先週17、18日に行われた注目の日銀金融政策決定会合は、一部通信社による観測記事により“もしかして緩和政策からの転換を匂わせる様な文言が聞けるか?”と注目されたが、結果的には経済と物価の見通しがやや引き上げられたものの、金融政策は据え置かれ、ハト派的(金融緩和に積極的)スタンスが維持された。
会合後の記者会見で、黒田日銀総裁は“一時的な資源価格の上昇による物価上昇に対応して金融を引き締めることは全く考えていない。”、“物価目標達成前に利上げを議論していることは全くない。”と市場の思惑を一蹴した。
そもそもこの一部通信社による観測記事は英語版で流れて海外から騒ぎが広がったが、日銀を除く海外の中央銀行がこぞって利上げを模索する中,“すわ日銀も!”と市場の一部が囃し立てた感が有る。
穿った見方をする者からは“これ以上の円安をよしとしない官邸筋がこの通信社に思惑をリークした。”と言う話が有ったが、定かではない。
先週は月曜日がキング牧師記念日でニューヨーク市場が休場で流動性が低下する中、ニューヨーク株式市場で3指数が大幅に低下してリスク・オフの動きとなった。
ダウは6日、ナスダックとS&P.は4日連続の下げを演じてその下げ幅は各々5.6%、7.6%、そして5.7%となり、結果として安全資産である米国債券と米ドル、そして円が買われて債券利回りは下落し、クロス・ベースで大きく円高が進んだ。
株価の下落はFRB.による利上げのタイミングや回数に対する不透明感を嫌気してのものであるが此処に来てウクライナ情勢の緊迫増加も拍車を掛けた。
塾長に言わせればこの突然の株価の下げは、秋から年末に掛けてのFRB.による利上げモード増進にも拘わらず上げ足のピッチが一向に収まらなかった株価への当然の調整だと思うのだが、如何であろうか?
先ずウクライナ情勢であるが、米政府高官が“ロシアがウクライナに対していつ攻撃するかわからない。”と発言する中、在ウクライナ・アメリカ大使館職員の国外退去を勧告するなど情勢は緊迫化する一方である。
ロシアがアメリカによる経済制裁を覚悟してまでウクライナへの武力行使に踏み切るかどうかは不透明であるが、現在最大の地政学的リスクと言えよう。
全く予断は許さない。
次にFRB.による金融政策の変化の行方であるが、今週25日から26日に掛けて開催される本年最初のFOMC.においてそのスタンスがより明解になると思われる。
市場の関心は、
-テーパリング終了後の3月の利上げ幅は市場予想通りの0.25%か、それとも一部の市場参加者が推測する様に一気に0.50%の利上げを行うのか?
-2022年の利上げ回数は3回か、それとも4回か?
-それによっては3月に引き続き5月の連続利上げも有り得るのか?
-QT.(Quantitative Tightening.)=量的引き締め=バランスシートの縮小の開始時期、及びそのペース。
などであるが、FOMC.の内容次第では更なるリスク・オフの動きが顕著化する可能性は高い。
どうやらFOMC.後の金利上昇による金利差拡大=ドル上昇と言うシナリオよりも、先週からの株値調整の動きを見ると、金利上昇=債券売り=リスク・オフ=株価下落のシナリオの方が描き易い気がする。
となると先週の動きと同様に為替市場ではドルと円が買われてクロス・ベースでの円高が続き、ドル・円は強い通貨同士のペアーで大きくは動かないかも知れない。
市場は,“2022年はFRB.の金融緩和策からの脱却、そして金融引き締めによりドル金利は上昇する。従ってドルは上がる。”と言う強い思い込みが有る。
それはシカゴ・IMM.の円のショート(1月18日付で約88億ドル相当のドルのロング)、そして我が国個人投資家のポジション(1月18日付で約22億ドルの買い持ち。)を見れば一目瞭然である。
言い換えれば、マーケットはドルが上がるであろうことを期待して依然としてドルの買い持ちである。
FOMC.ではドルの買い持ちを解消せざるを得ない様な動きが出るとは思えないが、ウクライナ情勢の動向には要注意であろう。
今週のテクニカル分析の見立ては依然としてドル・円は115円を上切るまではドル・ショートをキープ。
113.50を下切ったら更なる下落に要注意。