こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。
第14回目は「上昇の機運が高まる豪ドル、唯一の懸念材料は中国のコロナ被害拡大か!?」です。
結論から申し上げますと、豪ドルは買われる材料4つに対して、売られる材料が1つと、買われやすい環境にあるので、さらなる豪ドル高を想定しています。
順を追ってみていきましょう。
目次
1.豪ドル相場の定点観測
2.状況の整理
3.結局、豪ドルとどのように対峙すればよいか?
1.豪ドル相場の定点観測
まずは現在の豪ドル相場について、かんたんに状況を確認します。
<豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足>
作成時点のAUD/USDレート:0.7401
前回報告が3月8日で、作成時点のAUD/USD相場が0.7401でしたので、この2週間はほぼ横ばいの推移となりました。一旦は下落したのですが、ほぼ同水準まで買い戻されていることから、買い意欲が旺盛と見ることもできそうです。
<豪ドル/日本円(AUD/JPY)チャート、日足>
作成時点のAUD/JPYレート:88.23
前回報告時点のAUD/JPY相場が85.08円でしたので、2週間で3.15円ほど豪ドル高が進みました。この間、AUD/USDの水準は変わっていませんので、USD/JPYの上昇に連れて、AUD/JPYも上昇したことになります。
2.状況の整理
本日は豪ドル高と、豪ドル安の要因に分けて状況をお伝えしていきます。
豪ドル高の要因
① ウクライナ戦争による欧州地政学リスク
② 資源高
③ オーストラリアの貿易黒字
④ 豪ドル投機ポジションの傾き
まず欧州地政学リスクの高まりを受けた豪ドル高についてです。ウクライナ戦争が当初想定されていたよりも長引いており、これがユーラシア大陸の通貨全般の下押し圧力として掛かり続けています。現在ロシア軍はウクライナの首都キエフに迫っており、包囲を行うと見られていますが、詳しい情報は分かりません。長引く可能性も視野に入れておきたいと考えているのですが、その場合には引き続きユーラシア大陸通貨の下押し材料になりそうで、相対的に地政学リスクの少ない豪ドルが買われやすい展開は続くと思います。
次に資源高による豪ドルへの間接的な影響です。こちらはBCOM(ブルームバーグ・コモディティ・インデックス)と呼ばれる資源価格の総合的な価格を示すチャートですが、足元はやや反落しているとは言え、上昇圧力が継続していると判断します。ロシアは非常に大きな資源国ですし、そのロシアとの取引に制限が掛かっていることを考えると、引き続き上昇圧力が続くと想定しておいた方が無難でしょう。こういった資源高圧力は、同じく資源国である豪ドルにプラスに作用しています。
具体的には資源高がオーストラリアの貿易黒字を押し上げています。過去最高の貿易黒字を積み上げているオーストラリアには輸出と引き換えに大量の外貨が流入していることになります。獲得した外貨を豪ドルに替えて国内投資に回しますので、これがじわりと着実に豪ドル高へと効いてきます。
それから短期的なポジションの傾きについても変化が見られており、これも豪ドル高要因と考えます。こちらは外為どっとコムのウェブサイト掲載のIMM通貨ポジションですが、足元(緑色の丸で囲った箇所)は豪ドルのネットショートポジションが縮小していることが分かります。推測になりますが、豪ドルが上昇してきたことで、豪ドルショートポジションの損切り(買戻し)が進んできていると思うのです。従ってショート勢の損切りを巻き込みながらさらに上昇していく展開もイメージしやすいです。
IMMポジション・FX統計データ | 外為どっとコムのFX | 初心者にもわかるFX投資
次に豪ドル安の要因をみていきます。
豪ドル安の要因
① 中国のコロナ被害拡大
オーストラリアの最大の貿易相手国である中国でコロナ被害が拡大しています。厳密には米中金利差の縮小などコロナ要因だけではないのですが、主にコロナ被害拡大の影響を受けて足元は人民元も売られており、豪ドル上昇の足かせになっていると考えます。中国は引き続き強力なゼロコロナ政策を敷くようですが、この政策と被害が長引くと豪ドルの下押し要因になり得るので、警戒が必要です。先日行われた中国の年1度の最高意思決定会議、「全人代」でもゼロコロナ政策の継続は示唆されました。ただし経済への配慮も必要とのコメントもあり、今はゼロコロナを継続しつつ、状況を見極めているのでしょう。
3.結局、豪ドルとどのように対峙すればよいか?
<AUD/USD 4時間足>
AUD/USDは上下動の大きい通貨ペアです。上で買ってついていくのはデイトレに絞った方が無難と言えそうです。
上のチャートをみて頂くとわかるのですが、最近の上昇局面における一時的な下落幅は200pips前後となっています。中期的に豪ドルは買いだと思っているので、例えば中国ネタで豪ドルが200pipsほど売られる局面があれば、ある程度しっかり買っていきたいと考えています。
<AUD/JPY4時間足>
AUD/JPYについては、前回も述べた通り、円安の勢いが強く、押し目が形成されにくい状況にあります。こちらはまずは買いでついていき、浅めにストップオーダーを置いて攻めていくのが良いでしょう。
目先のターゲットは90.00円となります。USD/JPY次第の展開にはなると思いますが、ドル円が120円丁度を試しにいけば、追って90円台へ到達となり得るでしょう。
本日はここまでとなります。
引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。
戸田裕大
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<参考文献>
豪ドルチャート:外貨ネクストネオ
BCOMチャート:Investing.com
オーストラリアの経常収支:Investing.comよりデータ取得し、戸田が作成
IMM通貨ポジション:外為どっとコム
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戸田裕大氏レポート
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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