【外為総研 House View】
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 1月の推移
・1月の各市場
・1月のポンド/円ポジション動向
・2月の英国注目イベント
・ポンド/円 2月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 1月の推移
・1月の各市場
・1月の豪ドル/円ポジション動向
・2月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 2月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 1月の推移
1月のポンド/円相場は152.903~157.764円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.6%下落 (ポンド安・円高)した。
上旬は買いが先行したが、5日の157.76円前後をピークに157円台で伸び悩んだ。世界的な長期金利の上昇と株価の下落で市場心理が悪化する中、リスク回避のポンド売り・円買いが優勢となった。ロシアによるウクライナ侵攻を巡る懸念が強まった事や、2020年のコロナ禍に首相官邸でパーティがたびたび開催されていた問題でジョンソン英首相の進退が取りざたされた事もポンドの重しになった。こうした中、24日には152.90円前後まで下落して1カ月ぶりの安値を付けた。
ただ、その後は、月末を控えたショートカバーが入った事や、英中銀(BOE)がインフレ抑制に向けて2月に50bpの利上げを行うとの観測が浮上した事を受けて154円台に値を戻した。
出所:外為どっとコム
4日
ドル/円の急伸にも支えられてポンド高・円安が進行すると約2カ月ぶりに157円台を回復。なお、ジョンソン英首相はこの日の会見で「経済活動を続けたまま新型コロナウイルスの感染急拡大を乗り切れる」との見解を示した。
14日
英11月鉱工業生産は前月比+1.0%と予想(+0.2%)を上回った。英11月貿易収支は113.37億ポンドの赤字(予想143.00億ポンドの赤字)だった。また、英11月国内総生産(GDP)は前月比+0.9%と予想(+0.4%)を上回る伸びを記録。なお、英11月GDPの水準は2020年2月を0.7%上回っており、英経済の規模は「コロナ前」を回復した。
18日
英12月失業率は4.7%に低下(前回4.8%)、同失業保険申請件数は4.33万件減(前回9.51万件減)となった。また、国際労働機関(ILO)基準の9-11月失業率は4.1%(予想4.2%、8-10月4.2%)、9-11月の週平均賃金は前年比+4.2%で予想通りだった(8-10月+4.9%)。
19日
英12月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.5%、前年比+5.4%といずれも予想(+0.3%、+5.2%)を上回る伸びとなった。前年比の伸びは前月の+5.1%から加速し、約30年ぶりの高水準を記録した。エネルギー・食品などを除いたコアCPIも前年比+4.2%となり、市場予想(+3.9%)を上回った。なお、その後ベイリーBOE総裁はエネルギー価格の上昇や労働市場のひっ迫などから「インフレ圧力が予想よりも長期的に継続する可能性について懸念している」と述べた。また、この日ジョンソン英首相は、新型コロナウイルスの感染者が減少傾向に転じたことを受けて屋内の公共施設でのマスク着用の義務など、規制の多くを27日から撤廃する方針を明らかにした。
21日
英12月小売売上高は前月比-3.7%と予想(-0.6%)を超える落ち込みとなった。新型コロナ変異株「オミクロン」の感染拡大の影響と見られる。変動の大きい自動車燃料を除いた売上高も前月比-3.6%と大幅に落ち込んだ(予想-0.8%)。
24日
英1月製造業PMI・速報値は56.9、同サービス業PMI・速報値は53.3(予想57.6、54.0)となった。ポンドはPMIに反応薄だった。なお、この日北大西洋条約機構(NATO)はロシアによるウクライナ国境への軍事集結を受けてウクライナ周辺の東欧地域に加盟国の艦船や航空機などを増派すると発表した。また、英米はこの日までに在ウクライナ大使館に勤務する一部職員と家族に退避を命じた。
1月の各市場
1月のポンド/円ポジション動向
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2月の英国注目イベント
ポンド/円 2月の見通し
英中銀(BOE)は2月3日の金融政策委員会(MPC)で追加利上げに動く可能性が高そうだ。政策金利を25bp(0.25%ポイント)引き上げると見られ、英金利市場もこれをほぼ織り込んでいる。市場には、BOEの利上げは織り込み済みのため、ポンドの上昇には繋がらないとの見方も少なくない。ただ、かねて金融政策正常化への指針として示していたとおり、BOEはバランスシートの縮小(QT)にも着手する可能性が高い。これは、3月にテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)を終えて、ようやく利上げに踏み切る米連邦準備制度理事会(FRB)の1歩先を行く格好となる。このため利上げ=材料出尽くしとはならないのではないだろうか。仮に、BOEが次の利上げまでの距離感が遠い事を示唆すればポンドが下落する事も考えられるが、足元の英インフレ率が5.4%とBOEの目標である2%を遥かに上回っている事を考えると、その可能性は低いだろう。
また、今回BOEが政策金利と同時に発表する金融安定報告では、インフレ見通しが(さらに)上方修正される公算が大きい。これらを踏まえると、利上げ決定後のポンドに対する出尽くし売りは、あったとしても一時的なものにとどまるだろう。英国では、ジョンソン首相がコロナの感染拡 大による行動制限措置をすでに解除した。経済活動の再開に伴う英景気回復への期待がポンドの下値を支えると見られ、2月のポンドは底堅く推移すると考えられる。
念のため、コロナ禍でのパーティ疑惑で支持率が低下しているジョンソン英首相の進退問題の行方には注意しておきたい。
(予想レンジ:152.500~158.500)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 1月の推移
1月の豪ドル/円相場は80.360~84.294円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.8%下落(豪ドル安・円高)した。
4日のドル/円の急伸などもあって84円台に上伸したが、米国の早期利上げ観測が広がると、ドル高・豪ドル安の動きにつれて反落。ドルに調整売りが入った11~12日には一時的に豪ドルが上昇したが長くは続かなかった。
米国の利上げペースが年4回以上になるとの観測や、ロシアによるウクライナ侵攻への懸念から世界的に株価が値を崩すと21日には81円台へと下落。その後も、株価の不安定な動きが続く中で豪ドルも軟調推移が継続した。24日には一時81円台も割り込み、28日には12月20日以来の安値となる80.36円前後まで下値を切り下げた。
出所:外為どっとコム
4日
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国で構成するOPECプラスは閣僚級会合で、毎月日量40万バレルずつ増産する従来の方針を2月も維持する事を決めた。予想通りの決定とあって市場への直接的な影響は小さかったが、小幅な増産維持を受けてNY原油が強含んだため豪ドルも上昇基調が続いた。
5日
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で「従来の想定より早い時期に、また速いペースで利上げすることが正当化されるかもしれない」などとタカ派的な見解が示された事からドルが強含んだ一方で米国株が軟化。2カ月ぶりの高値となる84.29円前後まで上昇していた豪ドル/円は下落に転じた。
11日
豪11月小売売上高は前月比+7.3%と予想(+3.6%)を上回った。一方、豪11月貿易収支は94.23億豪ドルの黒字で、黒字額は予想(105.50億豪ドル)を下回った。
12日
中国12月消費者物価指数は前年比+1.5%と予想(+1.7%)を下回り前月(+2.3%)から伸びが鈍化。同生産者物価指数も前年比+10.3%と予想以上に減速した(予想+11.3%、前月+12.9%)。インフレ鈍化を受けて中国当局の利下げ観測が高まり人 民元は下落したが、豪ドル相場に大きな影響はなかった。
14日
一部報道で「日銀は物価目標2%を達成する前に利上げが可能か議論を始める可能性がある」と伝わり、日本株が下落し円買いが活発化した。なお、中国12月貿易収支は944.6億ドルの黒字(予想739.5億ドルの黒字)となり、過去最高の黒字額を記録。2021年通年の貿易黒字も6764.3億ドルに達し過去最高となった。
17日
中国10-12月期国内総生産(GDP)は前年比+4.0%となり、前期の+4.9%から伸びは減速したが、市場予想(+3.3%)は上 回った。同時に発表された中国12月鉱工業生産は前年比+4.3%(予想+3.7%)、同小売売上高は前年比+1.7%(予想+3.8%)であった。
20日
豪12月雇用統計は、失業率が4.2%と予想(4.5%)を下回り2008年8月以来の水準に低下。新規雇用者数は6.48万人増と予想(6.00万人増)を上回る伸びとなった。豪中銀(RBA)が比較的早い時期に利上げに動くとの市場の見方を補強する形となり豪ドルが強含んだ。中国人民銀行が事実上の政策金利である最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の引き下げを発表した事で同国の景気回復期待が高まり人民元が上昇した事も豪ドルを支援した。
25日
豪10-12月期消費者物価指数は前年比+3.5%に加速(予想+3.2%、前回+3.0%)。RBAが重視する基調インフレ率は+2.65%となり、前期の+2.15%から加速した(予想+2.30%)。RBAは前年12月の声明で「基調インフレ率が目標の中間値である2.50%に達するのは2023年」との見通しを示していたが、これを大幅に前倒しして達成した。豪ドルは、RBAの早期利上げ観測が高まり一時上昇したが、日本株が大幅に下落する中で伸び悩んだ。
1月の各市場
1月の豪ドル/円ポジション動向
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2月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 2月の見通し
豪中銀(RBA)は2月1日の理事会で大方の予想通りに資産買い入れの月内終了を決定。一方で、利上げについては「基調インフレ率が2-3%の目標範囲内に『持続的に』収まるまで政策金利を引き上げない」として、早ければ7-9月期にも利上げが開始されるとする市場の見方を否定した。なお、基調インフレ率は2021年10-12月期に2.65%となり、2四半期連続で目標範囲内に収まった。少なくとも、2022年1-3月期のインフレ率が発表される4月末までは利上げ期待が大幅に強まる事はなさそうだ。
ただ、23日に発表される豪10-12月期賃金指数には注目しておきたい。RBAのロウ総裁はこれまで、利上げのためには前年比+3%超の賃金上昇が必要との見解を示してきた。10-12月期の賃金指数が前期の+2.2%からどこまで加速するかがポイントだろう。可能性はやや低いと見るが、仮に3%を超えるようなら早期利上げ観測が市場で再浮上する事も考えられる。いずれにしても、RBAは金融政策の正常化に舵を切っており、市場の関心は利上げ開始時期に向かっている。このため、利上げ開始時期の前倒しが意識されれば豪ドル高が進みやすく、利上げ後ずれ観測が優位となれば豪ドル安に振れやすくなりそうだ。 (予想レンジ:80.000~84.000円)
神田 卓也
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