以下の取材記事は個人の経験や考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。
今回は、幅広い金融・経済知識を持つ株式会社FISCOのアナリストである馬渕磨理子氏にインタビュー。全3回のうち、今回は子供時代から生い立ちや、株式投資の専門家から見たFX相場の魅力などのお話を伺いました。
▼目次
1.投資において「無形は無敵」
2.投資の中のFXの位置づけ
3.「株式投資を熟知する馬渕さんから見たFXの魅力は?」から
投資において「無形は無敵」
編集部:- 本日は、よろしくお願いします。
馬渕:- お願いします。
編集部:- 馬渕さんは、様々なインタビューで波乱の半生をお話しされています。
逆境に負けず、強い意志を持って生きてきた、その秘訣はどこにあるのでしょうか。
馬渕:- 強い意志とか、全然そんなことはないんですけどね。振り返ると、大事なのは「継続」だったと思うんです。ちっちゃいときに、とにかく「継続が自分の力になる」と親に教えられました。言い換えると、簡単にやめないということなんですが。
なので、やると決めたら、半年とかではなく、3年とか5年とかやり通す。不得意なものでも、5年くらいやればちょっとは人よりできるよ、という親の教えでしたね。
編集部:- なるほど。ただ、子供時代はガマンして続ける、というのは難しかったでしょう。
馬渕:- ええ。学校の勉強は逃げていた時があったんですけど、ちょっと向き合ってみようと親に言われ、言われるがままにやっていたら、テストの結果がよくなったりとか。あと、ピアノを習っていたんですが、積み重ねで出来るようになっていくのを感じていました。
本当にちっちゃなことでよいのだという経験があったので、何ごとも続けてこられたと思います。自分で自分を認められるようになり、それを大人になってからも実践しつづけてきたという感じかもしれません。
編集部:- 小さな成功体験がポイントなんですね。
馬渕:- そうですね。FXだと、私は損切りが苦手で、保有ポジションがマイナスになることも多いんですけど、でもずっとやめていないですからね。人民元/円のロングポジションも、ずっと持っていたからよかった。
なので投資も、簡単にやめず、意志を貫くというか、継続してたら自分なりの方向性が決まってきました。
編集部:- まず続けることを前提に考えるというのは面白いですね。
馬渕:- ただ、間違った方向に努力した時もありまして、まったく芽が出なかったことも経験しています。
編集部:- それは続ける中で、間違いに気づく必要があるということでしょうか?
馬渕:- ええ。やはり、向き不向きってあると思います。
一時期、苦手な物理や数学など極めようとしましたが、自分が無理だなと思っていたことでもあり、結局芽が出なかったですね。
だから自分が得意な社会や政治経済を伸ばそう、など自分の属性を俯瞰してみるタイミングも必要かと思います。
トレードでいえば、長期投資なのかデイトレードなのか、まず試してみて、得意・不得意を把握し、自分にあっている方向に努力するのが一番大事な気がします。
編集部:- やみくもに、なんでも続ければいい訳ではないんですね。
馬渕:- ええ。たとえ話で説明しますと、いったん弓を引いたとき、弓をひきつけるほど、よく飛ぶと言うじゃないですか。それを聞いて私も一度弓を引いてみるようにしています。
自分はどっちが得意か、どういう人間か、を引いて考える。
そういう、見極めるステップがないままに努力した時は、成果が出ず、ただ辛いだけでした。
ある人に言われたアドバイスが結構大きかったです。「何も難しいこと、自分が不得意なところを極める必要はなくて、それよりは突出しているところをアクセル踏んだほうが良いよ」と。
編集部:- 素敵なアドバイスですね。
さて話はもどりますが、「自分で人生を選択する」という、馬渕さんのモットーについても聞きたいです。
馬渕:- これは自分で思いついた言葉です。田舎で古い考えを持つ家で育ちましたが、祖母、母ともに自立して仕事をしていましたので、女でも手に職を持ちなさいと言い聞かせられていました。ただ、私は女性だから頑張るというタイプではなかったです。
編集部:- あ。あまり力まずに考えたモットーだったんですね。
馬渕:- 祖母たちは、例えば土間で食事をするとき女が一番末席で食べるみたいな、そういう文化だったので、虐げられていました。なので、せめて孫は自分の力で生きてほしいというのが、けっこうあったみたいです。まあ、私はあんまり虐げられた記憶もないですし、女だったら、というより人間だったらと置き換えて、自分の意識で生きてゆきたいと思っています。
編集部:- なるほど。ただ、マーケットアナリストの98%が男性とも言われていますよね。
馬渕:- そうですね。実際、私の年代だと、女性には結婚や出産という大きなイベントがあり、夢をあきらめてしまった、自分の思い通りの決定をできない女性を多く見てきました。もし彼女たちも自分の意志で人生を開いたらどうだったのだろうと思うことはあります。
編集部:- ありがとうございます。では、もうひとつのモットー、「無形は無敵」については?
馬渕:- 新卒で資産運用を任され、トレードする中で、「この相場、絶対下落する」とか思い込みが激しかったんです。それで、すごい失敗も経験しました。そこで、トレードに自分の思いを入れないために、客観的にみるためには心がフラットでないといけないと思いました。「孫氏の兵法」の中に、これに近い言葉があったので、それから「無形は無敵」を心においています。
編集部:- 二十代の新卒が、数十億の資産運用を任されたんですものね・・・。計り知れない苦しみののち得た人生訓かと思います。
馬渕:- いえいえ、大したことではないですけど。
編集部:- そんな馬渕さんは、もともとはキャリア官僚を夢見ていらっしゃったわけですが、現在はニュース番組のコメンテーターなど幅広くご活動です。この「夢と現実の差」についてどう感じていらっしゃいますか。
馬渕:- 正直、学生時代に思っていない未来になっていますね。親がどう思っているかもわからないですけど、なんとか自分の足で立てているので、OKとしようかなと(笑)。
編集部:- テレビのいち視聴者としての感想ですけど、馬渕さんが活き活きしていらっしゃるのが伝わってきます。アナリストとしての分析記事なども、他の筆者と切り口が違いますし。
馬渕:- そう言ってもらえることで、もう満足です。ありがとうございます。
投資の中のFXの位置づけ
編集部:- そもそもですけど、外国為替市場をどのように見ていますか?
馬渕:- はい。ちょっと私たちは忘れがちですが、大きな意味で、ドル/円が支配する世界に生きているのを知っておくべきと思うんですね。
2021年は、ドル/円が110円前後で、「心地いいレート」で推移していますので、株式市場に悪影響がないんです。だけど、思い返せば、2007年までは100円割れているようなとき、日本の株価はすごい低かった。あんまり円安に行き過ぎるとちょっと圧力がかかって株価が下落するなどもあります。このように、外国為替市場という大きなフィールドの中で生きていることを忘れてはいけないと思っていますね。
編集部:- 心地よいドル/円の水準だと、企業の業績も安定するものですか?
馬渕:- 円の価値が安定してこそ、企業分析が行えるということです。これが崩れると、外国為替のバイアスがかかって、まともな企業分析ができなくなる。現在のレート以上、円安に行ったりすると歪みが出るなと思って見ています。
編集部:- 黒田日銀総裁が行っている異次元緩和は、為替にとって円安効果になりました。
馬渕:- 日銀緩和はよかったと思います。特に最近は円と日経平均の連動について乖離もほとんどない感じになっている。
編集部:- 株式投資をするうえで、いま、ドル/円はどこにあるのかと意識する感じでしょうか。
馬渕:- 今いくらいなのか、年末にどれくらいになりそうかくらいは、影響すると思っています。
「株式投資を熟知する馬渕さんから見たFXの魅力は?」から
馬渕:- 私、じつは一番初めにFXから投資をはじめたんです。少額でもできることなどで、株よりわかりやすかったです。
編集部:- 株式投資は会社四季報の分厚さから、ハードルを感じますよね。外国為替は、通貨ペアの種類が限られます。
馬渕:- FXは直感的にわかりやすいし、円とか米ドルとかユーロとか、ニュースで通貨の名前をよく耳にしているものなので比較的身近です。
株式投資は、企業の業績を読んで、3700社から選ぶことになります。
編集部:- ではなぜ外国為替から株式投資にシフトしたんですか?
馬渕:- 転職したフィスコが、株寄りの情報発信を行っていたというのがありました。
以来、長年個別企業の株の分析をしていますが、もともとマクロ的な視点のほうが好きです。重箱の隅をつつくような企業分析に意味があるかと思う時もある。それよりは大局の流れを見るほうが好きで、そういった意味では為替のほうが私の得意とする方法に近いです。
編集部:- さて、2021年4月に外為どっとコムでセミナーをしていただいた際、「株式投資を熟知する馬渕さんから見たFXの魅力は?」という話をしていただきました。
そのときの資料を見ていますが、「FXを通じてパワーバランスを学べる」と、考えていらっしゃる?
馬渕:- 「為替の力」イコール「国の力」なので、米ドルがすごいということは知っていました。ただ、どれくらいすごいかは、FXを通じて初めて知った感じです。
編集部:- それはどういう事でしょうか。
馬渕:- 全世界は、米ドル覇権の世界で生きていているという事です。貿易は米ドル決済で行っていることを、為替を通じで学びました。
アメリカは世界最大で最も魅力的な金融マーケットを持っていて、世界に米ドルをばらまいているけど、最終的にみんなに米国債を買ってもらうことで米ドルが還流している。こんな仕組み、ずるくないですか?
編集部:- ずるい・・・、表現がユニークですね(笑)
馬渕:- 私、ずるいと思って、何だかしばらく落ち込みました。世界を支配するお金の構造を知ったときにショックを受けたんです。何十年間もずっとこの構造を続けて、それがアメリカの株式市場を潤している。米株が堅調なのも当たり前ですよね。
日本は、そういう構造の中の生きていかないといけないんだ、と思うとショックで・・・。日本円で生活している中で、ちょっとだけ弓を引いたら、いかに小さいなかで生きているか、気づけました。
これは株式投資だけでは気づけず、FXを学ぶ過程で米ドルの歴史を知り、理解できました。
編集部:- 確かに、アメリカに有利な仕組みになっていますよね。
馬渕:- このような世界のカラクリを理解している人って日本には少ないと思っています。こういう構造の中で米ドルが還流して、それによって米企業の自社株買いが行われている訳ですがから、勝ちようがない。中国はこの構造に対抗しているんだと理解できました。
編集部:- 中国に対し、アメリカも必死になって戦う、という。
馬渕:- はい。決済という領域を取りに行く戦いなんだなと。半導体、5G、いろいろと米中で対立していますが、一番は決済の争いだと思いました。
編集部:- なるほど。そういう世の中の理(ことわり)がわかると、人生にプラスですね?
馬渕:- ええ。物事の定義づけや意味づけをちゃんと理解している人が、多分強い気がする。世の中の見え方が変わってくるのかなと思います。
編集部:- 構造が分かると、世界情勢の本音も分かるという事でしょうか。
馬渕:- ええ。マーケットを動かす人々の本音を知らないと、今日下がった、上がったに焦点が当たってしまい、惑わされてしまう。視野の狭いトレードをしていた時はあまりうまくいかなかったです。なので本質的なこと、値動きが起きる根本を知らないと投資は危険なのかなと思います。
編集部:- おお。
馬渕:- さらに言うと、結局世の中は人間の感情で決まっているんだと思っています。FXも、レート変動に何も感情がないと思われがちですけど、いろんな思惑が全部飲み込まれて、チャートになっている。そんなことを考えていると、なんだかちょっと怖くなってポジションを持てないときもありましたね。
今は、機関投資家の流れに乗り、大きなトレンドの一部をちょっとだけもらうという感覚になりました。
編集部:- 「無形は無敵」につながるお話ですね。
馬渕:- あとは、ファンドが決済の時には相場が下がるとか、いろいろアノマリー、再現性のあるサイクルも知らないといけないですね。
マーケットの大きな流れは、人間が動かしていると私は思っています。AIやアルゴトレードが発達しても、人間の思いが反映される世界です。
(中編に続く)
PickUp編集部より
子供のころからの習慣づけに始まり、投資の世界に入って気づいたことやショックを受けたことなどをお話しいただきました。中編では、FX投資の魅力について語っていただきます。
投資の真髄がここにある!伝説のディーラー列伝 インタビュー記事まとめ
馬渕 磨理子氏(フィスコ 企業リサーチレポーター)
認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
公共政策修士
京都大学公共政策大学院で、法律、経済学、行政学、公共政策を学び、修士過程を修了。
法人の資産運用・管理を自ら行い、そこで学んだ財務分析・経営分析を生かし、フィスコ企業リサーチレポーターとして、個別銘柄の分析を行っている。全国各地でIRセミナーに登壇、プレジデント、SPA!など多数メディア掲載の実績を持つ。
現在は、ベンチャー企業でマーケティングを担当し、その実務経験を通して企業分析を行う強みを持つ。
大学時代は、国際政治学を専攻し、ミス同志社を受賞している。
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