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FX/為替「マーケットはロングとロングの戦い」雨夜恒一郎 氏 FX特別インタビュー(前編)

マーケットはロングとロングの戦い

 

以下の取材記事は個人の経験や考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。

今回は、2021年まで毎週火曜日に定期動画投稿をご担当いただいた、「マーケットの語り部」こと為替アナリストの雨夜恒一郎氏にインタビューいたしました。

▼目次

1.インフレを知らない投資家が増えた
2.「市場はロング」と考える
3.リスクシナリオの立て方
4.相場の息吹
5.テクニカル分析について
6.FX投資家に学んでほしいこと

1.インフレを知らない投資家が増えた

編集部
編集部:
本日はよろしくお願いします。

雨夜氏
雨夜:

よろしくお願いいたします。
編集部
編集部:
さて2019年の新型コロナウイルス蔓延による経済停滞を防ぐため、米国を中心に緩和マネーが世界中に広がりました。

現在はインフレを懸念する声が多く出ていますが、そもそも「インフレ」を体感したことの無い投資家の方々も多いのではないかと思います。インフレが進むとこの先起きること、また個人が取るべき投資方針など教えてください。
雨夜氏
雨夜:
私は狂乱インフレの時代、1970年代の記憶があります。いまのマーケットにいる方で、生まれていないか、もの心ついていない方も多いかもしれないですね。

私はエコノミストでないので、理論的な話はさておきます。その上で、インフレには種類があるということを踏まえたいと思います。
編集部
編集部:
種類ですか?
雨夜氏
雨夜:
伝統的な経済学的には「需要が供給を上回ったときにモノの値段があがる」とされています。しかし、そんなことはここ数十年のあいだ世界のどこでも起きていないんです。
次にコストインフレ、つまり燃料や人件費が値上がりし、それが価格に転嫁されて値上がりが起こることについてですが、おそらくこれが今起こりかかっていることだと思います。

また、ハイパーインフレ、つまりモノではなくお金が暴落するということもあります。ハイパーインフレが起きる一番大きな原因は国家の財政政策が失敗したとき、国家そのものの信用が失われたとき、そして中央銀行が過度に金融政策を緩めすぎてお金が必要以上に市中でじゃぶじゃぶになったときなどです。いわゆるバブルになったときです。

この先日本で財政破綻が起こると思えないですが、約1000兆円もの国債を発行しているので、将来的に金利が少し上がっただけで利子を払えなくなるのでは、というシナリオも多少は意識しないといけないかもしれないです。藤巻健史さんがよくおっしゃっていることですね。まあ、国債は必ずしも全額返済する必要はないものなんですがね。
編集部
編集部:
今おっしゃった3つ目のハイパーインフレ、物価上昇が極端な形でやってくるかもしれないんですね・・・。
雨夜氏
雨夜:
そもそも、インフレはなぜ起こるのはわからないんです。さきほど挙げた話は要因のひとつであるだけで、最終的にはみんなが「インフレになる」と思えばなるものなんです。
逆にみんなが「インフレにならない」と思えば、ならない。仮に一時的にインフレになっても、落ち着いてしまう。

日本はこれまで、インフレになると言われ続けていました。しかし過去30年間で一度もインフレは来ませんでした。

人間の群集心理で、例えばトイレットペーパがなくなるとみんなが思うと、実際に値段が上がってしまう。こういったことは日本では起こりにくいのですがアメリカで起こっています。期待インフレが高まっていくためです。アメリカは「アニマルスピリッツ」が旺盛な国です。景気が良くなればモノを買おう、工場を動かそう、投資をしよう、不動産を買おうといった意欲がたちまち出てきます。しかし、日本はずっとそれがない。日本がインフレにならない理由は、正直私もよくわからないです。
編集部
編集部:
群衆心理が盛り上がらないんでしょうか・・・。日本人の性格なんですかね。
雨夜氏
雨夜:
そうですね。あとは1980年代後半から1990年代前半にかけて起きたバブル経済が崩壊した後、やってきた不況の記憶やインパクトがあまりにも強いからなのかもしれません。現在一つ言えるのは、アメリカでは着実にインフレが近づいているということです。一年に十何パーセントの値上がりがあるようなハイパーインフレになるかはわからないですが、ディスインフレの時代からインフレの時代に入りかかっています。
編集部
編集部:
その、インフレというのは、お金の価値が下がってしまうことと同義ですか?
雨夜氏
雨夜:
それとはちょっと違います。1970年代はオイルショックと、供給が需要に追い付かない高度成長時代でした。お金もないので日本の金利が7%ありました。そのころアメリカは二十何パーセントだったんですけど。

そういう時代を知っている人間からすると、インフレの記憶ははかすかではありますがあります。インフレを知らない人は、そもそも「インフレマインド」を持たないですよね。「この先値上がりするから今買っておこう」とか「マンションを買っておこう」という発想にならない。

日本で起こるインフレは資産インフレではないかと思います。株価が上昇して、みんな多少懐が温かくなって物を買う。すると高級品の値段が上がる、という具合です。 国として警戒すべきなのは物価が上がり続けること。今は考えにくいものの、将来的には国債を償還できなくなるかもしれません。利子が払えなくなると円の価値が暴落する。財政が破綻することによってハイパーインフレが起きる可能性はゼロではないです。
編集部
編集部:
では、日本円だけ持ち続けるのはリスクだということになりますね。
雨夜氏
雨夜:
投資先で何が適切か、一つに絞るのは難しいと思っています。
アメリカの株は、インフレに相関があるのでヘッジになると思います。暗号資産やゴールドもそうでしょうね。日本円だけで大きな資産を持っていると、ハイパーインフレが来た時にひとたまりもないです。ブラックスワンかもしれませんが。

台湾や朝鮮半島での有事の可能性を考えると、不透明な今は過去最大級に分散が必要な時期ではないかと思います。

2.「市場はロング」と考える

編集部
編集部:
様々な金融商品がある中でのFXについて、どういった関わり合いをすればいいでしょうか。
雨夜氏
雨夜:
為替はマーケットの流れを切り取るので、資産のヘッジをすると言うより、マーケットの肌感覚を身につけるため、感覚を鋭くするために為替に触れておくのもよいと思います。
編集部
編集部:
1980年代から長期間にわたりマーケットを見ていらっしゃる雨夜さんへ、トレードセンスを磨くための視点を伺いたいです。
雨夜氏
雨夜:
経験則では、基本的に「市場はロングである」と考えると良いと思います。
売りから入る人よりも、買いから入る人の方が圧倒的に多い、ということです。これは通貨同士でも同じです。通貨ペアであれば表示されている値段のもの、つまりドル/円だったらドルを買うということです。
編集部
編集部:
「市場はロング」、面白い視点ですね。
雨夜氏
雨夜:
基本的にはマーケットはロングとロングの戦いです。暴落は割とよくありますが、暴騰はあまりない。買っていて資産が倍になるような上昇はめったにないですが、一晩で資産全部なくなるような暴落はあり得る、ということです。

なので、基本的に市場はロングと考えた方がよいです。相場参加者がみんな買っている状態、つまり総ロングの時は、投げ(※損を覚悟で売却すること)が始まったとき、一方向に下落して引っかかるものが何もない。暴落が始まると、みな怖くて買えない状況になりやすいです。
編集部
編集部:
なるほど。。。
雨夜氏
雨夜:
ということで、市場は基本的にロングですが、たまにはショートになったりもします。ですから、いま市場がロングなのかショートなのを嗅ぎ取ることが大事です。いまはFXでも「ポジション比率」を視覚的にみられるようになりました。
編集部
編集部:
外為どっとコムが提供する「外為注文情報」は、外貨ネクストネオの指値注文を一覧で表示しています。
雨夜氏
雨夜:
そういう情報は、市場の一部の情報ではありますが間違いではなく、わりと当たっていると思うことが結構あります。

あと、IMMポジション(シカゴ通貨先物投機筋のポジション)は、私も必ず見るようにしています。いま(2021年10月)はドルロング、円ショートばかりだと思うし、ショートはわずかかと感じます。やはり、暴落のリスクは常にあるなと思っています。

3.リスクシナリオの立て方

編集部
編集部:
暴落リスク、早めにキャッチしたいです。
雨夜氏
雨夜:
暴落などのリスクシナリオの立て方について、バリュー・アット・リスク(VaR)というのがあります。プロのトレーダーや機関投資家が重視している指標です。一晩のボラティリティで、資産をどのくらい失うかを見る指標だと考えてください。

プロはVaR以上のトレードはしないし、その前に手を打つようにしています。これを個人投資家にあてはめると、トレードしている通貨ペアが一晩でどのくらい動く可能性があるのかを常に頭に入れておく、ということになります。


ユーロ/ドルだったら200ポイント(pips)動けばかなり動いたと感じます。ドル/円なら何年かに1回くらい数円単位で動く時があります。VaRを頭に入れ、もし今晩、5円の円高になったとして、それでもロスカットにならないようなポジションにする、あるいは大きな損になる前にストップロスを入れる、という発想をします。

暴落の時はスリッページが大きくなるものです。VaRは一晩でどのくらいポジションを損する可能性があるかの目安で、過去のボラティリティからの推測なので、具体的な変動幅を正確には測れないものではあります。

破産しないようにすることが最大の防御であるということです。ネットの掲示板で「昨日2000万円あったはずが、今朝起きたら100万円になった」などを目にするにつけ私は、よくそんなリスク管理をするものだと感じます。

そんなことをしていると、どれだけ利益を積み上げていても、いずれ破綻します。運が良ければ資産が増え続けるかもしれないですが、何年に一度の暴落ですべて飛ばしてしまう。一晩でいまのポジションでどのくらい損失が出る可能性があるかを頭に入れ、VaRを大事にしてリスクマネジメントを行うということが肝要だと思います。
編集部
編集部:
VaRという言葉は、はじめて聞きました。ファンダメンタルズを学ぶことも含め、ちょっと難しい印象です。
雨夜氏
雨夜:
個人投資家の方がファンダメンタルズをあまり勉強したがらないのは、トレードにすぐ役に立たないとか、特に短期のトレードでファンダメンタルズがあまり関係しない、と考えているからでしょう。

ただ、ファンダメンタルズを理解できると「こういう材料が出たから市場はこう動いた」とマーケットの動きを説明できるようになります。これが勉強する利点の第1点目です。第2点目は、変動材料から想定される動きとマーケットの動きが違った場合に素早く気づくことが出来ることです。私はこれを「相場の息吹」と呼んでますが、これが出た時がポジションメイクの急所になります。

4.相場の息吹

編集部
編集部:
そうばのいぶき!
雨夜氏
雨夜:
例えばドル/円にとって良い材料が出たのに、想定より上がらなかった場合、こういう時は強い売りのタイミングであるということです。

この、「相場が想定ほど動かない」という、「想定」をするためにはファンダメンタルズがわからないと、いい材料か悪い材料かわからないです。売りか買いかもわからない。先日「FOMCでテーパリングが決定、米雇用統計は予想を上回った、しかしドル/円は下がった」という場面がありましたが、これは明らかに売りサインと考えることが出来ました。

相場の息吹をとらえられると、トレードのチャンスにつながることが多いです。
ファンダメンタルズを短期トレードに生かすのは難しいと思いますが、米雇用統計の結果が良かったもののレートがすぐ天井を打った場合、売りチャンスなのだなと理解することが出来ます。

長期的なトレードでもファンダメンタルズは役に立ちます。

5.テクニカル分析について

編集部
編集部:
ファンダメンタルズのお話しをしていただきましたが、テクニカル分析はどうとらえていますか?
雨夜氏
雨夜:
テクニカル分析をトレードで活用し収支のプラスが続くのであればよいですが、チャート分析にも流行りすたりがあるものです。

これまで有効だった分析結果がずっと外れる時期もあったりするので、それを見極めるために指標を切り替えたり、モデルを改良するような域まで達してないと、儲からないでしょうね。

ヘッジファンドでもテクニカル分析だけでトレードをしている、というのもあまりないと思います。非常に短期の売買で市場のサヤですとか裁定取引ばかり狙うファンド、もしくはマクロとテクニカルを組み合わせているような総合型のファンド、どちらかが大半ではないでしょうか。

中途半端なテクニカル分析だけでは儲からないと思っています。

6.FX投資家に学んでほしいこと

編集部
編集部:
ズバリ、FX個人投資家に学んでほしいことは何でしょうか。
雨夜氏
雨夜:
個人投資家がなぜ利益を上げられないのかという問への、私なりの一つの答えとして「個人投資家はいろいろ考えた末、結局一般大衆の動きとなっているから」では無いかと思っています。
編集部
編集部:
一般大衆、ですか?
雨夜氏
雨夜:
ええ。「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えてゆく」。著名な投資家であるジョン・テンプルトンの格言です。

この言葉の意味は「大衆は、相場の動きと全く逆をしていることが多い」ということなんです。皆が悲観する大底の時に売ったらノーチャンス、儲けられるはずがないということです。

また、すでにある程度上昇し、みなが楽観しているところで買い始めても天井が近いので儲からない。短期トレードの場合も同じです。チャートに現れたシグナルに従って売買しているだけではみなと同じ投資行動になるため、勝てない。
編集部
編集部:
なるほど。みんなと同じことをしているだけではダメなんですかね。
雨夜氏
雨夜:
上がったら買う、下がったら売るというトレードは、その時の方向性はあたるかもしれないですが、そのうちトレンドが変わるものです。

要は、「相場のステージ」をつかむということかと思います。
例えばドル/円が113.80円でスタートしたとして、今どの辺のステージにあるかを知る。私は、みなが強気な場合は、その後の投げ(下落)が始まる危険なステージだと見ています。

そして、「ここまで下がったのなら買えばよい」と思う人も結構出てくると思いますが、その人の頭の中にある今のステージが大底なのかの確認が必要です。
大底は悲観の極致ですが、ほかのみんながそこまでは悲観してないかもしれない。だから、まだ下落があるかもしれないと見ておく。

相場を自分の希望ではなく客観的に見ることが大事であり、一般大衆と同じ行動をとっていたら儲からないものだと自覚することではないでしょうか。

PickUp編集部より

前編では雨夜氏の相場観やティーリングでの経験則、急所となるところなどを余すところなく語っていただきました。中編では銀行ディーラーから個人投資家になって実感したことや、外国為替の世界に足を踏み入れるきっかけなどについてお話いただきます。ぜひご期待ください。

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media.gaitame.com

amaya_96_130.jpg 雨夜恒一郎 氏
為替アナリスト スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど大手外資系銀行で、20年以上にわたり外国為替部門の要職を歴任。2006年に独立し、自己資金運用のかたわら、フリーランスの立場で市況・予想記事を提供中。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、「為替マーケットの語り部」。
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