【外為総研 House View】
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 10月の推移
・10月の各市場
・10月のポンド/円ポジション動向
・11月の英国注目イベント
・ポンド/円 11月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 10月の推移
・10月の各市場
・10月の豪ドル/円ポジション動向
・11月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 11月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 10月の推移
10月のポンド/円相場は149.232~158.217円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約4.4%上昇(ポンド高・円安)した。
20日には158.22円前後まで上昇して2016年6月以来の高値を付ける場面もあった。世界的な供給制約と原油高によってインフレ高進が懸念される英国では、英中銀(BOE)が早ければ11月にも利上げに踏み切るとの観測が浮上。一方、インフレ率が0%付近で推移する日本では、日銀による金融政策の正常化観測が高まりにくい。さらには原油高による貿易収支の悪化が見込まれている。これらが、10月のポンド高・円安の背景になったと言えるだろう。
なお、18日にはBOEのベイリー総裁が、インフレ圧力を抑制するために「行動する必要が生じる」と述べた一方、日銀の黒田総裁は28日に、2021年の物価見通しを引き下げた上で「必要があれば躊躇なく追加の金融緩和に踏み切る」と表明した。
出所:外為どっとコム
4日
OPEC(石油輸出国機構)プラスは、毎月日量40万バレルずつ供給を引き上げる従来の方針を維持する事で合意。大幅増産は見送られたとの見方からNY原油先物(WTI)が78ドル台に急伸する中、資源国通貨とともにポンドも強含んだ。
7日
BOEの金融政策委員会(MPC)のメンバーで新チーフエコノミストであるピル氏は、「英国のインフレの勢いは当初の想定よりも長く続くと見られる」と指摘。ただ、一方で「金融政策は潜在能力を最大限に生かす経済活動のレベルを支える事を目指すべきだ」との見解も示した。
12日
英9月失業率は5.2%に低下(前月5.4%)、同失業保険申請件数は5.11万件減(前月8.80万件減)であった。国際労働機関(ILO)基準の6-8月失業率は4.5%と予想通りだった。また、6-8月の週平均賃金は前年比+7.2%と予想(+7.0%)を上回る伸びとなった。
国際通貨基金(IMF)は2021年の世界成長率見通しを7月時点の6.0%から5.9%へと小幅に下方修正。国別では、英国の成長率見通しを7.0%から6.8%へ0.2ポイントの下方修正にとどめ、G7の中で最も高い成長を見込んだ。
13日
英8月鉱工業生産は前月比+0.8%と予想(+0.2%)を上回った。英8月貿易収支は149.27億ポンドの赤字となり、赤字幅は英国のEU完全離脱を控えて輸入が急増した2020年12月以来の大きさとなった(予想119.85億ポンドの赤字)。
また、英8月国内総生産(GDP)は前月比+0.4%とプラス成長に戻ったが、伸び率は予想に届かなかった(予想+0.5%、前回-0.1%)。
18日
ベイリーBOE総裁が前日に早期利上げを示唆したとしてオープンからポンド買いが優勢となった。総裁は17日のオンラインイベントで、エネルギー価格高騰は物価圧力が長期化する事を意味するとして、インフレ圧力を抑制するため中銀が「行動する必要が生じる」と述べた。
19日
BOEの早期利上げ観測を絡めながらポンドが上昇。欧州株の持ち直しもあってポンド高・円安が進んだ。ジョンソン英首相が97億ポンド相当のグリーンプロジェクトを発表し、世界のトップ金融機関や経営者を投資に勧誘した事もポンド高に寄与した模様。なお、市場の一部にはBOEが年内に2度の利上げを行うとの見方も出ていた。
20日
英9月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%、前年比+3.1%と予想(+0.4%、+3.2%)を小幅に下回った。BOEの早期利上げを見込んで強含んでいたポンドはこれを受けて反落した。
22日
英9月小売売上高は前月比-0.2%と予想(+0.6%)に反して低下し、5カ月連続でマイナスとなった。一方、英10月製造業PMI・速報値は57.7(予想56.0)、同サービス業PMI・速報値は58.0(54.5)といずれも予想を上回った。
27日
英国のスナク財務相は秋季財政報告を行い、2021年の経済成長は1973年以来最大となる見通しとし、成長率予想を6.5%に引き上げた(従来4.0%)。その他、「経済成長は2022年に6%に減速」「生産は年末までにコロナ禍前の水準を回復へ」「予測によれば、来年のインフレ率は平均4%と、英中銀(BOE)の目標値の2倍」「失業率は5.2%でピークを打つ可能性が高い。過去のリセッション(景気後退)時の水準をはるかに下回る」などと発言した。ポンドは、スナク財務相が借入(国債発行)の減少見通しを示した事で英長期金利が低下する中、一時下落したがすぐに持ち直した。
10月の各市場
10月のポンド/円ポジション動向
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11月の英国注目イベント
ポンド/円 11月の見通し
11月のポンド/円相場は、英中銀(BOE)と日銀の金融政策のスタンスの違いを背景とするポンド高・円安基調が続きそうだ。
BOEは4日に政策金利を発表するが、市場の見方(予想)は15bp(0.15%)の利上げと据え置きで予想が二分されている。2020 年3月に政策金利を0.25%から0.10%に引き下げた事から、今回仮に利上げを行うとすれば引き上げ幅は15bpになると見られ ている。利上げと据え置きで見方が分かれている以上、利上げが発表されればポンドは上昇する公算が大きい。同時に発表 する金融政策報告でインフレ見通しを引き上げる可能性もあると見ており、追加利上げ観測が高まるようなら、ポンドの上げ幅 はさらに大きくなるだろう。
一方で、もし利上げを見送ればポンドは下落しようが、10月のベイリー総裁の発言を踏まえると、12 月(次回)の利上げ期待は今以上に高まる公算が大きいと考えられる事から、ポンド安の反応は一時的に留まろう。
他方、日 銀は次回(12月)も大規模金融緩和を維持する事が確実だ。世界的な株価の急落や原油価格の急落がなければ、 11月もポンド/円の堅調推移が続く公算が大きいと見るのが自然だろう。
(予想レンジ:153.000~159.000円)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 10月の推移
10月の豪ドル/円相場は79.902~86.252円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約6.6%の大幅な上昇(豪ドル高・円安)となった。
原油高を背景に上旬から上昇が続き、8日に82円台、11日には83円台、14日には84円台と急ピッチで上値を伸ばした。中国の景気減速懸念がくすぶる中でも欧米市場を中心に株価が堅調を維持した事から、18日には85円台を回復。21日には86.25円前後まで上伸して2018年2月以来の高値を付けた。
その後、下旬にかけては高値警戒感などから伸び悩んだものの、豪州の7‐9月期基調インフレ率が豪中銀(RBA)の目標レンジ内に回帰した事やRBAが国債買い入れ計画の公表を見送った事で利上げ前倒し観測が浮上したため、豪ドルの下値は堅く高値圏にとどまった。
出所:外為どっとコム
4日
OPEC(石油輸出国機構)プラスは、毎月日量40万バレルずつ供給を引き上げる従来の方針を維持する事で合意。大幅増産は見送られたとの見方からNY原油先物(WTI)が78ドル台に急伸。資源国通貨にも上昇圧力がかかり豪ドル/円も上昇した。
5日
RBAは政策金利と3年物国債利回りの誘導目標(0.10%)を据え置いた。週40億豪ドルペースの国債購入を2022年2月まで続ける方針も維持した。声明では「(デルタ株の流行にともなう)景気拡大の後退は一時的なものにとどまるとみられる。ワクチン接種率がさらに上昇し制限が緩和されれば、経済は立ち直るはずだ」との見解を示した。その上で、改めて「予測の中心シナリオでは、利上げの条件は2024年まで達成されない」とした。
なお、これより前に発表された豪8月貿易収支は150.77億豪ドルの黒字だった。黒字額は予想(101.00億豪ドル)を上回り、過去最高を記録した。
14日
豪9月雇用統計は、新規雇用者数が13.80万人減と予想(11.00万人減)を下回った。一方で、失業率は労働参加率が64.5%に急低下(前回65.2%)した事から4.6%への小幅な上昇にとどまった(予想4.8%、前回4.5%)。
18日
中国7-9月期国内総生産(GDP)は前年比+4.9%と予想(+5.0%)を下回り、前期(+7.9%)から減速。これを受けて、民間エコノミストの間で2021年の中国経済成長率見通しを引き下げる動きが相次いだ。なお、GDPと同時に発表された中国9月小売売上高は前年比+4.4%(予想+3.5%)、同鉱工業生産は前年比+3.1%(予想+3.8%)であった。
19日
RBAは今月5日に開いた理事会の議事録を公表。「中心的なシナリオでは10-12月期に成長に転じ、来年後半にはデルタ株流行前の水準を回復する見通し」としながらも、「実質インフレ率が持続的に2-3%で推移するまで利上げはしない」方針を再確認。「完全雇用の回復に向けて高度に支援的な金融環境の維持に引き続きコミットする事で一致した」とした。
22日
経営難に陥っている中国不動産大手・恒大集団は、23日に猶予期限が到来するドル建て社債の利払い(8350万ドル)を実行したと伝わった。同社が債務不履行(デフォルト)の危機をひとまず回避した事で、円売りが優勢となった
26日
前日の米国株の上昇を受けて堅調に始まった日本株がさらに上げ幅を拡大。「劉鶴中国副首相とイエレン米財務長官が26日に会談を行った」事が伝わり、米中対立の懸念が和らいだ他、衆院選に関する一部の世論調査で自民党が単独過半数を上回る結果となった事もあって、日経平均株価の上げ幅は500円を超えた。円は主要通貨に対して売りが優勢となった。
27日
豪7-9月期消費者物価指数(CPI)は前年比+3.0%と予想(+3.1%)に届かず、4-6月期(+3.8%)から鈍化。ただ、RBAが重視するCPIトリム平均値とCPI加重中央値はいずれも前年比+2.1%となり、これらの平均である基調インフレは+2.1%に加速した。基調インフレが約6年ぶりにRBAのインフレ目標(2-3%)レンジ内に回帰した事で利上げ前倒し観測が浮上した。
29日
豪9月小売売上高は前月比+1.3%と予想(+0.4%)を大きく上回った。また、豪7-9月期生産者物価指数は前年比+2.9%と4-6月期の+2.2%を上回る伸びとなった。ただ、小じっかりで始まった日経平均株価が一時400円近く急落する中、豪ドル/円は売り優勢となった。しかしその後は、日本株の持ち直しやRBAが3年物国債利回りを0.10%前後に誘導するイールドカーブ・コントロール(YCC)を維持するための対応を見送った事を受けて豪ドルが反発。RBAが国債買い入れ計画の公表を見送った事でYCC停止観測が広がり、YCCの対象である2024年4月償還債の利回りは一時0.80%前後まで急伸した。
10月の各市場
10月の豪ドル/円ポジション動向
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11月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 11月の見通し
11月2日、豪中銀(RBA)は3年物国債利回りの誘導目標0.10%を撤廃。イールドカーブ・コントロール(YCC)を終了させて長期金利の上昇を容認した格好だ。声明では「利上げの条件は2024年まで満たされない」としていた従来の文言を削除し、代わりに「利上げの条件が満たされるには時間がかかる可能性がある」とした。豪金利先物市場が2022年の利上げを織り込みつつあった事から、声明発表直後には行き過ぎた織り込みを修正する形で金利低下と豪ドル安の反応が見られた。
とはいえ、RBAが利上げ想定時期を前倒しした事には違いない。このため、金利と豪ドルの下げ余地は小さいだろう。今後は、豪州のインフレ動向や労働市場および住宅市場の動向などを吟味しながら利上げ開始の時期を探る事になろう。5日のRBA金融政策報告、11日の豪10月雇用統計、17日の豪7-9月期賃金指数、30日の豪10月住宅建設許可件数などが注目されそうだ。
いずれにしても、RBAが政策スタンスを正常化の方向に向けた一方で、日銀の緩和維持スタンスに変化がない事を踏まえれば、豪ドル高・円安が進みやすい地合いが続くと見るのが妥当ではないだろうか。中国不動産大手・恒大集団のデフォルト懸念などで一時的に豪ドル安・円高に振れる局面はあるかもしれないが、豪ドル/円相場の基調的な上昇は維持される公算が大きいと見る。
(予想レンジ:83.000~88.000円)
神田卓也
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