるかどうかが125.00円再トライへの試金石となりそうです。
発射台がどの程度になるか分かりませんが、強い指標結果なら買いで追随して123円半ばでいったん利益確定、まちまちな結果なら、機動的に流れに沿った売買を心掛け、弱い結果なら120.500円付近までの下げを待って打診買いを検討したいところです。

図表5.ドル/円チャート-1時間足

ドル/円チャート 1時間足
出所:外為どっとコム「ネオチャート

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